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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第52話 虎西での特訓 part3

 特訓最終日。その日の朝もドッジボールもどきの特訓をしていたが、初回と比べて回りを取り囲む生徒たちの数は増え、さらに多くのボールが飛び交う中、それらを全て躱し続けること30分以上が経過していた。


(異能と探査魔法を維持しつつ、相手の目線、手の動きから攻撃を予測しろ。五感から得られる情報が多ければ多いほど、探査魔法への負荷を減らせる)


 朝の特訓も午後の特訓もやっていることはほぼ同じ。異能、探査魔法、肉体強化、それらを息するかのように維持すること。モンスターによる不意打ちがいつあるか分からない深層ではそれらを無意識下でも行っていないと死につながりかねない。それは以前の亀北ダンジョンでマグマミストのリスポーン狩りでもわかるだろう。


「思ったより早く上達したな。これなら深層攻略も夢でないかもしれん」


「ええ、私たちのところに来てほしい人材ですよ」


 20歳になって、魔力や異能のピークを過ぎ始めた虎西大生にとって、めきめきと上達する彼らを羨ましく思う。それと同時に、彼ら8人はまさに磨けば光るダイヤの原石。そんな彼らを輝かせることができたのであれば、誇っても良いのかもしれないと思えるほどだ。そんな複雑な気持ちを抱きつつ午前の特訓は終わるのであった。



 昼休み、発明ちゃんがやってきて3日前に渡した新型EXギアや新装備の調子を尋ねる。渾身の出来でニコニコとしているが、信二の顔には申し訳なさそうな表情が出ている。


「俺のグレネードランチャーだが、今の特訓には不向きだから使っていない」


「なんでや!漫画とかなら新武器で活躍するところやろ!」


「これは現実だ。今、欲しいのは火力よりも手数。二丁拳銃とかガトリングの方があっているかもしれん」


「それを先に言えや!ホンマ、明後日のダンジョン攻略大丈夫かいな」


「火力が必要になる場面はあるだろうし、結局のところ、使い分けが重要だな。カケルも貰っていたんだろ」


「うん。この小太刀だね。正直なところ、二刀流に慣れてないけど頑張るよ」


【はい、お姉ちゃんとして頑張ります】


「……ウチの頑張り必要あったんかいな。っていうか、そのヒカリちゃんが人型EXギアって聞いたけど、見た目はどう見てもウェポン型やな」


【人型に戻りますね】


 カケルが持っていた柄が光り輝き、少女の姿へと戻っていく。ヒカリちゃんの変形を間近で見た発明ちゃんはほっぺをつついたり、首元を触って脈をみたりする。


「見た目は人間やし、触った感じも本物やけど、脈は無いから間違いなく機械。アンドロイド、サイボーグとかそっちの類。こんなのがコンピューター技術もへっぽこな100年前の昔に作られたちゅうんか」


「もしかして褒められました?」


「あたりまえやろ、オーパーツもオーパーツや。むしろ、ロストテクノロジーと言っても差し支えないレベルや。まあ、竜東学園の配信でわかっとるけど、あくどいことをした結果、生まれたことやから真似する気はないで。でも、目指す頂きは見えたって感じやな」


「リョウはどうだったの?」


「ああ、俺の鉄に変えられるコスチュームと武器は助かったぜ」


「あれな、あんさんの髪の毛からDNA解析して、生地に組み込んで自分の体の一部と誤認させとるんや」


「なんか小難しいこと言っているけど、すげーんだな」


「他は? ウチのことガンガン褒めてや」


「は~い、タロと仲良くなれました」


「……それ、ウチの作った装備と関係あるん?」


「強くなったか分かんない」


「どういうことやねん!もうちょいわかるやろ。あれは鉄君と同じ仕組みでできとるんやから回復できる範囲増えとるはずや」


「皆はそうだけど、私とみみみちゃんのは汎用品だし……」


「私とサキちゃんって綿と植物が無いと何もできないからね。結局、異能が使えないときに備えて対応できる銃とか杖とかナイフとか汎用的なものに落ち着くんだよね」


「そうなんよ~異能とEXギアをどう組み込むんかが問題になってな、異能特化型は保留になってしもうたんや。何かええ案、思いついたら作るけど、深層アタックまでに間に合わんかったってわけや」


【いざとなったら妾が乗っ取るから大丈夫じゃ】


「どこが大丈夫なんですか!?」


「生徒会長はんから聞いたけど、これが噂の天使ちゅう奴か。ウチのタコハチにもおしゃべり機能つけるのも面白いかもしれへんな」


【おしゃべり機能!? 妾はAIではないぞ】


「似たようなもんやろ。人ってのは昔から自然の力を自分の物にしてきたんや。魚のように海を回りたいから船や潜水艦を作って、鳥のように空を飛びたいから飛行機を作る。なら、天使の機能を再現しようとするのは当然の流れや」


【できるわけが無かろう】


「それをやるのが科学なんやで。おしゃべりサポート自体は市販品でも出まわっとるし、近い将来、天使の他者への乗っ取り機能も解明して、ゲームみたいにモンスターをテイムとかできるかもしれへん」


「よかったね、タロ。友達が増えるよ」


「わん」


 嬉しそうに尻尾をぱたぱたと振っているタロをよしよしと撫でるカナエをほほえましく見ながら、談笑しているうちに、昼休みは過ぎるのであった。



 午後の特訓。初回とは異なり、実践に近づけるため、初期位置はランダムな場所に飛ばされ、転送されるや否やブザーが鳴り響く。それと同時に信二の目の前に銃弾が転移する。だが、索敵範囲を広げていたことで転移弾の位置を素早くキャッチし、余裕をもって躱し、牽制の弾を撒きながら走り回る。


(互いの索敵範囲はこの1週間の特訓で分かっている。そして、その範囲が相手の方が上であり、今の俺の索敵内にブラックはいない。開始直後の最も油断する瞬間の狙撃を外したのであれば、相手は俺の索敵外かつ自身の索敵内の距離を保とうとするはず。その範囲は狭い!)


 やみくもに走り回っているわけではない。自身の頭の中に描いた地図と走り回って特定のエリア内に相手が居た痕跡が無いかを調べている。


(見つけたぞ、魔力痕。つまり、ブラックはここにいたということ。その量からしてやはり人間サイズの転移はしていない)


 無論、追撃から逃れるためにあらぬ方向へ転移する可能性はある。だが、エクステラの無尽蔵とも言える魔力量ならともかく普通の人間ならば、一試合に2,3回できれば良い方。仮に常人よりも魔力量が多くても、転移弾を割く魔力量も考えればそれくらいの回数だろう。それを索敵から逃れている今、切る必要性は無い。

 そして、避け続けたことで、向かってくる銃弾の数が増えるもその狙い自体は甘い。


(やはり、冷静さを欠いてきたな。だが、正確に狙ってくるドッジボールよりかは楽だな)


 相手の戦術の変化に慌てず、相手の痕跡をたどり、潜伏場所を探し出していく。近づいていくにつれて増える銃弾。そして、ついに探査範囲に引っかかり、信二も転移弾で応戦する。


「私と同じ攻撃を!?」


(エクステラに変身しているならともかく、今の俺はせいぜい数発しか撃てないが、相手からすれば自分ととな時だけ撃てる『可能性』を考慮せざるを得ない)


 思考の片隅には『可能性』という無駄な情報処理が増える。余計な情報は本来すべき思考、判断を鈍らせる。相手の行動に余計な裏も考えてしまう。リスクヘッジに長けている深層攻略者ならなおさらである。そして、ブラックが信二の前に姿を現す。信二にも転移弾があるとわかった以上、隠れるという行為自体、自身の逃げ場を失わせることになってしまう。つまり、ここからは対面の勝負。信二からすれば一方的な攻撃からようやく勝負の土俵に上がれたと言ったところだ。


「まさか1週間でここまでやるとは思いもしませんでした」


(さっきの転移弾で冷静さを取り戻させてしまったか)


「それならば、こちらも本気で行かせてもらいます。魔力解放、STORM BULLET!」


 それは初回、信二が受けることも避けることもできなかった銃弾の嵐。彼女が持つ文字通り必殺技。だが、この1週間の特訓で信二の感知能力とそれについていくための思考能力は飛躍的にアップしている。


(今ならわかる。すべての弾が俺を狙っているわけではない。逃げ場を封じるために放つ弾と俺自身を狙う弾がある)


 だが、それゆえに有効打になる弾は半分以下になる。それに対する策は用意してある。遊具が信二と銃弾の間に割って入るかのように強く引っ張られ、攻撃を防ぐ。今まで牽制としてばら撒いていた弾は全て遊具にヒットしていたのだ。

 信二が遊具の影に隠れながら、ブラックに向けて虎の子の転移弾を放つ。だが、終了のブザーは鳴らない。それどころか、信二の前にブラックが転移し、固く握られた銃身が信二に襲い掛かる。


「これで終わりです」


(ああ、そう来ると信じていた)


 視界が遮られた状態。相手は遠距離支援型で、その魔力量から弾はともかく転移して逃げることは出来ない。そして、ブラックの転移技術の高さ、初回に見せたステゴロ奇襲。となれば、ブラックの取る手段は自然と一つになる。

 その転移を読んでもう片方の手で握られていた小型のグレネードランチャーを盾に殴ってきた銃身を受け止める。それと同時に触れた拳銃とグレネードランチャーを接続し、固定化。ブラックから一丁だけとはいえ、武器を取り上げることに成功する。すかさず、追撃するも転移で逃げられる。


「これでSTORM BULLETは封じた。これであとは――」


「早撃ちですね」


 もはや小細工を弄するよりも、どちらが先に相手を狙えるかが勝負となる。だが、その条件は平等ではない。ブラックが転移したのは信二を頭上から狙える滑り台の上。距離こそあるものの、それは転移弾の前では意味をなさない。それに引き換え、信二は転移したブラックを探すというひと手間が必要になる。つまり、この状況下でもブラックの優位性は揺るがない。


「これで終わりです」


 信二の周りには遊具の破片が散らばっており、逃げ場が少ない。策士策に溺れるとはまさにこの状況だろう。今、まさに引き金を引こうとした瞬間、突如、滑り台が大きく傾き、ブラックが反射的に飛び降りる。そんな彼女を狙いすましたかのように1発の銃弾が彼女の弱点部位を貫き、試合終了のブザーが鳴るのであった。



「銃弾を転移できるのであれば距離は無視できる。ならば、狙撃手はできるだけ見晴らしの良い高所から狙い撃とうとするはず。わざと近くにあった滑り台を残していれば、そこに転移するのは探すまでもなくわかる」


 一手足りないのであればその一手を無くせばいい。初めから早打ち勝負は互角。いや、自身が常に優位をとっていると慢心している分、ブラックが半手遅れている。もし、慢心せず、互角だと思っていたのであれば、足場が崩れたとしても、その引き金を引いて勝負をつけることも可能であった。転移弾であれば体勢が崩れていようが、狙い撃つことは可能なのだから。ほんのわずかなその差が勝負の差となったのだ。


「つまり、私が転移して逃げるのを読んで滑り台を倒し、攻撃を遅らせるのと同時に狙撃を……」


「奇襲からの仕切り直しをするのは一番最初の戦いにわかっていました。ならば、足場を崩し、精神的な動揺を与える。これで勝てる見込みが出てくる。まあ、『勝てる』と確信できるまで1週間の時間がかかりましたが」


「それができるのがAランクの探索者で何人いるかわかりませんよ。負けたのは悔しいですが、これで深層攻略に挑んでも問題ない実力者になりました」


「ええ、こちらこそこの1週間お世話になりました。もし、関西に行くことがあれば店に立ち寄らせてもらいます」


「そのときは私を指名してください。それはそうとして――」


「?」


「メイクさせてもらってもよろしいでしょうか!」


「はひ?」


「初めてお会いした時に男の子の割には可愛らしいお顔だと思っていたので、ピンクからメイク道具を借りてきました」


「いや、待て。俺に女装趣味は無い」


【ダウトですね~】


(お前は黙れ)


「逃がしはしません。時間は十分にありますし、こんなこともあろうかと余力を残しておきました」


「ええい、無駄に転移するんじゃない!余力を残せるほど手加減されていたのか!?」


「御主人様よりバテるメイドはいませんよ」


 短距離転移で腕をガッチリとつかまれた信二。その手を振りほどこうにも相手は自身よりも格上。逃げることは出来ずに、おとなしくメイクを受けることにするのであった。

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