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転校生(アビィとアムネ)

仲間内のやつだよ

春の空気は、どこか落ち着かない。

新しい教室、新しい顔ぶれ、新しい空気。


その全部が、私には少しだけ遠く感じる。


廊下に差し込む光が、やけに明るかった。


(……眩しい)


そんなことを思っていると、前を歩く担任が振り返る。


「緊張してるか?」


明るい声。無駄に爽やか。


「別に」


短く返すと、先生は少しだけ笑った。


「いいね、その感じ。3年A組はちょっとクセ強いけど、悪いやつらじゃないぞ」


(クセ強いって何)


ツッコミは飲み込む。


「まあ、困ったらすぐ言え。俺は味方だからな」


軽くそう言って、教室のドアに手をかける。


(……熱いタイプか)


正直、あまり得意じゃない。


「よし、行くぞ」


ガラッと扉が開く。


一瞬で、教室の空気が変わった。


「おー、来た来た」

「転校生だろ?」

「この時期に?」


ざわつく声。

視線が、一斉に集まる。


「静かにー」


パン、と手を叩く音。


「はい注目。今日から3年A組に新しい仲間が入る」


教室の前に立たされる。


(……やっぱり、こうなるか)


慣れてる。

転校なんて、どこでも同じ。


「自己紹介、シンプルでいいぞ」


横から軽くフォローが入る。


(ありがたいけど)


私は黒板の前で立ち止まり、短く息を吐いた。


「……アビィです」


それだけ言う。


沈黙。


ほんの一瞬の間。


「え、それだけ?」

「名前かわいくね?」

「ハーフっぽい」


小声が広がる。


(想定内)


「はいOK。シンプルイズベストだな」


アスカ先生がすぐに拾う。


「席は……あそこだな。窓側、一番後ろ」


指差された先。

教室の端に、ひとつだけ空いた席。


(いい位置)


誰からも少し距離がある。


私はゆっくりと歩き出す。


視線はまだ集まっている。


(気にしない)


そう思いながら歩いて——


ふと、ひとつの気配に引っかかった。


前から三列目、窓際。


一人の女子が、こちらを見ている。


目が合った瞬間——


ぱっと、笑った。


(……軽い)


屈託のない笑顔。

迷いのない視線。


(苦手なタイプ)


そう思ったのに。


——その女子は、手を軽く振ってきた。


(初対面でそれやる?)


一瞬だけ、視線を逸らす。


でも、向こうは気にしていない。


むしろ楽しそうに、こちらを見ている。


(……何なの)


私はそのまま席に向かった。


窓際、一番後ろ。


椅子を引いて座る。


教室のざわめきは、少しずつ元に戻っていく。


(関わらなければ、それでいい)


そう思った、その時。


「ねえ」


斜め前から、声が飛んできた。


さっきの女子。


椅子ごとくるっと体を向けて、こっちを見ている。


距離が、近い。


「アビィってさ」


人懐っこい笑顔のまま。


「なんか面白そうだね」


——第一印象は、最悪だった


「……何が?」


短く返す。


アムネは気にした様子もなく、にっと笑ったまま。


「雰囲気?なんかさ、普通じゃない感じする」


「普通だけど」


「えー、絶対違うでしょ」


即答。


(決めつけが早い)


「初対面でそれ言う?」


「うん。わりと直感当たるタイプなんだよね、あたし」


軽い。

でも、嫌味はない。


ただ距離が近いだけ。


(めんどくさい)


そう思うのに、会話は途切れない。


「アビィってさ、どこから来たの?」


「ちょっと遠いとこ」


「ざっくりだなー」


「詳しく話すほどでもない」


「あ、そういう感じね」


納得したように頷く。


引くかと思ったのに——引かない。


「じゃあさ、これから暇なとき何してんの?」


「特に何も」


「それ一番つまんないやつじゃん」


「別に困ってないし」


「もったいな」


(価値観の違い)


はっきりしてる。


でも。


「じゃあさ」


アムネが少し身を乗り出してくる。


「バイクとか興味ある?」


「……バイク?」


思わず聞き返す。


「うん。あたし、めっちゃ好きなんだよね」


楽しそうに言う。


さっきまでの軽さとは少し違う。

ほんの少しだけ、熱がある。


「見るのも乗るのも。音とか、振動とかさ」


(へえ)


予想してなかった話題。


「免許はまだだけどさ、友達が乗ってて」


「……そう」


「今度会わせてあげるよ」


軽く言う。


本当に、軽く。


「いや、別に」


反射で否定する。


「えーいいじゃん。絶対面白いって」


「面白さ求めてないし」


「アビィに足りてないの、それだよ」


即答。


(なんで断定されてるの)


小さく息をつく。


「……考えとく」


当たり障りのない返事。


それでも——


「よし、決まりね」


勝手に話が進む。


(強引)


でも、不思議と嫌じゃない。


「名前なんていうの、その友達」


何となく、聞いていた。


アムネは少しだけ、得意げに笑う。


「怪獣」


「……は?」


思わず、声が出た。


「名前?あだ名?」


「本名は違うけど、みんなそう呼んでる」


楽しそうに言う。


(絶対ろくでもないやつ)


「ちょっと変わってるけど、いいやつだよ」


(“ちょっと”で済む?)


目の前のこの子も十分だけど。


そう思いながら、窓の外に目をやる。


桜はまだ揺れている。


(バイク、か)


興味なんてないと思ってた。


でも。


「……どんなやつ?」


気づけば、そう聞いていた。


アムネの顔がぱっと明るくなる。


「気になる?でしょ?」


(……別に)


そう思いながらも。


ほんの少しだけ。


退屈だったはずのこの教室が、

違って見えた気がした。

キャラは変えてあるよ名前で楽しでね!

ある程度近くしてあるけど!

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