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義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した  作者: 有


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33/42

俺の彼女

 まだ信号が赤なのに、男の人は横断歩道に足を踏み出した。

 上半身は置いてきぼりで足だけ前に出ている。

 まさか、燃えているのに気が付いて、パニックになったの?

「轢かれる!戻ってっ!」

 道の向こう側にいた人たちも何が起きたのか分からず動けないようだ。

 男の人は、まるで足だけ別物のようにそのまま道に飛び出し、猛スピードで来る車を見ても避けるような動きをしない。

「【……………………】」

 和樹が何かをつぶやくと、光が男の人に向かって飛んで行った。いや、光じゃない。突風だ。

 突風が男の人の体を後ろに追いやった。歩道近くの道に男の人がしりもちをついてから転がる。

 間一髪、ブレーキを踏んだ車が、男の人がさっきまでいた場所の前に停車した。

 あのままだったら轢かれていた。間違いなく。

「か、和樹……」

 恐怖で手が震えている。和樹を見ると、手の平には魔石が。そして、魔石の周りに小さな魔法陣が浮かんで、消えて行った。

「和樹が助けてくれたんだ」

 びっくりしすぎて足ががくがくと震える。

「行こう、信号が変わった」

 和樹が私の手を握る。

 震えが収まった。

「あ、うん」

 男の人の周りに何人か集まり、大丈夫ですかと話しかけているのを横目に、駅に向かう。

 足から出ていた煙は消えていた。

「よかった。火も消えてる。もしかして、あれも和樹が?」

「なんで……どうしてだよ……。もう嫌だ。嫌だよ、結梨……前世みたいに結梨を失うのは……」

 和樹が泣きそうな顔をしている。

 前世?どうしたのだろう。

 もしかして、前世で誰か交通事故で亡くしているとか?今のでそれを思い出してしまった?

「大丈夫だよ」

 そういえば、和樹は全く覚えてはいないとはいえ実の父も事故で亡くしてたんだっけ?

「なんで、見えるように……聖女なんて……くそくらえだっ」

 聖女がくそ?

 うーん。前世の和樹の事情はよくわからないけれど、悪役令嬢系に出てくるろくでもない聖女みたいな人がいたのかな?

 とにかく何らかの前世でのトラウマが今の人が轢かれそうになったのを見てフラッシュバクしてるってことだよね。

「和樹」

 つないだ手を強く握り、もう片方の手で腕を軽くポンポンと叩く。

「和樹、大丈夫だよ。大丈夫。ここは日本だから。ドラゴンも怖いモンスターも何も出ないよ」

「はは、ドラゴンも怖いモンスターも、俺が退治してやるから問題ないよ」

「……うん。賢者だったんだよね。ここでは和樹は大学生だよ。成人前の子供なんだから。私が守ってあげる」

 改札を通り、少し待ちそれなりに込んでいる電車に乗り込む。駅4つ分。

「守らなくていいよ。あと数か月で俺も大人だ」

「確かに!そうだ、18歳で成人だもん。もうすぐ和樹も成人するんだった!え?大人?大人になるの?」

 和樹が満足そうに笑った。

「そう、俺も、大人」

 よかった。ちょっと気持ちが上に向いたかな。

「あ、でも、絶対和樹を私が守ってあげるからね?大事な弟だから。大人になったって、お姉ちゃんぶひっ」

 鼻をつままれた。

 それから頭を近づけて耳元で和樹が囁く。

「結梨は、俺の彼女でしょ?」

 あ。

 そうそう、玄関を出た時から今日は偽装彼女でした。

 まずいまずい。うっかり本当に、和樹に迷惑になるような子の前で本当は姉なんですってばれたらまずいよぉ。



くぅー、甘酸っぱいなぁ。


ご覧いただきありがとうございます。

感想いただけると嬉しいです。

レビューや★評価もお待ちしております。


(*´ω`*)

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