表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

カルタ部③ 帰り道

畳の上。


札が静かに片付いていく。


「はい、今日はここまでにしよ〜」


ももねの声がやわらかく落ちる。


「そこ大事なんだよー」


少しだけ芯のある言い方。


「お疲れさまです」


声が重なる。


「疲れた〜」


おむたろが軽く伸びる。


「ちゃまも〜」


「ほら、片付け終わってからにしよ〜」


ももねがやんわり止める。


「はーい」


ゆるい返事。


その横で——


「ほな、先帰るわ」


くまちゃんが手を上げる。


「今日は助っ人ありがとうございました」


「いえいえ〜、また呼んでください」


軽く頭を下げて、部室を出ていく。


(ちゃんと線引きしてる)


アビィは静かに見る。



廊下に出ると、夕方の光が伸びていた。


「ねえ、このあとどうする?」


アムネが振り返る。


「帰る流れじゃない?」


スイが言う。


「えー寄り道したくない?」


「したい前提」


「したいでしょ?」


「まあ」


短く頷く。


「帰りにコンビニ寄らない?」


おむたろが言う。


「ちゃまも〜!」


「行く行く!」


アムネが即乗る。


「決まるの早いなあ」


スイが少し笑う。


「……別にいいけど」


アビィが答える。


「よし決まり!」


「決まってないって」


(もう決まってる)



昇降口。


外に出ると、少しだけ空気が冷たい。


「この時間、なんかいいよね」


アムネが言う。


「わかる」


スイが頷く。


「……静かになる前の感じ」


「それそれ!」


アムネが笑う。


(言い過ぎたかも)


少しだけ視線を逸らす。



校門を出て、並んで歩く。


「そういえばさ〜」


「長い」


スイが即切る。


「まだ何も言ってない!」


「予測」


「ひどい!」


笑いが広がる。


「……長い」


アビィが一言。


「ほらー!」


スイが乗る。


「なんで!?」


(わかりやすい)



少し歩いたところで——


「……騒がしいな」


低い声。


「グレイ!」


アムネが手を振る。


「アム殿」


迷いなく呼ぶ。


(変わった)


「来たんだ、レイ」


アムネが返す。


距離の近い呼び方。


「導かれただけだ」


「偶然でしょ」


スイが言う。


「必然だ」


言い切る。



アムネが横に並ぶ。


自然な距離。


「何してたの?」


「観測だ」


「なにそれ」


「この時間、この場所における——」


「はいはい長い」


スイが止める。


「まだ途中だ」


「知ってる」


(いつも通り)


でも呼び方だけ、少し違う。



「帰りにコンビニ行こ〜!」


おむたろが割って入る。


「ちゃまも〜!」


「行く行く!」


アムネが笑う。


「レイも来る?」


自然に誘う。


一拍。


「……同行しよう」


短く答える。


(来るんだ)



駅前。


人が増え、明かりがつく。


「じゃあこの辺で解散かな」


スイが言う。


「また明日ね〜!」


おむたろが手を振る。


「ちゃまも〜!」


「またね〜」


ももねがやわらかく言う。


「おつかれ」


スイが手を上げる。


「アビィちゃんもまたね!」


「……また」


自然に返す。


(……自然だ)



グレイが一歩下がる。


「では、我はこの路を行く」


「さらばだ」


背を向ける。


「またね、レイ」


アムネが言う。


一瞬だけ足が止まる。


「……ああ、アム殿」


振り返らずに返す。


そのまま歩いていく。


(ちゃんと返すんだ)



人がそれぞれの方向へ散っていく。


少しだけ賑やかだった時間。


「……帰るか」


アビィも歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ