⑧だから規則がある
「………被害を受けた俺が頼んでも駄目か?」
このままでは二人に合わせる顔がない。俺は自分の頭で考えられる精一杯の案を提示する。
「気持ちは分かるけれど、その要望は受けられないわ」
「何でだよっ!?」
俺はいきり立った。
「相手から脅迫されている可能性があるからさ」
声はすぐ横から落とされてきた。
「………シランドさん? それに、ダッカ―さんも?」
俺は目を丸くする。
「相変わらずだな。追いかけて正解だったぜ」
「ソンナコトダロウト、オモッタ」
二人共、苦笑しながら小さく手を上げて挨拶する。
「なぁ、リュウ」
そして真剣な面持ちになる。
「別に二人は悪意があって拒否しているんじゃない。もしもお前の訴えで、処分が取り下げる事が可能になったら、今後臨時パーティで問題が起きた場合、下の等級の同業者達はどうなると思う?」
「う………」
言われて初めて気付く、簡単な結論。
被害者の訴えでリーダーの責任が回避出来るなら、上位の冒険者達は金にしろ、脅しにしろ、自分より下位の冒険者達を黙らせる事が出来る。仮にそうならなくても、下位の冒険者は今後の行動を考え、上位の冒険者に忖度するに違いない。
その訴えが、冒険者ギルドは他者からの圧力なのか、自主的なものなのかを判断する事は不可能だ。
故に、例外なく『リーダーや上位の冒険者の責とする』と定めた方が、冒険者にとってもギルドにとっても明快となる。
俺以外の冒険者達の想いを背負う事は出来ない。
止む無く、静かに座った。
「ま、お前の気持ちは有り難く貰っておくぜ」
「よ、止せって! そんなんじゃ………あ、頭を撫でるな! もうガキじゃねぇんだ!」
手を伸ばして嫌がる俺を笑いながら、シランドが俺の髪を何度もくしゃくしゃに掻き混ぜる。
そして、すぐにその手を止めると、シランドとダッカ―は深く頭を下げた。




