本当だったの
私が、聖女?
いやいやいや、ないないない。
二十歳過ぎて聖女とかないわ。ない。
だいたい、そこは10代の子でしょ。いや、最近の流行はアラサーとかもあるか。一番中途半端だから、20代前半とか!
「はっ、世界を救ってほしいとかそういうくっだらない理由じゃないよな?」
「くだらないとはなんだ!立派な理由ではないかっ!」
和樹がふんっと鼻を鳴らす。
「くだらない。なんで、わざわざ別の世界の人間を巻き込む?自分たちで何とかできない世界なら、滅んでしまうのが世の理だろう!」
そうですね。誘拐と変わりません。
ブラック企業が問題になってるけれど、それ以上にひどい行いですよね。
拉致誘拐からの強制労働。下手したら衣食住は保証されていても軟禁状態。無給に無休。
世界を救ったそのあとはポイされることもある。……あ、全部小説の話だけど。もしかしたら、もっと恵まれた待遇が待っているのかもしれないけど……。でも……。
きっと、家に帰すつもりはなかったんだろうな。
自分たちが異世界に逆召喚されたことに「そんなバカな」と言っていたくらいだ。
あ、反転って、そういうことか!
「ひどい、それでもお前は人か!」
「ひどいのはどっちだ。無関係な者を自分の勝手な理屈で巻き込むな」
「生意気な!誰に向かってそんな口をきいている!私は超賢者ロックであるぞ」
禿頭が唾を飛ばしながら主張した。
「超賢者って、偉いの?」
思わず首をかしげる。
「知らねぇ。俺の時代には大賢者までしかなかった」
「は?俺の時代?何を言っている?超賢者を知らないとは愚か者め」
和樹がはぁーっとため息を一つついた。
「愚かなのはそっち。ここさぁ、お前らの世界じゃないんだけど?そんなに立派っていうんなら、もう出てってくんない?自分の世界に帰るなり、こっちの世界で生きてくなり好きにすれば?」
「なんだと?勝手にこの世界に連れてきて、追い出すつもりか!」
白髪が怒った。
ああ、もう、あきれていいでしょうか。
「勝手に結梨を連れてこうとしたくせに、それに失敗してここにいるんだから、完全に自業自得だろ?なぁ?」
和樹が私に同意を求める。
「まぁ、うん、それはそうなんだけど……さすがに、お金も渡さず知らない世界に放り出すのって、なんだかこちらが悪者みたいじゃない?」
和樹がはーっとため息をついた。
「かといって、なんで被害者の俺たちがこいつらに金を渡さないといけない?」
「えっと、ちょっとびっくりしたけど、被害者ってほど何も被害はないし……えーっと、本物の魔法を見せてくれたお礼?と、か?」
和樹がうーんと頭を抱える。
「ったく、結梨は……変わらねぇ。全然、昔から変わらねぇ。前世の記憶なんてなくたって、ずっと結梨は結梨のままだなっ!」
はい?
前世の記憶?
はっ!そういえば……。
「和樹、あんた、前世の記憶があるって……前世は白の大賢者だっていうのって、本当の話だったの?」
魔法陣を書き換えてたあれ……!
「し、し、し、白の大賢者だと?!」
「ま、ま、ま、まさか、まさか……」
え?
「和樹って有名人だったの?」
白髪が腰を抜かした。
「まさか、伝説の、歴史上もっとも偉大な賢者様……」
「強大な力と圧倒的な知識、一人で世界を3度もお救いなくった……欲しいものは白い人以外はすべて手に入れたというあの……」
ん?白い人?
「まさか、聖女様は……」
何か、男と和樹は話が通じているようだ。
おかしい。
なんで、ずっと一緒にいた私よりも、この突然現れた男のほうが和樹のこと知ってるの?
ちょっと悔しくなってぷぅっとむくれる。
「やっと、同じ土俵に乗ったんだ。大学生と大学生っていう同じ土俵に!」
腰を抜かした白髪が大学生という言葉に首を傾げた。




