③銀級冒険者
肉料理が殆ど空になり、残った野菜を仕方なく摘まみながら食事を終えようとした時、女性の声がちっかうで響いた。
「先生!」
俺とショーンが声のする方向を向くと、そこには一人の女戦士が手を振って立っていた。鈍い光沢の軽鎧を纏い、背中には丸盾を、腰には細い装飾が施された長剣を下げている。
そして赤い髪の隙間、首元から見える銀色の冒険者証に、思わず言葉が漏れた。
「………銀級冒険者」
各ギルドに数名しかいないと言われる上級冒険者であった。
「おぉ………って、え~と、アルか」
「先生。今、私の名前が出てこなかったですよね?」
若干の間があった事に、アルと呼ばれた女性が腰に手を当てて口を尖らせる。
「勘弁してくれ。最後に会ったのは何年前だ? ってかお前、もう銀級か? そりゃぁ早いだろう?」
「速いも何も、もうすぐ昇級しますけどね」
そこでようやく、女性がこちらを向く。
「食事中にすいません。私、冒険者のアルゼットといいます。以前、先生………あー、えーと、ショーンさんから、色々と教えてもらっていました」
「………リュウです。まだ白級ですが」
相手は大先輩。一応、立ち上がって軽く頭を下げておく。
だが彼女は、引き気味に両手を振ると、大袈裟にしなくていいと苦笑した。
「そんなに畏まらなくていいよ。私だって、ついこの前までは似たような立場だったんだから」
この前と言っても、銀級になるには平均十年近くかかる。目の前の女性は、俺よりも若干年上にしか見えない容姿だが、実際はもっと上なのだろう。
「アル。お前こそ、すぐ出てこなかっただろう」
「だって、いつも先生って呼んで困ってなかったんですから! 仕方ないじゃないですか!?」
成程。
この先輩も、冒険解説職の彼から学んできた口の様である。
アルゼットが咳払いで話を無理矢理区切る。
「それでですね。私、明日昇級試験を受ける事になりました」
昇級試験。
冒険者が次の等級になる為には、ギルドから課せられた試練を達成しなければならない。内容は次の等級に見合った魔物の討伐、収集等と多岐に渡る。銀級の上は、金半級であり、上級の中でもさらに一目置かれる存在となる。




