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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第五章 初級冒険者、実力を知る
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⑤銀と白

「なぁ、ショーン………さん」

 麻袋から数枚の大銅貨を払い、俺は彼に尋ねた。

銀級(シルバー)の相手なんか、できるのか?」

 白級(ホワイト)の自分が考えるのもおかしな話だが、昇級試験の相手など、どう見ても初級冒険者の姿をした男に務まる仕事ではない。それとも、実は相当の実力者なのか。冒険者ギルドがこの戦いを許可した事も含め、頭の中では疑問が尽きない。


「さぁねぇ………でもやるしかないだろうよ。それが俺の仕事だからな」

 口に挟んでいた櫛を空皿の上に置いたショーンは、テーブルの大銅貨を受け取ると立ち上がると、通り過ぎ様に一枚の大銅貨を、俺の胸に押し当てた。

「明日付き合えなくて済まないな」

「あ、あぁ」

 言葉が思いつかず、返金された俺は適当な返事となってしまった。



―――翌朝。

 俺は、早朝から冒険者ギルドの扉をくぐっていた。

 相変わらず掲示板の前では、冒険者達が依頼書を巡って手を伸ばし合っている。稼ぎが重要な事は分かるが、やはりあの中に入ろうとは思わない。


「あら? 貴方は確か、リュウ君でしたか?」

 冒険者達の群れからやや離れた所で、くすんだ灰色の鎧を纏ったアルゼットが立っていた。

「アルゼット、さん」

 朝の挨拶として小さく頭を下げる。

 既に彼女はその容姿と胸元の冒険者証から、目立つに目立っており、声を掛けられる直前にも、臨時のパーティとして他の冒険者に囲まれていた程である。周囲の目がある以上、白級(ホワイト)冒険者()が横柄な態度を取る訳にはいかない。

 その位の節度は俺にもある。


「今日は、試験のある日じゃ?」

「その前に訓練場で準備運動をしようと思ってね。その申請を済ませてきたところさ」

 試験会場でもある冒険者ギルドの地下訓練場。そこで、技の最終確認を行う予定だという。

 そういえばと、アルゼットが天井に一度視線を向ける。

「昨日は聞きそびれたけれど、貴方は先生の新しい生徒さん?」

「………生徒? いや、俺は単にあいつを冒険解説職(チュートリアラ―)として雇っているだけですが」

 彼の事を先生と呼んでいた事を思い出す。

 

「何て勿体ない………先生は相変わらずですね」

 それにしても、とアルゼットが笑顔のまま近付いて来る。

 そして、俺の肩を掴んだ。

「私にとっては尊敬すべき方なので………先生を()()()呼ばわりするは、止めてもらえますか?」

 薄いとはいえ、鉄と木材で組まれた鎧が悲鳴を上げ始める。

「は、はい!」

 流石は銀級(シルバー)。これは命に係わる。

「なら、結構です」

 手を離し、笑顔のまま一歩引くアルゼット。

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