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追放された魔術師に声をかけたら異世界から来たチート級の魔法少女でした。~不撓不屈のオルカ~  作者: 堂道廻
【第五章】ワットウィルビーウィルビー

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第63話☆ こうしょう

《アステリズム・アスタリスク》は、所有者である魔法少女しか使用できません。

 カインさんが魔法少女になった姿を拝めないのは残念ですが、上手く交渉すればシャーリーを助けられるかもしれません。


「わかりました」わたしは答えました。


「へ、素直じゃねぇか。観念したようだな」


「その代わり、シャルロット王女を解放してください」


 彼らは互いの顔を見合わせました。決めかねている彼らにわたしは追い打ちをかけます。


「あの暗い隘路での出来事です。しかもあなたたちの手際は実に早く気を失うまで一瞬でした。彼女はあなたたちの顔なんて覚えていません。だから意識がない今のうちにどこかへ捨て置いてきた方がいいと思います。あなたたちだって復讐が目的であって、ただ人を殺したいだけの殺人鬼ではないのでしょ?」


 カインさんがスヴァンさんに視線を送り、スヴァンさんはうなずきました。


「……分かった。杖の使い方を教えたらそっちの女は解放してやる」

「万が一、こいつが本物の王女だったら困るしな、かっかっか!」


 その直後でした。カインさんの高笑いにシャーリーの瞼がピクリと痙攣したのです。


「ん? ……んーッ! んんーッ! んーッ!」


 タイミング悪くシャーリーの意識が戻ってしまい、身をよじって暴れ出しました。このままでは彼女の身に危険が及びます。 


「シャーリー、大丈夫だから落ち着いて」


 わたしはシャーリーを落ち着かせようと、なるべく平静を装って優しく声を掛けます。

 わたしと目が合ったシャーリーはキョトンとした顔で「……んんん?」と呻きました。イントネーションで『イノリ』と言ったのが分かります。


「おい、そっちの女、黙って大人しくしていろ。また騒ぎやがったらそのキレイな顔にお嫁に行けない傷が付くぞ」


 カインさんの脅しにシャーリーの顔がさっと青ざめました。


「よしよし、良い子だ。さて、それじゃあこの杖の使い方を教えてもらおうか」


「手が拘束されている状態では教えられません」


「手枷を外せって? そう言って騙すつもりじゃねぇだろうな?」


「そんなことはしません。ステッキの使い方を教えるだけです」


 もちろん嘘です。

 手枷が外れなくても、少しでもステッキに触れることさえできれば、エマージェンシーモードで変身できるのですが……。


「手が自由にならないと説明できない、その理由をまずは口で説明しろ」スヴァンさんが言いました。


「そ、それは……」


 適当な理由が思い付かず、わたしは言葉に詰まります。


「答えられないのか? やっぱり騙そうとしていたのか」


「違います、ステッキを起動するには指紋認証が必要なんです」


 咄嗟の出まかせですが、我ながらナイスな言い訳です。


「指紋認証? なんだそりゃ?」


「指先の指紋をステッキに読み込ませて認証するんです」


「あ? それじゃあ使い方が分かっても俺たちじゃ使えねぇってことか?」


「ッ!?」


 しまった、矛盾が起こってしまいました。修正しなくてはッ!


「ち、ちがいます! 最初だけです! 最初のワンタッチだけ!」


「あー? なんか怪しいなぁ。酒場のスケベ親父みたいなこと言いやがってよ」


「ほんとです! だから手枷を解いてください!」


「……で、認証が必要なのはどの指だ?」スヴァンさんが言いました。


「えっと……、ひ、人差し指です」


「どっちの?」


「み、右の……」


「そうか」


 スヴァンさんが短剣を取り出しました。鞘から放たれた刃がギラリと光ります。


「え……? なにをする気ですか?」


「切り落とすのさ、右の人差し指を」


「や、やめてください!」


「お前の狙いは、杖に触れてあのピンクの姿になるつもりだろ?」


 ぐぅ……、完全に見抜かれています。


「き、切り落としたら認証できなくなりますよ!」


「なぜだ?」


 スヴァンさんが短剣の刃先に触れます。


「指に血が通っていないとダメなんです」


「なんでそんなことが分かる? 試したことがあるのか?」


「え? えっと……、それは……それはですね……」


「よし、とっとと切り落とそうぜスヴァン。俺が抑えとくからよ、スパッといっちまえ!」


「あわわわわっ!」


 つくづく嘘が下手な自分が嫌になります。このままではわたしの指が斬られてしまいます! エンコ詰め魔法少女になってしまいます!


 カインさんがわたしの身体を抑えつけようと手を伸ばしてきた、正にその時でした。こつこつと倉庫に足音が響き、誰かがこちらに向かって歩いてきます。


 倉庫のドアが開いた様子はありませんでした。この人たちの他に誰か潜んでいたのでしょうか。でも、そんな気配はありませんでした。

 

「来たか……」


 静かにカインさんが言いました。彼は剣を抜き、スヴァンさんが弓を構えます。一瞬で空気がピリリと張り詰めました。

 彼らの行動でわたしは察しました。近づいてくるこの足音はロランさんに違いありません。ロランさんが助けに来てくれたのです。


 そして、暗闇から現れたのは灰色のローブを羽織り、ローブのフードを目深に被った人物でした。


 ロランさん? あの方がロランさんなら、なぜ顔を隠しているのでしょうか……。


「無事のようだな」


 彼の声が倉庫に木霊します。その声は、まるで青年のように若者の声だったのです。


 ロランさんの声に似ているけど、ロランさんの声じゃない? そんな……、ロランさんじゃない? わたしを助けに来てくれたのは他の誰かだった……。


「あん? 誰だぁお前は?」

「あいつ、自分じゃ俺たちに勝てないから傭兵を雇やがったのか……」


 スヴァンさんの声がわたしの胸を突き刺しました。


 ……そんな、やっぱり別人なの?


 ローブの男の人は長い息を吐き、「お前らは同じ失敗を繰り返した」と言いました。


「はあ? なんのことだ?」


「あの試合と同じように相手に準備させる時間を与えてしまった、それが敗因だ」


「なに言ってやがる? どうでもいいが見られたからにはお前も死んでもらうぜ」


 両手で剣の柄を握りしめたカインさんの間合いに入る直前で、男の人は立ち止まってフードを外しました。


 僅かな篝火の光に照らされて薄闇に浮かび上がったのは、金色の髪の紅い眼を鋭く輝かせる青年でした。


「お前……? 似てやがるな。野郎の親戚か?」


 ……違う、似ているんじゃない。有り得ないことですが彼はロランさん本人です。でも若い、どう見ても二十代前半にしか見えません。

 驚いたことにロランさんが若返っているのです。


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