帰り道〜
校門の手前。
昼の熱が少しだけ残っている。
グラウンドの声が遠くで続いていて、風に混ざって流れてくる。
「いやー、よかったでしょ軽音!あれ普通に当たりじゃない?」
アムネがそのままのテンションで振り返る。
「当たりかどうかはまだ早いけど、完成度は高かったね、ちゃんと合わせてたし」
スイが少しだけ冷静に返す。
でも否定はしていない。
「でしょ!?しかもあのボーカル、絶対もっと化けるタイプだって!」
アムネが続ける。
「途中で変えてたね、あれ合わせられるのは周りも上手い証拠だよ」
スイが少しだけ笑う。
歩きながら、校門が見えてくる。
その近く。
見覚えのある後ろ姿が二つ。
話しながら歩いている。
「あ、さわら先生とゆうき先生じゃない?」
スイが言う。
アムネがすぐ手を振る。
「せんせー!」
二人が振り向く。
「こんにちは」
さわらが軽く会釈する。
「お疲れ様です、今帰りですか?」
ゆうきも柔らかく続く。
「そうです、ちょっと部活見てきて」
スイが代表して答える。
「軽音部ですか?」
さわらが聞く。
視線が少しだけこちらに向く。
「そうそう!転校生連れてったんですよ!」
アムネがすぐに入る。
「……どうでした?」
さわらが聞く。
押しつけない聞き方。
少しだけ間ができる。
(……)
言葉を探す前に、音が浮かぶ。
ドラムの一打。
低いベース。
声。
「……悪くなかった」
短く出る。
「でしょ!?」
アムネがすぐ反応する。
「いやほんと、普通にレベル高かったですって、あれ」
少し食い気味。
ゆうきが小さく笑う。
「そんなにですか、それは気になりますね、今度覗いてみようかな」
軽く言う。
「顧問ですからね」
さわらが静かに続ける。
「最近は任せきりでしたし、少し様子を見てもいいかもしれません」
淡々としてる。
でも、少しだけ興味がある声。
「え、じゃあ今度一緒に行きましょ!」
アムネが乗る。
「授業優先ですよ」
すぐに返される。
でもきつくはない。
「ですよね〜」
軽く流す。
少し風が吹く。
校門の外。
帰る人の流れができている。
「それじゃあ気をつけて帰ってくださいね」
ゆうきが言う。
「はい、先生たちも」
スイが返す。
軽く会釈。
そのまま、すれ違う。
背中が少しずつ遠くなる。
「いいなー軽音、絶対楽しいってあれ」
アムネがまた言う。
さっきと同じ熱。
「まだ一回だからね、様子見でいいと思うよ」
スイが抑える。
バランスが戻る。
(……)
足音が一定に続く。
でも。
頭の奥に、さっきの音が残っている。
無意識に、足が少しだけリズムを取る。
すぐに止める。
(……)
視線を前に戻す。
夕方の光。
いつもの帰り道。
でも。
少しだけ違って見えた。




