大いなる旅立ち。8
次の日、秀郷様が宿にやって来た。
『おお! 秀郷殿っ!!』
将門様は床から起き上がり、笑顔で迎えた。
『お身体は大事ないか??』
『面目無い……。
何、これしきの事は何でも無い!』
『はは、それでこそ将門殿よ!』
『しかし、あの大ムカデを見事に退治なされるとは、流石ですな!』
『あ、い、いやなぁ……。』
秀郷様は私の顔をちらっと見つめた。
『どうされた??
胸を張るべき働きぞ??』
もじもじとする秀郷様。
その姿が、何だか可愛らしくて笑いそうになった。
『あの大ムカデを退治出来たのも、アヤメ殿のお陰なのじゃよ。』
『アヤメが??
何を戯れを!!』
『戯れでは無い!
アヤメ殿の助言が無ければ退治出来なんだ……。』
『まさか!』
冗談だと思って、笑う将門様。
『それに、アヤメ殿があの場に居なければ、儂の命は無かった。』
『ま、真ですか!?』
驚いた表情のまま、私に眼を向けた。
『いえ、私は助言したまで。』
将門様は、軽く溜息をついた。
『本当にお転婆な娘よのぉ……。』
『す、すみません!』
私が必死に頭を下げる中、二人は顔を合わせて笑顔になった。
『しかし、将門殿もとんだお転婆を連れて来たものですな!
お陰で命拾いしましたわ!』
『しかし、このお転婆には少々頭を悩ませておりまする。』
『わはは!!』
私は顔を真っ赤にして、下を向いてしまった。
『アヤメ、秀郷殿をお救いした事は誉めて使わす。
だがな、もう少しお淑やかにならんものか??』
『す、すみません……。』
『お前の事が心配なのだ。』
『お、お言葉ですが、私がいなければ秀郷様は死んでいました。』
また二人は顔を見合わせた。
『わははははっ!!』
『将門殿! 一本取られましたな!!』
『す、すみません!!』
『良い、それよりムカデもいなくなったのだから、これで京へ行く事が出来るな。』
『は、はい。』
『よし、これより京の都へと参ろうでは無いか!』
『ならば、儂も共を致そう!』
『おお! 秀郷殿が一緒なら心強い!
のう! アヤメ!!』
『秀郷様は、何かと事に巻き込まれそうなお人だから、一緒なら安心出来ます。』
『これ! アヤメっ!!』
確かにと言う様に、秀郷様は頭を掻いていた。