大いなる旅立ち。7
『将門様っ!!』
私は、大ムカデと共に落ちた将門様の元へと駆け寄った。
落ちた痛みで、苦悶の表情をする将門様。
私は無我夢中で、抱きかかえた。
『将門様っ! し、しっかり!!』
『だ、大丈夫だ。』
痛みで苦しいのにも関わらず、笑顔で私を見つめる。
『殿ぉーーっ!!』
将門様の家来が大勢駆け寄って来た。
『アヤメ殿っ! と、殿は!?』
『大丈夫です。 でもお辛そうですから、宿に医者を呼んで下さい!』
『し、承知したっ!!』
そうして、将門様は家来に担がれて宿へと戻った。
見送ってからどれだけ時間が経ったのだろう。
気がつくと、瀬戸の大橋には私と秀郷様しかいなくなっていた。
秀郷様が私に眼を向ける。
『な、何故矢尻を舐めたら、仕留められたのだ??』
『粘膜です。』
『ね、粘膜??』
『そう、私が秀郷様を助けた時、太刀は眼に刺さったのに、他は幾ら攻撃しても弾かれてしまった。
それは、ムカデの身体に巡らされた粘膜が弾いていたのです。』
『そ、其方……。
それを一瞬で見極めたのか??』
『い、いえ。
感じたのです。』
『其方には、神の御加護があるのやもな。』
『私に!? 大袈裟ですねぇ。』
『嫌、其方は何か大きな事をすべきなのかもな。』
『大きな……。』
『ああ、儂にも漠然としていて分からぬが、あの矢を射る時、其方の意識と言うのか? 何か強いものを感じた。』
『はあ……。』
『どうやら混乱させてしまった様だな。』
『私、将門様が心配なので、そろそろ……。』
『そうだな。
まあ、将門殿の事だ。 打ち所が悪かっただけで有ろうし、明日には元に戻っておるだろう。
儂も明日、改めて挨拶に伺う。』
『分かりました。』
私は一礼をして走り去ろうとした。
『其方、もう一度名を教えてはくれぬか?』
『もう、覚えて無いのですか!?
アヤメ、水無月アヤメと申します。』
『そうか……。
水無月アヤメと申すか。
……良い名だな。』
©︎2022 山咲 里




