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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第一章 初級冒険者、護衛を経験する
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⑤巡回のお仕事

「おいおい。新人達を甘やかさないで、存分に働かせてやれ」

 シランドとダッカ―も合流する。

 既に商人達は、和気藹々(わきあいあい)と大木の下で腰を降ろし、軽食を始めていた。

 シランドが腰に手を当て、張られた結界の天頂を見上げる。

「彼女は特別なんだ。普通の冒険者達に、結界なんて便利なものはない。覚えておけ、休憩中が一番敵に襲われやすいんだ」

 冒険者だけの移動ならばいざ知らず、明るい間は煙の立つ火は起こせない。膝並みの背丈しかないとはいえ、悪意ある者が待ち伏せる可能性も考慮しなくてはならない。シランドは白級(ホワイト)の俺達に、護衛の基本を丁寧に語る。


 若手冒険者に対する教育の為にわざわざ教えてくれている。それ位は俺にも理解できた。

「ロロ。巡回に行こう」

「はい!」

 俺達の立ち位置は、あくまでも臨時パーティで入れさせてもらっている側だ。ここは、リーダーの指示に従う事にした。

 巡回といっても、商人達が集まる大木周辺はシランド達が担当し、こちらは街道の端に寄せられた馬車の周囲を見回るだけだ。



「お、巡回かぁ? ご苦労、ご苦労!」

 馬車に戻ると、黒髪の青年がこれまた意地の悪そうな笑みで手を上げている。

 冒険者から疎まれつつも、彼等に助言をする冒険解説職(チュートリアラ―)にして、俺の先生であるショーンである。

「ショーン………」

 すぐに空気が張り詰める。

 彼の隣にいる猫亜人(バステト)族のメイド、コルティが静かに目を細めて、睨んでくる。

「………さん」

 彼女の目が開くと同時に、空気が元の密度に戻る。

 気を許すと、未だに呼び捨てになりかねない。今更ではあるが、俺の悪い癖である。


「そういえば、ティリアは?」

 ショーン()には、もう一人メイドがいる。

「あぁ、どうやら馬車酔いしたらしくてな。まだ中で横になってる」

 彼女もまた、故郷以外で街を出たのは初めてである。街中に居れば馬車に乗る機会も殆どない。人も亜人も、誰もが一度は経験するのがこの馬車酔いだ。


「………様子を見に行くか?」

 ショーンが通り過ぎ様に、横目で呟く。

 あからさまな問い。それ位は、分かるようになってきた。

「いや、先に巡回を終えてからにする」

「………そうか」

 ショーンが静かに目を閉じて一度だけ鼻で笑う。

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