↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束の向こう側  作者: 亀
82/158

第八十二章 誰が対応するのか

「問題が起きたら、誰が対応するのか。」


林川は、その問いを書いた。


物が足りない。


物が壊れている。


数量が合わない。


利用者同士でトラブルになる。


提供した物について問い合わせが来る。


さまざまなことが起こる。


仕組みを作る前から、問題が起きることを前提にしておく必要がある。


林川は、まず四つに分けた。


「提供側」


「運営側」


「利用者」


「行政」


それぞれに、できることと、できないことがある。


例えば、店から提供された物に問題があった場合。


店に確認する必要がある。


しかし、店だけにすべての対応を任せるのも違う。


運営側が受け付けて、必要な情報を整理する。


安全に関わる問題なら、決められた窓口へ連絡する。


利用者同士のトラブルなら、運営側がまず状況を確認する。


重大な問題なら、専門機関につなぐ。


林川は、線を引きながら整理した。


「最初に受ける人。」


「判断する人。」


「最終的に責任を負う人。」


この三つは、必ずしも同じではない。


そこが重要だった。


相談を受けた人が、すべてを判断できるわけではない。


逆に、判断する権限を持つ人が、現場の事情を全部知っているとも限らない。


だから、問題が起きたときの流れを決めておく。


林川は、


「受付 → 確認 → 判断 → 対応 → 記録」


と書いた。


そして、その横に、


「必要なら専門機関へ」


と付け加えた。


全部を運営側だけで解決しようとしない。


それも一つのルールになる。


林川は、少し考えた。


仕事でも、分からない問題を一人で抱え込むと、余計に時間がかかることがある。


分からないなら、分かる人に聞く。


自分で判断していい範囲を決める。


判断できないことは、勝手に決めない。


社会の仕組みでも同じだった。


ただ、ここで一つ難しい問題がある。


「誰が責任を持つのか。」


林川は、その言葉を書いてから、ペンを止めた。


責任という言葉は重い。


問題が起きたときだけ責任を求めるのではなく、最初から役割を明確にしておく必要がある。


誰が運営するのか。


誰が安全を確認するのか。


誰が費用を負担するのか。


誰が利用者からの相談を受けるのか。


誰が行政へ報告するのか。


誰が仕組みを見直すのか。


林川は、これまで書いてきた内容を見返した。


「行政」


「企業」


「地域」


「住民」


それぞれに役割を書き込んでいく。


行政は、全体のルールや安全面を確認する。


企業は、余剰品や物流など、自分たちにできる範囲で協力する。


地域の運営組織は、実際の受け渡しや相談を担当する。


住民は、提供することも、利用することもできる。


ただし、役割は固定しない。


林川は、その部分に線を引いた。


今日利用している人が、明日は提供する側になることもある。


企業が利用者になる場合だって、絶対にないとは言えない。


行政職員も一人の生活者だ。


誰かを「支援する側」と「支援される側」に分けすぎると、人そのものを見失う。


林川は、そこで一度ノートを閉じた。


責任を明確にすることと、人を固定することは違う。


責任は決める。


立場は決めつけない。


その二つを分けて考える必要がある。


しばらくして、再びノートを開いた。


最後の欄に、


「終了条件」


と書いた。


林川自身、そこまで考えていなかった。


仕組みを始める方法は考えていた。


問題が起きたときの対応も考え始めた。


しかし、いつまで続けるのか。


どんな場合に中止するのか。


それも決めておく必要がある。


安全上の問題が解決できない。


費用が大きくなりすぎる。


利用されない。


運営する人がいなくなる。


本来の目的から外れてしまう。


そういう場合には、一度止めることも必要になる。


林川は、


「続けることを目的にしない。」


と書いた。


続ける価値があるなら続ける。


問題があれば直す。


直せないなら止める。


止めたほうがいいなら、止める。


その判断も含めて、仕組みなのだと思った。


林川はペンを置いた。


仕組みを作るということは、


始める方法だけを考えることではない。


問題が起きたときにどうするか。


そして、終わらせるときにどうするか。


そこまで決めて、初めて一つの仕組みになる。


林川は次のページを開いた。


そこには、まだ何も書かれていなかった。


しばらく考えてから、


「お金は、どこから来るのか。」


と書いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。