②大損害
「アイリーンは?」
見当たらない生き残りの名を呼ぶ。
「後方の馬車に。死者の弔いに行きました」
「………そうか。すれ違っていたか」
結局、生存者は俺達三人とリヴォル、そして監督役のフォースィのみであった。試験を受けた残りの白級冒険者も、私兵に扮した青銅半級の先輩達の大半も、既に帰らぬ人となっている。
「うちのリーダーは、あれから何か言ってきたか?」
最初から信頼の欠片もないが、一応とロロに尋ねた。
奇襲してきた蛮族達のリーダーらしき猪亜人は、合流した俺達と数度打ち合った所で逃げ出した。結界が壊れた原因は謎のままである。
あの時の状況を考えれば、追撃出来る状況でもなく、俺達はその大きな背中を見送るしか出来なかった。その判断は、今も間違っていないと思っている。
ロロが首を左右に振る。
「リヴォルさんからは何もないですね。さっきから地面相手に喧嘩中です」
彼が顔を向けた先では、地面を何度も蹴る重装甲の男が、空気や地面に向かって汚い言葉を連発していた。
それよりもと、ロロが視線を戻してくる。
「後ろの状況はどうでしたか?」
「荷物の半分はが焼け落ちた。奴隷の方は………鍵が壊れたのか、壊されたのか、全員いなくなっていた」
だが、と続ける。
「死体も見つからない。連れ去られたのか、それとも単純に逃げたのか………そこまでは分からないな」
正直に言ったつもりだったが、俺はロロのまっすぐな視線に気付く。
「言っておくが、俺じゃないからな」
奴隷とはいえ、守るべき商人の荷物を故意に捨てる程、俺も馬鹿ではない。こんな所で冒険者資格を剥奪されたくはない。




