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義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した  作者: 有


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話はそれからだ

「それに、静電気をためた塩ビパイプやストローを水道の水に近づける実験を見たことがないかい?水道の水が真下じゃなくて静電気に影響されて曲がるんだ」

「あ、見たことあります!」

 武田先輩が楽しそうに言葉を続ける。

「つまり、静電気で水を動かすこともできるってことだ」

「水魔法ですね!」

 す、すごい!すごい!

 静電気で水魔法!

「そう!もし、体に多くの静電気をためることができ、その静電気を自由に操れることができたら、水魔法、火魔法、雷魔法が使えるってことだ!」

 興奮気味にテーブルの上に手を出して指を上げる。

「先輩!雷は光るから、光魔法も使えるんじゃないですか?」

 私も武田先輩もめっちゃ前のめり。

「結梨くん、いい着眼だ!そうだ!」

 武田先輩の手が私の手をがしっとつかんだ。

「あっ、ご、ごめんっ」

 先輩が慌てて手を放す。焦っているようだ。

 もしかして、強く手を握り締めたことに焦っているのだろうか。

「大丈夫ですよ、痛くなかったですから」

 手をプラプラと振って見せる。

「あー、うん、いや……」

 武田先輩が頭の後ろをかいた。

「異世界転生物……特に生まれた時からの記憶持ちだと、きまって魔法を使う練習しますよね。体の中にある魔力を感じるとか、その魔力を体中に巡らせるとか、指先に集めるとかそういうの」

 そんなことよりも、この静電気の話が楽しすぎて続きを話したい。

「そうなんだ。もし、体の中の静電気を感じることができ、それを意識して指先に集めることができるようになったら……」

 ふあー。魔法が使えるんだ!

 静電気だから大きな魔法は無理かもしれないけど、指先から火花を出して火をつけるくらいはできそうだ。

 点火とか異世界物の基本だもんねぇ。

 武田先輩と二人でその後も静電気の可能性についてあれこれ話していた。

「あ、終業のチャイム……!」

 休み時間は10分。次の講義は出席必須だった。

「楽しかったよ、次はいつ学校に来られるかわからないけれど、またね」

 武田先輩が残念そうな表情を見せる。

「はい!先輩!ありがとうございました!家に帰ったらさっそく和樹に話ます!」

 一方私は興奮冷めやらぬ顔をしているはずだ。

 だって、楽しみなんだもんっ!

 楽しみ!

 和樹はなんていうだろうか。

 ここのところ受験であまり異世界の話をしていなかった。

 そして4月に入ってからは、和樹も私も忙しくて顔を合わす回数が減った。

 そういえば、もうすぐGWだ。

 和樹が、自分は異世界で大賢者だった時の記憶がある転生者だと言ってから、丸2年か……。

 ……そういえば、和樹はもう異世界転生系の本を私から借りて読まなくなった。

 もしかして、もう、中二病終わっちゃったのかな。

 私と異世界の話なんてしてくれないかな……。


「和樹!今いい?」

 風呂上りに、和樹の部屋のドアをノックして開く。

 和樹は机に向かって勉強しているところだった。

「あ、ごめん、勉強中かぁ」

 椅子をぐるりと回して和樹が振り返る。

「ね、姉ちゃんっ!なんて格好してるんだ!」

 なんて格好?

 はて?

 パジャマのズボンに、上は暑いからキャミソール。頭にタオルって格好だけど?

「まず、髪の毛さっさと乾かして、それからちゃんとパジャマ着ろ!話はそれからだ!」

「はい。勉強の邪魔してごめんね」

 とは言ってみたものの、ふと気になり、和樹の机の上をのぞき込む。

「分からないところがあったら、教えてあげるよ」

 和樹がノートを開いてこちらに見せる。


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