⑤銀と白
「なぁ、ショーン………さん」
麻袋から数枚の大銅貨を払い、俺は彼に尋ねた。
「銀級の相手なんか、できるのか?」
白級の自分が考えるのもおかしな話だが、昇級試験の相手など、どう見ても初級冒険者の姿をした男に務まる仕事ではない。それとも、実は相当の実力者なのか。冒険者ギルドがこの戦いを許可した事も含め、頭の中では疑問が尽きない。
「さぁねぇ………でもやるしかないだろうよ。それが俺の仕事だからな」
口に挟んでいた櫛を空皿の上に置いたショーンは、テーブルの大銅貨を受け取ると立ち上がると、通り過ぎ様に一枚の大銅貨を、俺の胸に押し当てた。
「明日付き合えなくて済まないな」
「あ、あぁ」
言葉が思いつかず、返金された俺は適当な返事となってしまった。
―――翌朝。
俺は、早朝から冒険者ギルドの扉をくぐっていた。
相変わらず掲示板の前では、冒険者達が依頼書を巡って手を伸ばし合っている。稼ぎが重要な事は分かるが、やはりあの中に入ろうとは思わない。
「あら? 貴方は確か、リュウ君でしたか?」
冒険者達の群れからやや離れた所で、くすんだ灰色の鎧を纏ったアルゼットが立っていた。
「アルゼット、さん」
朝の挨拶として小さく頭を下げる。
既に彼女はその容姿と胸元の冒険者証から、目立つに目立っており、声を掛けられる直前にも、臨時のパーティとして他の冒険者に囲まれていた程である。周囲の目がある以上、白級の冒険者が横柄な態度を取る訳にはいかない。
その位の節度は俺にもある。
「今日は、試験のある日じゃ?」
「その前に訓練場で準備運動をしようと思ってね。その申請を済ませてきたところさ」
試験会場でもある冒険者ギルドの地下訓練場。そこで、技の最終確認を行う予定だという。
そういえばと、アルゼットが天井に一度視線を向ける。
「昨日は聞きそびれたけれど、貴方は先生の新しい生徒さん?」
「………生徒? いや、俺は単にあいつを冒険解説職として雇っているだけですが」
彼の事を先生と呼んでいた事を思い出す。
「何て勿体ない………先生は相変わらずですね」
それにしても、とアルゼットが笑顔のまま近付いて来る。
そして、俺の肩を掴んだ。
「私にとっては尊敬すべき方なので………先生をあいつ呼ばわりするは、止めてもらえますか?」
薄いとはいえ、鉄と木材で組まれた鎧が悲鳴を上げ始める。
「は、はい!」
流石は銀級。これは命に係わる。
「なら、結構です」
手を離し、笑顔のまま一歩引くアルゼット。




