カルタ部③ 帰り道
畳の上。
札が静かに片付いていく。
「はい、今日はここまでにしよ〜」
ももねの声がやわらかく落ちる。
「そこ大事なんだよー」
少しだけ芯のある言い方。
「お疲れさまです」
声が重なる。
「疲れた〜」
おむたろが軽く伸びる。
「ちゃまも〜」
「ほら、片付け終わってからにしよ〜」
ももねがやんわり止める。
「はーい」
ゆるい返事。
その横で——
「ほな、先帰るわ」
くまちゃんが手を上げる。
「今日は助っ人ありがとうございました」
「いえいえ〜、また呼んでください」
軽く頭を下げて、部室を出ていく。
(ちゃんと線引きしてる)
アビィは静かに見る。
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廊下に出ると、夕方の光が伸びていた。
「ねえ、このあとどうする?」
アムネが振り返る。
「帰る流れじゃない?」
スイが言う。
「えー寄り道したくない?」
「したい前提」
「したいでしょ?」
「まあ」
短く頷く。
「帰りにコンビニ寄らない?」
おむたろが言う。
「ちゃまも〜!」
「行く行く!」
アムネが即乗る。
「決まるの早いなあ」
スイが少し笑う。
「……別にいいけど」
アビィが答える。
「よし決まり!」
「決まってないって」
(もう決まってる)
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昇降口。
外に出ると、少しだけ空気が冷たい。
「この時間、なんかいいよね」
アムネが言う。
「わかる」
スイが頷く。
「……静かになる前の感じ」
「それそれ!」
アムネが笑う。
(言い過ぎたかも)
少しだけ視線を逸らす。
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校門を出て、並んで歩く。
「そういえばさ〜」
「長い」
スイが即切る。
「まだ何も言ってない!」
「予測」
「ひどい!」
笑いが広がる。
「……長い」
アビィが一言。
「ほらー!」
スイが乗る。
「なんで!?」
(わかりやすい)
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少し歩いたところで——
「……騒がしいな」
低い声。
「グレイ!」
アムネが手を振る。
「アム殿」
迷いなく呼ぶ。
(変わった)
「来たんだ、レイ」
アムネが返す。
距離の近い呼び方。
「導かれただけだ」
「偶然でしょ」
スイが言う。
「必然だ」
言い切る。
⸻
アムネが横に並ぶ。
自然な距離。
「何してたの?」
「観測だ」
「なにそれ」
「この時間、この場所における——」
「はいはい長い」
スイが止める。
「まだ途中だ」
「知ってる」
(いつも通り)
でも呼び方だけ、少し違う。
⸻
「帰りにコンビニ行こ〜!」
おむたろが割って入る。
「ちゃまも〜!」
「行く行く!」
アムネが笑う。
「レイも来る?」
自然に誘う。
一拍。
「……同行しよう」
短く答える。
(来るんだ)
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駅前。
人が増え、明かりがつく。
「じゃあこの辺で解散かな」
スイが言う。
「また明日ね〜!」
おむたろが手を振る。
「ちゃまも〜!」
「またね〜」
ももねがやわらかく言う。
「おつかれ」
スイが手を上げる。
「アビィちゃんもまたね!」
「……また」
自然に返す。
(……自然だ)
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グレイが一歩下がる。
「では、我はこの路を行く」
「さらばだ」
背を向ける。
「またね、レイ」
アムネが言う。
一瞬だけ足が止まる。
「……ああ、アム殿」
振り返らずに返す。
そのまま歩いていく。
(ちゃんと返すんだ)
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人がそれぞれの方向へ散っていく。
少しだけ賑やかだった時間。
「……帰るか」
アビィも歩き出した。




