第18話 化物
すみません、また遅れました……
リアル、なかなか時間作れないものですね……
安全優先の視点からしてみて、逃げようとしたのが間違いだったとは思えない。しかし、正直言って、どうにかできなくもない相手だったんだよなぁ、あの狼……下手をすれば、私は無傷で。
それに、あの魔法。あれだって、別に、私も使用することはできる。けど、使わんよなぁ、普通。
こんな道で、周りへの影響一切考えずに、こんな破壊まき散らせるとか、どんな強者だよ、本当……厄介さでいうと、狼の群れなんぞ比較にもならん。
クワバラクワバラ。そういう奴は、追い詰めたり、本格的に怒らせると、殺意すらぶつけてくるから嫌なんだよぁ。まあ、味方にしとけばとってもいい奴だったりするんだけど。
んで、どうしよか。周囲めっちゃ荒れてんだが。おまけに、竜車の方は気にせず爆走中なんだが。追いかけるべきなのかなぁ、これ……
………………………そもそも、光球付けっぱなしだから、向こうがまず気づくか、普通。ていうか、気づいてくれよ、頼むから。ここでスルーとか、泣いちゃうよ?
なんて思ってたら、突如向きを変え、こちらに爆走してくる竜車が一つ。いや、なにこれ、めっさ怖いんすけど!?
速い速い速い速い速い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!!!
逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい!!!!!!!
でも、私の理性が囁いちゃうわけだ。これ、最高のチャンスじゃね?と。
実際、何があったのか、この道を歩いていても、私がこのまま人に会える気はしない。そして、初遭遇者は、目的の方向が同じようで、足もある。なんというか、ご都合主義万歳状態だ。これは、乗るしかない!
ということで、迫る竜車に対して、特に何もせずにぼさっと突っ立って待つ。流石に、轢かないよね。轢くわけないよね。轢かない……よね?
一切減速せずに向かってくる竜車に冷や汗たらり。これ、マズくね?あちらさん、こっち轢く気じゃね?
足に力を入れて、いつでも跳べるように身構える。正直、ファーストコンタクトの多分人間が、轢きにくるようだったら、ちょっと、今後街に入るのをためらうレベルなんだけど。
竜車との距離がかなり近くなってきた。竜車は減速の気配なし。日本の(というかもとの世界の)車なら、今からブレーキをかければ十分止まれるだろうが、馬車的なアレにブレーキ、ついてるわけないもんなぁ……これはもう確定か。
憂鬱になりながら、足を曲げて飛ぼうとした瞬間、それは起こった。文字にして見ると、極めて簡単な出来事。竜車が、ドリフトして、そのまま、私のすぐ目の前、3mもないところで、横向きに止まったのだ。
ドリフトかー。砂埃がたってないから迷惑でもないし、暴走族って感じでもないなー。
…………………………て、そこじゃねえよな。
ブレーキない、なおかつ見た感じ木製の、しかも生き物(竜もどきだけど)に牽かせてる乗り物をドリフトで止まらせるって、一体、どんな技術だよ…………ていうか、御者、勇気と自信ありすぎだろ、尊敬に値するよ、これ。
残念ながら、馬車の向き的に、御者さんの顔は拝めないようだ。しかし、それはつまり。竜車の中にいる、あの術者が、降りてくるであろうということだ。
それ、怖いなぁ…………
結局、身構えたままの姿勢でいるしかない。
気が抜けない。冷や汗たらり、というか全身ガクブルである。魔法の実力だけじゃない。どう考えても、紋章的なもので彩られた、特注品な雰囲気の漂うもんに乗るのが、そこらへんの身分なわけねえよなぁ……この世界きて早々に、権力者・実力者に遭遇とは。御都合主義的に、ツイてるって言っていいのかねぇ、これ……
さあて、鬼が出るか蛇が出るか。個人的には女神が欲しいところなのだけども。天使に性別はないし、精霊はもう御馳走様だからなぁ、やはり女神が欲しい。
あの魔法使った張本人が女神的存在っていうのも、ギャップが怖いんだけどね。
こんな思考を高速で終え、竜車の扉が開くのを待つ。なんか、箱馬車、いや箱竜車というのかな?にしては、窓に該当する部分が一つもないのだけど。中を覗けないのは痛い。
なんだか、私だけ異様に緊張したまま、ついに、箱竜車の扉が開く。
かなりいい蝶番が使われているのだろうか。音もせずに開いた扉から出てきたのは…………女神だった。
自分でも何を言っているのかわからないが、絶世の美少女=女神ということである。…………うん、混乱しているなぁ、我ながら。
明らかに旅している人の格好ではない、どう見てもドレスを着た女神は、階段もないというのに、飛び降りるのではなく、静かに地面に降りた。うん、まあ、魔法ですね。発動の気配が見えないとか、この女神、やはり、先ほどの魔法の使用者なんでしょうね。
……………つまり、この女神、化け物なんですね。
「――――お初にお目にかかります。私、アスナラタリアと申します。以後、お見知り置きを」
どうでもいいことを考えていたせいで、女神に、先に喋り出さなければ、と思われたのかもしれない。女神が、まず自己紹介から入った。
これは、私も返さなければならないな。それにしても、まともな自己紹介、元の世界から見ても、相当してなかったなぁ……なんか懐かしい。
「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。自分は、レント・カンキと申します。こちらこそ、以後、お見知り置きを」
こんな言葉遣い、学生がするわけもないから、かなり乱れた気がするが、気にしないことにしよう。どうしようもないからね。
女神なのだから、寛容なお人柄であることを祈りましょうか。
私の分析が正しければ、きっと、敵でなければ、それほど厳しい相手ではないはずだ。というか、お願いだから、優しくしてほしいなぁ、なんて思うのは、高望みかな?
「平時であれば、この吉事を祝しながら、ゆっくりとお茶を楽しみたいところなのですが。なかなかそういった訳にもいかないこの御時世。カンキ様は、一体どのような理由で、この場所におられるのです?」
……うん。正しいのかどうかさえ、私はわからない言い回し。器用にも、建前だろうに、表情まで総動員して、本心で言っているように見える。お嬢様って怖いなー。
しかし、どのような理由で、ねぇ…………一体これは、どう答えるのが吉なのかなー。
素直に、異世界から来ました、精霊に送り出されましたー、なんて答えて、信用してもらえるかねぇ。何やら危険な香りがするようだしね、今。
ここは、無難に答えるべきかなぁ。でも、それ、少しでも回答間違えたら、首とんでもおかしくないないよな、きっと。
慎重に、頭を目一杯使って、まともな回答を。それが、この場での、正解かな。
「あ、そう言えば、申し忘れていましたわ。私、昔から人の嘘を見抜いてしまう魔法を得意としていますの。あまり使いたくはないのですが、事情が事情ですので、お許しいただけますよね?」
……………………………………はい?
今度も、できるだけ早く投稿できるよう努力します。
どうぞ、よろしくお願いします。