異世界人の待遇
「長かった。ここからやっと俺のターンだというのに、これ以上邪魔をするなら、お前の住む世界など滅びる前に俺が滅ぼしてやるっ!」
「ちょっ、和樹!それ、悪役、悪役になってる!」
和樹がこちらを見る。
「うん、しゃぁない。結梨を守るためなら」
「そ、そりゃ、家族のためなら私だって悪に手を染め……って、さっきから結梨って呼び捨て生意気っ!大学生になるからってお姉ちゃんはいつだってお姉ちゃんなんだよっ!あ、お姉ちゃんって呼び方が恥ずかしいなら、姉貴とか?」
和樹が私の頭にぽんっと手を置いた。
はい。ごめん。今はそれどころじゃないですね。
「まぁ、とにかくお前たち邪魔。出てってくれない?」
「は、は、は、はいっ!あの、白の大賢者様の大切な人とは思わず、申し訳ないことをいたしました」
「どうか、我が世界を滅ぼすのだけは、お許しくださいっ!」
二人がドアへと向かう。
あ、本当に素直に立ち去るんだ。いや、でも、異世界なんだよ?
「あ、待ってください!大した額じゃありませんが、その……食事だけならこれで1週間くらいは何とかなると思います」
財布から一万円取り出して、禿頭の手に渡す。
買い物の仕方とかそのほかの常識とか……。
まぁ、一応賢者ってことは賢い人なんだろうから、人に尋ねるなり見て覚えるなり何とかなるよね?言葉は通じるんだし。
それに、日本だったら、モンスターに襲われて死ぬこともないし、わけのわからないことを言ってもちょっとおかしい人くらいで処理されそうだ。
死ぬようなことにはよっぽどのことがない限り合わないと思う。
「あー、だから、結梨は……ったく」
和樹が白髪を呼び止める。
「おい、お前ら魔石持ってるだろ?」
魔石?
「は、は、はいっ!」
二人が慌てて服のポケットやら、小さな袋やら、服についている石やらをゴロゴロと和樹に差し出した。
「ふーん、さすがに超賢者だと自慢するだけのことはあって、結構いいの持ってるじゃん。あ、こっちのはもう魔素は空っぽだな」
いくつかの石をゴミ箱に入れる和樹。
「こら、和樹!燃えないゴミはゴミ箱に入れないの!」
慌ててゴミ箱から石を取り出す。
和樹が、机の引き出しを開け、その中にある小箱を開けると、お金を取り出して禿頭に渡した。
「魔石を買い取るということで、このお金はやる。10万ある。こっちの世界で普通ランクの宿に10日、安宿なら1か月ほど泊まれる金額だ。二人だからまぁ2週間も持たないかもしれないが。そもそも宿に泊まらなくても日本じゃ生きていけるからな」
男が頭を下げた。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
じゅ、じゅ、じゅ、10万って!
「和樹、そんな大金!」
「まぁ、今の俺にとっては確かに大金だ。でもこの魔石、買おうと思ったら30万はするぞ?そもそもこっちの世界では手に入らないからもっと価値がある」
えーっと、魔石ですか……。
本物なのかな?
なんか、おみやげ物屋さんでよく見かける色のカラフルな石にしか見えないんだけどなぁ。
騙されてない?
っていうか……。
「なんだかんだ言っても、和樹もこの人たちをお金もなしで放り出すのは心配なんだね。優しいね」
10万なんて大金渡すくらいだもん。
お年玉とかためてたのかなぁ。
和樹、ゲームが欲しいとかそういうのあんまりなかったから使ってなかったもんねぇ。
「あ、いいこと思いついた」
和樹がぽんっと手を打つ。
和樹が、ノートを一枚破り、そこに何か書き始めた。
日本語じゃない。
そして、言葉の下に魔法陣を書き込んでいる。
「このバカげた召喚を提案したの誰?」
白髪がびくんっと肩をゆする。
「ドライン王国の……サバス三世陛下でございます……」
消え入るような小さな声で答える。
「ふーん。サバス三世ね?俺の時代はサバス二世だったけど、その子供?それとももうちょっと時代経過してんのかな?まぁーなんだっていっか」
和樹が書き上げた紙を折りたたんで小さくする。
もう一枚ノートを破って魔法陣を書き、その中央に折りたたんだ紙をと小さな魔石を一つ置く。




