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第61話「巨大警備兵器ペンソール」

あけましておめでとうございます、多忙につき更新遅れまして申し訳ありません。今年もよろしくお願いいたします。




ブルーヘブンアイヴィーを焼き尽くした後、目の前には巨大な広間が広がっていた。


その中心には巨大警備兵器ペンソールが仁王立ちしていた。


ペンソールの鎧の隙間、そして広間の壁面から蛍光色の光が漏れ出ている。


「ペンソールに近づいちゃダメなのだ!変なの出てる!!」


たわしのその一声で全員が戦闘態勢に入る。




『エーテル、メモ、リーノ存在ヲ認、動力室、へ移動ヲ行ッテ、ピー、ピー』



そう発してペンソールが道を譲ろうとした。




だがペンソールの身体は固定されているかのように動かず、ミチミチギチギチとぎこちない音を発していた。


『バグ、バグ、バグ、バグ、エラー、エラー、救援要請、エラー、エラー、ブ、ブー』


「もしかして今イベント中なんじゃないかぁ?」「絶対やばいよね、俺でもわかるよ」「多分これがフラグってやつだろう…スキルの発動準備ー!!」「テロルちゃん、乗って!」

「イベント中に戦闘準備してるとかチートですかねぇ!!」「たわし達が行動パターン取るから皆下がってー!!」


イベント中はめちゃくちゃ無防備な瞬間だと思いつつ、それぞれが作戦行動通りに指示、スキルなどを準備する。


鑑定も一応使用してみたが、全ての欄が????と表示されていて全く参考にならない。


『ブー、ブー、バグ解析、ブー……、ブルー、ブルー、ヘブン、ヘブン、ブルーヘブン、スティング、スティング、スティングr』


次の瞬間メキメキと音を立ててペンソールの中、甲冑の隙間からイレイザーアームの代わりに薄青紫の触手が現れペンソールのスピーカーになっている頭部を捻り潰す。


「キュォオオオオオオオオ!!!」


発泡スチロールを擦った音を引き延ばしたような音を発したペンソール、いや、ブルーヘブン系の何かはその声と共に戦闘態勢に入ったモンスター特有のアルゴリズム駆動を始めた。


「多分もうイベントシーン終わってるぞぉ!《鑑定》!」


念の為、もう一回鑑定。

少しでも情報が欲しかった。



ーーーーーーーーーーーーーー

ブルーヘブンクイーン

ーーーーーーーーーーーーーー

ブルーヘブン系の最上位種。イバラのような触手で攻撃から防御までの全てを行う。

ブルーヘブン系を10分に一回産み落とす。

その奇跡は神の祝福、不可能な夢をも可能にする事だろう。

ーーーーーーーーーーーーーー




最後の一文がよくわからない。



それでも残っている道は戦うのみだ。


「鑑定成功!攻防手段は触手!備えるのだー!!」


そう発言した数秒後、ペンソールの身体から薄紫色の触手がセシィマッマに伸びる。




「セシィ!《昇龍炎》だ!」




「《昇龍炎》!!」


縄跳びの容量で高速で伸びる触手を躱す。

そのまま空中に浮かび上がったセシィマッマが炎を纏った両手をそのまま下に向けて、ロケットが如く加速し始めた。


「《ブースト》!!!」


このスキルは本来無かったスキルだ。


リュウーズブートキャンプ中に生み出されたその技は空を泳ぐ龍の如く使用したセシィマッマを更に上へ送り出す。触手が追いつく暇も無くクイーンの顔面に辿り着いた。


「歯ぁ食いしばりなさい!《昇龍拳・極み》!!」



炎に燃える手を顔面に叩きつけるとクイーンは悲鳴ともつかない不快な鳴声を発してセシィマッマの排除を試みる。


だがそれはたわしが許さん!!



「《身代わり》!《残像》!」


にいさまの隣でスキルの《スピードチャージ》を付与している間と、接近不可能の時は準備、援護に徹底するという作戦の為、にいさまとたわしはセットで行動だ。


装備に付与されていた透明な鎖の呪いを発動する。


鎖の固定先はセシィマッマの近くだ。


透明な鎖に《残像》とHPを1犠牲にし《身代わり》で出した分身を乗せて走らせる。


ここでも器用さが働いているのか不安定な足場を物ともせず素早い速さで登っていく。



セシィマッマが攻撃を中断して回避に移行する。


触手を回避する度に《ブースト》を使用してバク転の容量で落下しながら触手を避けている。


登り位置と落下位置が交差する瞬間、分身が空中に身を踊り出した。


セシィマッマの周囲へ肉盾になるよう展開して一緒に落下する。たまに触手が当たって《残像》で出来た分身がポフンと消滅するので、あの触手は拘束用ではなく攻撃用である事がわかる。



その間に必要無くなった鎖を解除。


テロルがタクトパッパの肩の上で《プロミネンス・ファイアボール》のチャージを数回分完了させてホールドしていたのでテロルに声をかける。


「テロル!パッパ!」


「かしこまりー!パッパ、《火属性付与エンチャントファイア》よろしくです!《プロミネンス・ファイアボール》!!」


「《火属性付与エンチャントファイア》セシィ!カウント出来てるか?!」


「今2分経過!5分から10分で行動パターン変わるかも!《武人の呼吸》!」


タクトパッパがテロルの《プロミネンス・ファイアボール》に《火属性付与ファイアエンチャント》を行う。



この《火属性付与ファイアエンチャント》は一番最初にペンソールと対峙した際使用した技だ。タクトパッパのスキルもまた変質しており、通常の火属性付与とは違い火魔法や火に関係する特技の火力をさらに高めてくれる。

火力が上がった《プロミネンス・ファイアボール》は薄暗い室内で多くの影を照らし上げる。

そのおかげで薄暗い室内の壁の様子がわかりやすかった。

やはりと言うべきか、壁の蛍光色の違和感はブルーヘブンアイヴィーの群れだった。

事前に気がつけて良かったと思う。


ペンソールの、クイーンのいる頭部から腹部までを覆うほどに巨大な、煉獄の魔法がペンソールに接触する。



セシィマッマを追従していた分も含めた無数の触手やアームが防衛の為に攻撃を犠牲にして目の前の炎へ身を投じていく。



「ノイムちゃん!行くよ!!」



「にゃ!《スピードチャージ》!!」


その隙を見逃すにいさまでは無い。作戦通り行動を開始する。


「《デビルクラッシュ》!!《ソウルクラッシュ》!!」


軽い木製のハンマーを新しく装備したにいさまは以前とは比べものにならない素早い動きでペンソールの足元に接近、スキルを使用した。

たわしもリキャストタイム短縮の為に《スピードチャージ》をにいさまにリンクさせて並走する。


ペンソールとの初戦でにいさまの攻撃力と手数ではアームに阻まれて本体に攻撃自体が通らなかったと聞いている。


今にいさまが放ったのは当たった相手の防御を下げる《デビルクラッシュ》、10分の一のMPを奪う《ソウルクラッシュ》だ。


にいさまの247あるMPは事前に45に調整済み、MPを202消費してもらっている。


更に通常のボスには殆ど効かないデバフを使う。

普通ならデバフは入らないが、リュウさんが初戦で部位を限定する事による弱体が出来たかもしれない、という話をしたのでこれも検証。


テロルの火魔法強化による一撃がクイーンに入り大きく爆発した。

プスプスと漏れ出る毒ガスに引火したように見える。

心無しかクイーン部分が小さい?でも効いてるように見える。


「吸収200、今の総量は2000から1800、防御ダウン入った、一旦引くよノイムちゃん」

「にゃ、おけなのだ。《身代わり》リュウさんに連絡、防御ダウン可能、最大MPはおそらく2000、攻防手段は触手、火魔法で毒ガスが引火クイーン部分に火属性有効、10分に一回ブルーヘブン系を生み出すのだ。リュウさんの返事記憶する事。」


《身代わり》でHPを1消費して命令し、伝達に向かわせる。


テロルにヘイトが向かっているのか、触手でテロルを追尾している。

近づいたらその場でタクトパッパが火属性付与の剣で切り分け、テロルが火属性付与ファイアエンチャントされた初級の《ファイア》で焼く。

タクトパッパが移動しながら腰につけた布袋から魔法の聖水を取り出してテロルに渡して自分も飲む。飲み終わった瓶は別の袋に閉まっている。


「4分経過!」


セシィマッマが戦いながらカウントを教えてくれる。


「入り口の所に集まるのだー!!」


たわしがそう宣言するとマッマが殿を務めタクトパッパ達がこっちに下がってくる。


「パッパ!空瓶出して欲しいのだ!テロルは《スピードチャージ》でストック早めるから魔法の準備、にいさまは例の武器に持ち変えるのだ!」


入り口には作戦通りリュウさんに指示されたパラディン2人が僧侶と供にたわし達の護衛スペースを作ってくれていた。


たわしは更に《身代わり》を作る。


「オリーブオイリーを瓶に詰めるのだ!」


50体ほどのたわしが援軍から受け取ったオリーブオイリーの実を瓶詰めする。早めに終わった所にたわしが《均等加熱》を使った裁縫針で中身を掻き回して熱で溶けるオリーブオイリーの皮を溶かし油を露出させる。仕上げに燃えやすい丈夫な糸を差し込んで導火線も作成。


火炎瓶である。


植物油なので延焼性は期待値薄だが、この世界には魔法がある。


そう、水の中でも燃え盛る、この炎。


「テロル、この瓶の油の中に、《ファイア》を発動して欲しいのだ」


「火傷しません…?あ、《皮膚硬化》がありましたね!《ファイア》《ファイア》」


テロルが火炎瓶50個に火を内蔵させる。


油がその熱でブクブクと浮き、その内側で煌々と小さな太陽が細長く揺らめくフレアを放ちつつそこに留まる。


「《火属性付与》《火属性付与》」


更にタクトパッパがガラス瓶単体に《火属性付与》を行う。


熱くなった瓶に耐える為《皮膚硬化》を使用して熱に耐性をつけた。


やはりこの世界の魔法は、元のゲーム世界よりも格段に変化し続けている。



「そろそろ交代お願いします!」


壁を張って攻撃を防いでいたパラディンのドワーフとキャットシーが大盾を構えながら要求する。


後続から新たにパラディンと戦士、僧侶が送られて来た。


防御力の高いパラディンが《仁王立ち》を行いつつ、全員分のダメージを1人で背負う。そこに戦士が《かばう》を使用するとパラディンのHPを1残して残りのダメージを戦士が受ける事が可能だ。

全職で一番体力の多い戦士が体力が平均的で硬いパラディン1人分の死亡ダメージを引き受ければ回復が追いつくのだ。


僧侶が《リベヒール》を用いて30秒ごとに戦士に回復を掛け直す。

事故が起きても蘇生魔法が使える僧侶なので死んでもすぐ生き返らせられる。これによる無限ループで壁を張り直した。




クイーンが薄紫のトゲ触手を振り回し続けている間に鑑定の情報を伝える。


「《鑑定》したら10分に一回ブルーヘブン系を生み出すって書いてあったのだ」


「ヒェッ、そらまた面倒な…」

「とりあえず継続でノイムさんの《身代わり》の分身を1人つける、状態異常が一番面倒だから、分身が消えたら下がるんだぞ」


「わかりました、こっちは弱体化を引き続きやっていきますね」


作戦打ち合わせをしていると、カウントしていたセシィマッマから声がかかる


「タクト、クイーンの動きが止まったわ」



その言葉に警戒姿勢を取る。





「「キュルォルォンキィァァァ!!」」


黒板を引っ掻くような音が広間に鳴り響く。


その瞬間、壁についていた薄紫色のカビから無数の蛍光色が灯るのを確認した。


「壁から大量の蛍光色出現なのだ!!」


分身達に手に持ったガラス瓶を手で密封するよう操作する。





「うゎぁぁぁあ!!」


味方のいる、後方からも動揺した声が聞こえた。


そして戦闘音。


たわし達の目の前には大量の。


あの気持ちが悪いブルーヘブンアイヴィが、クイーンを守るように突撃していた。



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