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第68話 アリシア、新法について考える2

「んー、長年貴族の私兵をやってきた人たちが急に解雇されたとしたら、新たな仕事なんて早々見つかるわけないよね。ずっと軍人一筋でやってきた人たちなんだし……」


 正規軍の採用枠が望めないとなると、1番の就職先は王立ギルドの各支部ってことになるだろうけれど、ギルドは加入のための審査もあるし、すべての失職した元軍人を雇い入れるほどの枠はないよね。たぶん優秀な数%が職を得るだけってことになるだろうなー。そうしてギルドに登録できたとしても、高ランクの人以外はそれだけで食っていけるほど仕事があるわけでもなし。


 となるとその後、何が起きるか。


≪失職した軍人たち、仕事のない冒険者たちは積極的に悪の道へと進むことが予測されます。パストルラン王国の治安は崩壊の一途を辿るでしょう。その裏では、闇の商人たちが暗躍しているわけですね≫


「エヴァちゃんさ、怖い言い方しないでよ……」


 闇の商人って……。


「ですが私は、エヴァさんの言っていることはあながち外れていないと思います。もともと新法が発令される前からそういったことはあったのです。大金に目がくらみ、落ち目の軍人が怪しげな組織に引き抜かれていくというのは珍しい話ではありません」


 と、ステファン。


「軍人のヘッドハンティングね。その行先の怪しげな組織って……」


「相場よりも高額な報酬を約束するのは、決まってダーティーな集団です」


「ダーティー……」


「傭兵であったり、暗殺であったり。汚れ仕事をさせるために、表の仕事では得られないような大金で釣ろうとするのです」


 ま、言っていることはわかる。

 お金に困っていない人なんてそうそういないし、お金はもらえればもらえるだけうれしいもんね。


「んんー、失職した軍人のほとんどが、そういう良くない集団に取り込まれていくとなると、仮に今回暗殺計画が失敗したとしても、次の計画がすぐに立ち上がるって感じがするね……」


 この問題を解決するために止めるべきなのはどこなのかって話になってくるよね……。

 まあねー、「法律が間違っている! だから国王暗殺だ!」って脊髄反射的に言っちゃうのはさすがにあれだと思うけれど、「法律が間違っている!」の部分はそうかもなーって思えてきちゃうよね……。いきなりスミナルド陛下が暗殺されたら困るから、それは止めないといけない……でも、やっぱりそれだけじゃ何も解決しないような気もするなー。


「兄上のお考えはどこにあるんだろうな」


 スレッドリーが独り言のように呟いた。


「それよねー。さすがにさー、『国が平和だから軍を解体しちゃおう』って、そんな安直な考えではないとは思うんだよね。ステファンたち軍人さんがいち早くこの新法の危険性に気づいていたように、どこの現場の軍人さんでも、ある程度その未来は予測がつくだろうし、それならスミナルド陛下の側近たちもそこに行きついて新法への懸念を示すに決まっているじゃない?」


 じゃあなぜそれらを掻い潜って、新法は発布されることになったのか。


「その理由を俺が直接問いただすしかないな」


 スミナルド陛下が王位継承後、早々に領地を与えられて半ば追い出されるような形で王都を後にしたスレッドリー。

 その直後に発布された新法。

 

 この2つに関連性はあるのかな? それはさすがに考え過ぎかな?


「問いただすってさー。下手すると、スレッドリー自身が国家反逆罪的な疑いで投獄される可能性もあるよ? 王弟とは言っても、公の場で陛下に直接苦言を呈したりできる立場にはないし……」


「しかし、このままではこの国が……国民たちが被害を被るのだろう。誰もやらないのなら、俺がやるしかない……」


 スレッドリーの覚悟、か。


 おそらくだけど、事が起こるまでに残された時間はかなり少なそう。

 もちろん暗殺計画の詳しい内容を知る必要はあるけれど、急がなければ≪シガーソケット≫に所属する、ラッシュさんとエイミーンさんが計画の矢面に立たされることになってしまう可能性すらあるよね。

 ≪シガーソケット≫が今回の計画の中心だとすると、このまま暗殺が成功しても失敗しても、非常に良くない立場に追い込まれることは間違いない。最悪、戦闘になって命を落とすことだって……。


「わかった。わたしはスレッドリーをバックアップするよ。みんなはどうする?」


 これは命令ではないから、それぞれがそれぞれの意思でどうするか決めよう。


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