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追放された魔術師に声をかけたら異世界から来たチート級の魔法少女でした。~不撓不屈のオルカ~  作者: 堂道廻
【第五章】ワットウィルビーウィルビー

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第62話☆ アスタリスク

 ――――……ッ!?


 目が覚めるとわたしの視界は横になっていました。堅い床に寝かされ、両手は後ろ手にロープで縛られているようです。


「こ、ここは……」


 小さなランタンの淡い灯りが周囲をぼんやりと照らしています。見える範囲を見回したところ、どこかの倉庫のようです。


 昼か夜かも分かりません。わたしはどのくらい意識を失っていたのでしょうか……。


「よう、やっと起きたか、人気者のイノリ様よぉ」


 倉庫に響く男の声に、わたしは上体を起こします。


 身構えるわたしの前に、暗がりから現れたのはやはりカインさんでした。くつくつと笑いながら彼は腰を落とします。


「なんで……こんなことを、あなたは何が目的なんですか……」


「モクテキね、そんなこたぁお前も分かっているだろ?」


「わたしたちへの復讐……、ですか?」


 はっ、とカインさんは鼻で嗤いました。


「そんな大げさなもんじゃあねぇよ。ただのお礼参りだ、お前というよりもロランの野郎にな」


「お礼参り?」


 その言葉の意味がよく分かりません。お礼参りとはなにかの隠語なのでしょうか。


「……ロランさんに何をするつもりですか?」


「あー? お前を餌にあのロランってヤツをおびき出してボコボコにしてやんだよ。あのときはお前たちの卑怯な戦法に油断して負けちまったが、イカサマなしで正面から戦えば俺たちの圧勝だった」


「こんな卑怯なことしておいてよく言えますね……。それにわたしたちはイカサマなんてしていません」


 卑しい笑みを浮かべてカインさんは肩をすくめました。


「あの日から何もかも狂っちまった……。観衆の前で恥をかかされたおかげで、俺らの信用はガタ落ち、挙げ句の果てにはパーティメンバーが引き抜かれ、《紅色の鮫》は解散するハメになった。せっかく飛ぶ鳥を落とす勢いでB級になったつーのによぉ……。俺らの野望をぶち壊したロランをボコボコにしてやらなきゃ気がすまねぇ」


「逆恨みも甚だしいです。自業自得の結果です。それにロランさんはあなたなんかに負けません」


「お前バカか? なぁ、バカだろ? そのためにお前がいるんだろ? 人質のお前がよ」


「くっ……、卑怯者……」


 彼は手も足も出せないロランさんを一方的に攻撃するつもりなのです。

 カインさんは歯噛みするわたしをせせら笑います。


「余計な人質が増えちまったけどな」


 そう言ったのは別の男性でした。カインさんに続いて暗がりから現れたのはスヴァンさんです。


 彼は少女を背負っています。

 シャーリーです。彼女は両手を縛られ、猿ぐつわされています。わたしと同じように眠らされているようです。

 彼はわたしの近くにシャーリーの身体を下ろして床に寝かしました。


 彼女から聞こえるすぅすぅと小さな呼吸音にわたしは安堵します。でも、状況は最悪です。なんとしてでも彼女を無事に帰さなければなりません。


「この子は関係ない! 今すぐ解放して!」


「それはできない、俺たちの顔を見られているからな。そいつの処遇を決めるのはロランとお前の後だ」スヴァンさんが言いました。


「その子にもしものことがあれば大変なことになります!」

 

「大変なこと?」


 依頼人の守秘義務を優先するなんて悠長なことは言っていられません。この状況を打開するにはシャーリーの正体をバラしてしまう他ありません。彼女が王女と知れば彼らだって手出しはできないはずです。


「なんだよ、言ってみろや」


「彼女はローレンブルク王国第二王女、シャルロット=ゼタ=ローレンブルク様なんです!」


 わたしがシャーリーの正体を明かすと彼らは沈黙しました。

 開いた口が塞がらないといった様子でポカンとしています。そして、堰を切ったようにギャハハハと声を上げて笑い始めたのです。


「マジ腹がいてぇ! なんだよお前、助かりたい一心で出た嘘がそれかよ? この女が王女だって? そんな出まかせを信じる訳ねぇだろうがよぉ!!」 


「ああ、王女がこんなみすぼらしい恰好をしているはずがない。嘘を付くならもっとマシな嘘を付くんだな」


 確かにシャーリーが着用しているのはお忍び観光用に用意された衣服でした。おそらく、目立たないように着替えてわたしに会いに来たのでしょう。


「それに俺たちは王女様の顔なんか観たことねーんだ、本物だって言われても分かんねぇつーの。まあ、女のツラは貴族令嬢みたいにキレイなツラしているけどよ」


「信じないと後悔しますよ。わたしたち《不撓の鯱》は王女のお忍び観光の護衛依頼を受けていたのです」


「あー、そうかい? そりゃ結構なことじゃねぇか。さぞ報酬もガッポリだったろうよ。くくくっ、笑いすぎて肝心なことを忘れそうになっちまったが、お前を誘拐した理由はロランの野郎をおびき出す以外にもう一つある」


「……」


「こいつの使い方を教えてくれよ」


 カインさんが取り出したのはわたしの魔法のステッキ、《アステリズム・アスタリスク》でした。


「お前の強さの秘密がこのステッキだってことは分かっている。さっきから色々試してみているんだけどよ、なんの変化もねぇ。使うにはなにか秘密があるんだろ? 早く教えろよ」


 どうやら彼はわたしに代わって魔法少女になるつもりのようです。


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