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第70話 アリシア、王都に向けて出発する

 わたしたち王都組は、ジェットスキーに乗り込んで王都に向けて出発。

 メンバーは、わたし、スレッドリー、エヴァちゃん。それとステファン。でもステファンは王都に着くまでは強制睡眠タイムということで、客車のソファに転がしてある。


 デオミンガル組はローラーシューズで……と思ったけれど、さすがに半日くらいはかかる長距離移動になっちゃいそうなので厳しそう。

 ということで、小さめのジェットスキーを『創作』してみたよ。

 小さめとはいっても、客車もちゃんとついているので、ラッシュさんとエイミーンさんを救出した暁には、後ろに乗ってもらってイチャイチャさせてあげたら良いじゃない、ってことで、ちょっとムーディーな内装にしてありまぁす♪ もちろん完全防音!

 ラダリィ、ナタヌ、そっちはよろしくね!


 ナノ様は……自由行動で!



* * *


 わたしとスレッドリーが並んで御者席に座っていたら、エヴァちゃんがわたしたちの間に無理やり割り込んできたので、御者席はギュウギュウ詰め状態。

 まあ一応座れるから良いけどね。でもスレッドリーのお尻が半分浮いてそう……。


「あ、エヴァちゃん! 厳重に注意しておくけれど、もう金輪際二度と再びわたしの姿に変身することを禁じます!」


≪え~≫


「えー、じゃない! まさかもう、エヴァちゃんがあんなにエッチなことをしているとは思いませんでしたよ! 保護者として恥ずかしい!」


 しかもわたしの顔で!


≪ナタヌさんも喜んでいましたし≫


「喜んでいたら何をしても良いわけじゃないでしょ!」


 しかもわたしの顔で!


≪しかたないのでこれからはドリーちゃんになり切ってエッチなサービスをします。主にアリシアが寝ている時に≫


「俺か……?」


 急に自分がターゲットになったと勘違いしたのか、スレッドリーが全身を震わせる。もしかしたら半分空気イス状態で足の筋肉に限界がきただけかも。


「俺さんは関係ないので大丈夫ですー。エヴァちゃんさ、ホントのホントにそういういたずらは怒るからね? 次にやったら問答無用で消滅させます」


 それだけは本気で怒ります。


≪アリシアは本物のドリーちゃんに夜這いを掛けられたい、そういうことですね。わかりました≫


「ぜんぜん違う」


 何もわかっていない。


「夜這いとはなんだ?」


 キョトン顔のスレッドリー。

 マジで聞いています? あー、この顔はホントに知らないんだ……。


「スレッドリーは知らなくて大丈夫。一生関わりがないから」


 そういう邪な話を知らない、清らかな王子様として生きていってください。


≪あとで教えます。実演付きで≫


「実演するな!」


≪アリシアの姿で実演できたら良かったのですが、禁止されてしまったのでドリーちゃんの姿で実演しますね≫


 それは……どうなのよ。

 スレッドリーとスレッドリーが……?

 なんかこう……死よりも重い罰?


≪ラダリィさんならとても喜んでくださると思うので、映像に残しておいてお金を巻き上げようと思います≫


「悪質……。そういうのやめてあげて。スレッドリーの心にも深い傷を残しそうだし、ラダリィのお財布にもダメージがあるし、誰も得しないからね?」


「つまり俺はどうしたら……?」


 スレッドリーはわたしたちの空中での会話がうまく把握できないようで、若干困惑した様子を見せていた。


「まあ、いつものエヴァちゃんの悪ふざけだから、何も気にしなくて良いよ。そんなことよりさ、この後の作戦をしっかり詰めようよ」


 ちょっと真面目モードでね。

 王都に入った後、どうやってスミナルド陛下にアプローチするかを考えないと。


「おう、そうだな。いきなり兄上に話をしに行くのは、あまり得策には思えないんだ。だからと言って、俺にはどうしたら良いかはまだ何も見えていない……」


 スレッドリーがうな垂れる。


 いや、上出来だと思う。

 ついさっきまで頭に血が上っていて、1人でもカチコミをかけようとしていた人とは思えないくらい冷静な分析で良いね。


「スタートは、うん、それで良いと思うよ。月並みだけど、まずは周辺の聞き込み調査からかなー」


「聞き込みか。どんな内容を調べるつもりなんだ?」


「じゃあ、わたしの案を聞いてくれる? 実はステファンを連れてきたのには意味があってね――」



 そこから王都に着くまでの間、一通りわたしの作戦案を話して聞かせてみた。

 どうかな?


「途中までは良いんじゃないか」


「途中まで? どこからがダメだった?」


 無理ない良いプランだと思ったんだけどなー。


「主に王宮に入ってからの流れだな」


「うん、じゃあスレッドリーの考えを聞かせて」


「俺は、兄上と1対1で、クローズドな場で話をすべきだと思っている。アリシアや大臣たちもいない、兄上と俺だけの席だ」


「わかる、けれど……。それだと一方的にスレッドリーが悪い感じに……もしかしたらあらぬ冤罪を掛けられる可能性もあって、その時に何かを証明できるような人がそばにいないと危ないかもしれないって思うよ」


 立場が上なのはスミナルド陛下のほうだからね。

 謁見の場で何か気に入らないことがあれば、権力を振りかざして揉み消すことだってできるわけで。それが王弟のスレッドリー相手でも、必要とあらばやる。それが国王の器だと思うんだよね。


「兄上だからそんなことは絶対にない。などとは俺も思わない。だが、それでも2人きりのほうが良いと思っている。誰かがそばにいるよりも兄上が本音を語りやすい場を設けたいんだ」


「なるほどね……」


「兄上が考えを改めなければ、国が亡ぶような危機が迫っているかもしれない。それを聞いた時に、兄上がどんな反応を示すのか、俺は知りたい」


 スミナルド陛下が真の王の器なのか。

 スレッドリーはそれを確かめようとしているんだ。


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