⑤巡回のお仕事
「おいおい。新人達を甘やかさないで、存分に働かせてやれ」
シランドとダッカ―も合流する。
既に商人達は、和気藹々と大木の下で腰を降ろし、軽食を始めていた。
シランドが腰に手を当て、張られた結界の天頂を見上げる。
「彼女は特別なんだ。普通の冒険者達に、結界なんて便利なものはない。覚えておけ、休憩中が一番敵に襲われやすいんだ」
冒険者だけの移動ならばいざ知らず、明るい間は煙の立つ火は起こせない。膝並みの背丈しかないとはいえ、悪意ある者が待ち伏せる可能性も考慮しなくてはならない。シランドは白級の俺達に、護衛の基本を丁寧に語る。
若手冒険者に対する教育の為にわざわざ教えてくれている。それ位は俺にも理解できた。
「ロロ。巡回に行こう」
「はい!」
俺達の立ち位置は、あくまでも臨時パーティで入れさせてもらっている側だ。ここは、リーダーの指示に従う事にした。
巡回といっても、商人達が集まる大木周辺はシランド達が担当し、こちらは街道の端に寄せられた馬車の周囲を見回るだけだ。
「お、巡回かぁ? ご苦労、ご苦労!」
馬車に戻ると、黒髪の青年がこれまた意地の悪そうな笑みで手を上げている。
冒険者から疎まれつつも、彼等に助言をする冒険解説職にして、俺の先生であるショーンである。
「ショーン………」
すぐに空気が張り詰める。
彼の隣にいる猫亜人族のメイド、コルティが静かに目を細めて、睨んでくる。
「………さん」
彼女の目が開くと同時に、空気が元の密度に戻る。
気を許すと、未だに呼び捨てになりかねない。今更ではあるが、俺の悪い癖である。
「そういえば、ティリアは?」
ショーンには、もう一人メイドがいる。
「あぁ、どうやら馬車酔いしたらしくてな。まだ中で横になってる」
彼女もまた、故郷以外で街を出たのは初めてである。街中に居れば馬車に乗る機会も殆どない。人も亜人も、誰もが一度は経験するのがこの馬車酔いだ。
「………様子を見に行くか?」
ショーンが通り過ぎ様に、横目で呟く。
あからさまな問い。それ位は、分かるようになってきた。
「いや、先に巡回を終えてからにする」
「………そうか」
ショーンが静かに目を閉じて一度だけ鼻で笑う。




