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義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した  作者: 有


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第二部的なもの最後

「医学部の学生って聞いて、医者の不養生はよくないって怒られたみたいだよ」

「そっか……」

 夢の中では「賢者様お願いいたします」「お助けください賢者様」とばかり言われていた。

 不養生だと叱るような者はいなかった。

 そっか……。日本では、休めと叱ってくれる人がいるんだ……そうだよね。

 別に、和樹がいなかったら日本が滅んじゃうわけじゃないんだもん。

 私も……。

「和樹を叱らなくちゃ……」

 無理しちゃダメって叱って、それからよく頑張ったねって褒めて、ありがとうってお礼を言って……和樹をいっぱい……甘やかそう。

「いや、その前に私が結梨を叱るよ」

「え?ええ?」

「一人で無理して!香炉も持ってないのに何してんの」

「で、でも、香炉……豚の香炉があったから……」

 ゆきちゃんが私の目の前に、豚の陶器でできた蚊取り線香を入れる香炉を出した。

「これは、蚊遣り豚。香炉じゃなくて蚊遣り豚」

「蚊遣り豚?」

「そう。蚊を追い払うために燃やしたりいぶしたりする木や草が蚊遣り。その蚊遣りを燃やすための器が蚊遣り器で、豚の形をしたこれは蚊遣り豚」

「蚊遣り豚……そっか、香炉じゃなかったんだ……」

 ゆきちゃんが声を潜めた。

「それで、煙羅はどうなったの?」

「う、うん……」

 どうしよう。和樹の魔法のことは言わない方がいいんだよね……。

「なんか逃げていった?香炉が怖かったのかな?」

 ゆきちゃんが変な顔をした。

「蚊遣り豚でもいいとか、いい加減な妖怪……」

 あはは。本当は吸い込んだ後は蚊遣り豚ではだめだったんだけどね……。

 点滴が終わるまでゆきちゃんは付き合ってくれて帰って行った。

 看護婦さんに点滴を外され、お医者さんに体調を確認された後、病室を出ると、廊下に和樹がいた。

「和樹!」

 声をかけると、和樹の隣にいた人物がこちらを向いた。

「武田先輩!」

「久しぶり。今日は災難だったね」

「武田先輩こそ」

 と、会話をしようとしたら和樹が私の手を握った。

「武田さん、紹介します」

「いや、紹介って」

 武田先輩が笑っている。

「俺の彼女です」

「……は?……い?」

 武田先輩の目が点になっている。そりゃそうだ。武田先輩は和樹が私の弟だって知ってるしね。

「武田先輩が、女性からのアプローチを避けるために彼女がいると教えてくれたって。だから、偽装彼女なんです」

 声を潜めて武田先輩に教える。

「ああ、そういう。そっか。僕も強力してもらえばよかった~。その手があったか!」

 武田先輩が顔を抑えてから、それから私の顔を見た。

「そうだ、今からでも協力してくれない?」

「え?」

 武田先輩がスマホを取り出して私に向ける。

「彼女がいるって言ってるけど、疑う人もいて。写真を待ち受けに使わせてもらえないかな?」

「写真……ですか?それくらいなら構わないですよ」

 武田先輩がカメラを立ち上げてスマホをこちらに向けた。

「一緒にうつってる写真じゃなくていいですか?その辺の拾い画像だと思われないように、武田先輩も映っていた方がいいんじゃないですか?」

 というか、私単体の写真なら、別に全然知らない人の写真を待ち受けにしてもいいってことだよね?

「ああ、そうか。じゃあ」

 武田先輩が私の隣に並んでスマホを自撮りモードにしてこちらに向けた。

 なるべく仲がいい感じに上手に映れるかな?と武田先輩に寄ると、逆方向に和樹に引っ張られた。

 それから、和樹は武田先輩からスマホを奪うと、武田先輩にぎゅっと抱き着いて写真を撮影。

 あっという間に和樹は撮った写真を待ち受けにして武田先輩に返した。

「武田さん、会社でうるさく言われたらこれ見せたらいいよ。彼氏がいるからって」

 和樹がにやっと笑った。

 武田先輩の待ち受けは、和樹と武田先輩のツーショット。イケメン二人のツーショット。

「なるほど、この手があったか……くっくっく」

 武田先輩が笑い出した。

「行くよ、結梨。早く家で休みたい」

「あ、うん」

 そうだった!和樹は過労で倒れたばっかりだった。

「じゃあ武田先輩、失礼します」

 武田先輩が手を振ってくれた。

「他の男に愛想振りまくなよ」

「あはは。嫉妬深い彼氏みたいな言葉だね。和樹の偽装彼氏の設定は嫉妬深いキャラ?」

 和樹が立ち止まった。

「重たくて、めんどくさくて、束縛強めで、捨てられたら死ぬくらい愛が深い、ヤンデレ」

 ふっと思わず笑いが漏れた。

「何それ。自分でヤンデレっていうヤンデレなんて新しすぎない?ふふ」

「ヤンデレは嫌い?」

「どんなキャラだって、和樹は和樹でしょ?」

 私たちの横を、小さな子供が泣きながら親を追いかけていた。

「ちゅかれた、抱っこ、抱っこぉー!」

 そういえば、和樹もあんなことがあったなぁ。なんて思いながら眺めてたら、和樹が私の心を読んだのか両手を広げた。

「疲れた。抱っこ……して」

 うちの弟、かわいすぎない?


ご覧いただきありがとうございます。

第一部を書いたのが2018年ですと?!と驚きながら書き足した第二部。

この先の話も、構想はあるので、そのうち書くかもしれません。

いつだろう……。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。★評価、感想などお待ちしております。


ありがとうございました。

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