表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たとえ記憶が消えたって  作者: 彩坂初雪
お姉ちゃん、黒鳥
23/84

違うよ

     ◆



 駿平は、待つ。

 ひたすら、待ち続ける。

 ある一人の少女を、ずっと待ち続ける。

「ったく、親御さんも心配してるだろうに……」

 現在、午後十一時を回ったところである。

 大浦家に泊り込み、家事全般を習い始めてから既に三日が過ぎている。

 黒鳥からだけでなく、黒鳥の両親からも「酷いものだな」と思いっきりダメだしされた。特に、康弘はグループホームで料理や洗濯、たたみ物をこなしているせいか、速さと正確さが段違いだった。それを初めて目にした時は、自分の生活力のなさに大層へこんだものである。

 ただ、そんな駿平でも、大浦家の皆さんは本当の家族のように接してくれていた。康弘は宣言通り、瀬名と駿平のことをいつも気にしてくれて、毎日瀬名の様子がどうだとか、報告をしてくれる。女性陣も女性陣で、駿平を散々こき使いながらもできないところはさりげなくフォローしてくれるし、温かく見守ってくれている。昨日、俊也から「大丈夫そうか?」とメールが着たが、「大丈夫だと思う」と返信できた。

「遅い……」

 月明かりと、街灯を頼りに辺りを見回すが、目的の人物はまだ現れない。

 大浦家の生活になれたとはとても言いがたいが、少しだけ心に余裕ができたのは確かだった。そこで駿平は、瀬名の現状をいろはに伝えることにした。黒鳥が以前したように、浅井家の前に陣取っていろはを待っている。

 浅井家の母親とは、昔から面識があるため、許可もとっている。

「あんの不良娘……」

 あと数日でゴールデンウィークという時期だが、夜に出歩くにはまだ肌寒い。

 腕をさすりながら待つこと数十分。

「お、やっと帰還か」

 まだ少し距離はあるが、蛍光灯の光に照らされる金色の髪の毛はいろはのものだ。

「ん?」

 近くまで来ると、いろはもこちらに気付き、いつだったかと同じく嫌そうな表情を浮かべる。

「どけ」

 いろはから見たら、駿平は家の前で立ちふさがる門番だろう。

 睨み付けられる。

「どかないよ」

「あ?」

 恐いです。この幼馴染恐いです。

「この前、これ以上あたしに近付くなって言っただろ?」

「言われたね」

 イライラしていることを隠そうともしない。

「だったら、どけ」

「どかないよ」

「うっぜえな。また様子見かなにかか?」

 やれやれという感じでいろはが問うてくる。



「違うよ」



「あ?」

 今度の「あ?」はイライラではなく、戸惑いからくるものだった。毎回、様子見で来たとしか言っていないから、予想外だったのだろう。

「じゃあなんだよ? ケンカの相手ならしてやるぞ?」

 物騒なことを言うな。

「伝えたいことがあったから来ただけだよ」

「伝えたいこと?」

「そう」

 駿平は、なにも隠さず、単刀直入に言った。



「姉ちゃんが、認知症って診断された」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ