第肆話 辺境の村≪クロウンティア≫
学校が始まりました。
これからは不定期に投稿します。
※諸事情により村の名前を変更させていただきました。[11/04/15]
[2011/12/20]一部変換ミスを修正
記憶を頼りに≪黒の庭園≫を進むと村が見えてきた。村は柵で覆われていて周りから村の様子を窺うことはできなかった。
記憶が確かならばこの村の名前は≪クロウンティア≫。世界の中でも最も有名な冒険者の集まる村であったはず。
この村の周りには≪黒の庭園≫以外にも魔物が多く住む地帯が散在している。そのため、レベルアップを望む多くの冒険者が集まる街である。
ついでではあるが、魔物が多く住む場所には頑丈でよい商品となるものも多いためそれを買い取るための多くの商店もある村である。
しかし、それだけ多くの商家がありながらいまだ村なのは、やはり魔物の被害もそれだけ多いということである。
村の前までたどり着き、セリーナが門番に話しかけようとすると門番はセリーナが言葉を発する前に止められた。
「止まりなさい。さすがにその状態で村に入れるわけにはいきませんので先にこちらで洗浄してください」
門番は血塗れの状態で村にはいられるのはさすがに見た目から悪いから風呂に入って洗うように促してきた。
「そうさせていただけると助かります。ですけど、服がこれしかないんでどうしましょう」
もともと、すぐに風呂に入るつもりだったセリーナにとってうれしい限りのことだったが、いかんせんお金はあっても服はなかった。
そうすると、門番は
「そういう方は結構多いんですよ。ですから簡易の服が用意してありますのでそこから取っていってください。差し上げますのでご自由にしてください」
そう言うと私を外周にある風呂へと案内し、門番の仕事に戻って行った。
+++ † +++
門番アルフレッド・ピース・ファンクロウンは先ほどの少女が見たことがないはずなのに見たことがある、というより知っているような感覚がしてならなかった。
何故だろうとアルフレッドは疑問に思いつつも考えていた。
「なぁ。お前が対応した少女なんだが、見たことねぇか?つか、知ってるような気がしないか?」
考えていたら同僚のドルトス・ブリティスに話しかけられた。内容は今自分がまさに思っていたことと同じでびっくりしたが。
「だな。しかしなぜだろう、この胸につっかえた言葉が出てこないような感覚は…」
そう。頭では理解できるのだがそれを答えとして出せない。
あの鈍くも光る緋色の髪とそれを映えさせる赤銅色の目。何だろう聞いたことがあるはずなのにわからないこの感覚。
考えているときにふと言葉が浮かび声に出した。
「緋色の聖女様」
つぶやいた瞬間何故だか頭の中で考えていたすべてがかみ合ったような気がした。
「そうだ。話に聞く緋色の聖女様の姿にそっくりなんだ」
そう。まるで、五百年前に魔王ゼノンを打倒し、世界を救ったとされる。緋色の聖女セリーナ様にそっくりなのである。
といってもその髪の色と眼の色がそっくりであるだけであり、その容姿については一切伝えられてないため本当にそっくりなのかはわからない。
でも、先ほどの少女はまるで生まれ変わりのように容姿がそっくりだった。
「なぁ、アル。風呂入っちまった以上どうしようもないがあのままだと村が大騒ぎになるぞ?」
アルフレッドの言葉で理解したドルトスは懸念を同僚へと伝える。
「そうだな。風呂から出る前に家の使用人に言って隠すようにしてもらうよ」
そうして再び門番の仕事に戻って行った。
+++ † +++
そんなやり取りがなされているとも知らずセリーナは案内された風呂へとやってきた。
「うわ~、ひろ~い」
思わずもれたそんな一言。
今、この風呂場には人は誰もいないようである。しかし、そんなことは関係なくマナーとして体を洗うために洗い場へと向かう。
洗い場につくとまずは血で汚れた体をまずは水で洗い流す。その後、置いてある洗剤を使い髪を丹念に洗い、体も洗う。
体を洗っていると、風呂へ入ってくる足音が聞こえた。
「それにしてもやっぱり庭園の奴らは手ごわいわね」
「そりゃそうだよ。Aランク以上しか居ないんだから。でも、出くわしたのがAランクだけでよかったよ。あれでSランクがいたら死んでたね」
どうやら、二人組であるようだ。先ほどまで≪黒の庭園≫にいたようである。
その二人組が洗い場までやってくるとセリーナを見つけた。そして、声をかけた。
「こんにちは。同業者ですか?」
声をかけられるとは思っていなかったので、思わず言葉が詰まる。
「何驚いてるのよ?」
「いきなり声かけられたら誰でも驚くよ。全く。嬢ちゃんごめんね。このアホは無神経でね」
「誰がアホよ。誰が」
二人が話しているのを聞き、我に返ったセリーナは挨拶した。
「すいません。声をかけられるなど思っても見なくて…」
礼儀正しく声を掛け返した。昔、ベイに叩き込まれたため話すときなどはどうも丁寧な口調になってしまう。戦闘時はさすがに違うが。
だが、二人組はまさかそんな礼儀正しく返してくれるとは思っていなかったようで驚いている。
「まさか、そんな礼儀正しく返されるとはビックリしたよ。こちらこそすまんね、いきなり声をかけちまって」
その後、この二人と一緒に話しながら風呂につかると自己紹介をすることになった。
「あたしゃ、ビルレッティ・ポイズンレアだよ。見ての通り猫族だよ」
「私はファリアナ・レヴィアンス。鳥族よ」
二人が名乗ったのでセリーナも答えた。
「私はセリーナ・A・アインスフィアです。種族は吸血鬼で、一応真祖です」
答えた瞬間、二人は固まった。セリーナは自分がおかしなことを言ってしまったのかと不安になった。
二人が我に気付き、目頭を押さえる。その後、ビルレッティが話し始めた。
「あんた、その名前本気で言ってるのかい?」
「はい。最低だったとはいえ親のくれた名前を捨てるほど私は馬鹿じゃありません」
そう言うと、ビルレッティは頭に手を当て話を続けた。
「今、あんたの言った名前は伝説に残る魔王を倒した緋色の聖女様の名前だよ。フルネームまで知ってる人は多くはないけどね。でもね、さすがに一言一句同じ名前をつける親はいないよ。恐れ多くてね。セリーナって子はいまだに多いけど、あんたみたいにフルネームまでかぶる人は絶対にいないはずだよ」
そう言われて、ビックリした。
(え、何それ?緋色の聖女?それが私?いくらなんでもおかしいでしょ…)
「いまだに聖女様は伝説の英雄よ。さすがに今の名前嘘なら謝りなさい。私たちが良くても世界の人はゆるしてくれないわよ」
今度はファリアナが言った。
セリーナはよくわからなかったが聖女が自分なのか確信が持てなかった。
なので、質問をした。
「一つだけ聞かせてください。今は、いつ(・・)なんですか」
ビルレッティは答えた。
「メルデア暦785年の初秋の月だよ」
セリーナは、聞いて確信した。ここは、私のいた世界だと。しかも、魔王を倒した時より五百年もたっていると。
「で、どうなんだい?あんたの名前は嘘なんかい?」
聞かれて正直に答えた。
「ええ。間違いなく、私はセリーナ・A・アインスフィアです」
「じゃあ、貴方は自分が聖女だって言い張るのかしら?」
ファリアナが聞いてくるので、
「それはわからないわ。でも、間違いなく私はセリーナ・A・アインスフィアです。そして、間違いなく私はこの手で魔王ゼノンを殺した。そう、絶対に…」
二人は絶句した。セリーナが言っていることが本当なら、聖女セリーナは生きていたということになり、世界が混乱するだろう。
でも二人はセリーナの言い方から彼女が嘘は言っていないと思ったなので二人は、こう言った。
「疑って悪かったね。でもね、覚えておいて。その名前は、世界的に相当有名になっている。貴方が名乗るとこういう風になってしまうわけだよ。
だから、その…あんたが本物の聖女様でもね……。その…名前は変えといたほうがいいと思うわけだよ」
「そうよ。今の名前を名乗ると今みたいな反応が返ってくることは確実よ。だから、偽名を使うほうがいいわ。それにアインスフィアは今じゃ王家の血筋をひく者だけが許された家名だから、名乗ると危ないわよ?」
こうして、セリーナはこの世界がどうなっているのかを知っていった。
余談ではあるが、この後セリーナは二人と話し込みのぼせてしまい、介抱されたのちアルフレッドの使用人に二人ともども連れて行かれた。
正直、どういう方向に持っていきたいのかわからなくなりましたw
しばらくは村でのんびりとかな?




