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義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した  作者: 有


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獣人

「どうせ、俺は子供だよっ!まだコーヒーに砂糖いれなきゃ飲めない子供だよっ!」

 あ……。

 そのまま体に重みを感じる。

 和樹の頭が私の肩の上に乗った。

 そうだ、高校生って、大人ぶりたい年ごろだ。

 カフェオレをコーヒーと呼ぶ和樹を私は傷つけるようなことを言った。

「ごめ……」

「……あやまるなよ……」

 耳元に響く和樹の声。

 どうしようもなく和樹のことがかわいくて、ぎゅっとして頭をなでたくなった。

 だけど、頭をなでてしまったら、また子ども扱いしたと余計に怒らせてしまいそうで動けなかった。

「姉ちゃん、俺のこと好き?」

 ん?

「もっ、もちろんだよ!和樹のこと大好きだよっ!」

 突然何?

 かわいいこと言い出した!

 やばい、小学校低学年までの「お姉ちゃんお姉ちゃん」って言ってた和樹を思い出した。

 なんか、迷子の子が私の手を握ったら「僕のお姉ちゃんだぞっ!」って迷子をにらみつけて私の手を取った和樹を思い出した。

 あ、それは幼稚園の時の話だっけ?

 やっばい。

 頭をなでるの我慢したけど、無理!

 わしゃわしゃわしゃっ!

「ちょっと、姉ちゃんっ!何すんだよっ!」

 わしゃわしゃわしゃわしゃ!

 頭を思い切りなでまわしたら、バッと上体をそらして逃げた。

 わしゃわしゃわしゃわしゃ。

 逃げた和樹の頭に両手を伸ばしてなでくりまわす。

「かわいい、和樹はかわいい」

 和樹が嫌がって立ち上がる。

「ちょっと姉ちゃん、俺、ペット扱いしてねぇ?今のなで方、完全にモフモフだろ?残念ながら、俺、前世でも人だったから。獣人じゃないからっ!」

「!ここで、新たな設定出てきた!獣人もいたの?いたの?」

「いた。いたけど、残念ながら姉ちゃんの読むような小説に出てくる耳としっぽがついててほぼ人みたいな感じじゃないぞ。まんま犬とか馬だから」

「うっ、馬?馬の獣人って何?」

「大体、サイズも犬サイズ、馬サイズ。それが二息歩行してしゃべるのが獣人」

「二息歩行する馬……しゃべる犬……」

 しゃべる犬ぅーっ!

 すごい、めちゃみたい。一緒に住みたい。

 魔法少女系アニメのマスコットみたいな感じなのかな。

「姉ちゃんさ、かわいいの期待してるかもしれないけど、犬って言ってもほぼ狼だから。チワワみたいなかわいいレベルじゃないよ」

 狼!シベリアンハスキーみたいな犬かしら?

「あとさ、グレートデーンって、ギネスに登録されてる犬知ってる?そんなんがゴロゴロ立って歩いてるんだよ。2m超える巨体で牙をむきだして見下ろされるの」

 え?グレートデーン?2m?

 うーん、分からないな。後で調べてみよう。

 でも、よかった。

「えへへ」

「なんだよ、突然笑いだして。巨大犬の獣人をモフモフしようなんて無謀なこと考えるなよ?」

「なんか、まだ和樹と異世界の話ができるんだと思ってうれしくなったんだよ。もうそろそろ和樹も中二病卒業しちゃうんじゃないかなぁって思ってたから」

 和樹が顔をゆがめる。

「中二病?俺が?」

 あっ。

 中二病真っただ中の時は「俺の中二病が火を噴くぜ!」って思ってるわけないよね。

 言われたらいやかもしれない。

「あ、いや、違うよ、えっと、うーんと、私はなんか、物心ついたころから異世界への興味というかあこがれというか懐かしさというか、なんかすごく好きで……たぶん、20代になっても、30代になっても死ぬまで異世界のこと考えてるだろうなぁって思っていて」

 そうなんだ。

 異世界転生の小説を読む前よりもずっと、クローゼットの扉を開けたら異世界だとか、チョコレート工場に行くと不思議な世界が広がっているとか、電車のホームで魔法の世界に行けるとか、そういう話が大好きだった。



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