現実味を帯びる魔法
「相良由紀です。爬虫類同好会に入っています」
「うん、見て分かった」
武田先輩がゆきちゃんの首に巻きつく蛇を指さした。
「ですよねー」
ゆきちゃんがははっと笑って首をかしげる。
「この蛇、吉村の飼ってるバジだろう?」
武田先輩が蛇を指さす。
「え?知ってるんですか?そうです!バジ君です!」
「バジリスクから名前を取ったんだよ」
バジリスク!しっぽが蛇だっていう伝説のモンスターの名前だ!
「バジリスクって言われると、途端に蛇もファンタジーっぽくなってじっくり見たくなりますね」
蛇のどこがいいのぉってゆきちゃんには何度も言ったけれど。
バジリスクなら話は別!
「だろ?実際、モンスターがいたらどんな風なんだろうって。バジリスクの尾も、この蛇のような動きをするんだろうか?とか。考えて見ると楽しいよね」
武田先輩の言葉にうなづく。
「ふふ。武田先輩、結梨ちゃんも!いつでも爬虫類同好会の部室に遊びに来てくださいね!」
ゆきちゃんが嬉しそうに笑って去っていった。
「逃げ込むにはいいかもしれないね」
と、武田先輩が小さな声でつぶやいた。
ああ、3年のあの先輩から……ってことで、あってるかな。
食堂の隅。
「はいどうぞ」
「え?あ、払います!」
「いいよ。場所を変えることになったのは僕のせいだからね」
カップで出てくる自動販売機。先輩がオレンジジュースを買ってくれた。
「ありがとうございます。えーっと、じゃぁ、就職内定もらったら教えてくださいね。お祝いに何かおごります」
人に何かをおごってもらうことに慣れていないから、つい素直に受け取ることができずにそう返してしまった。
「あはは。うん、そうだね。結梨さんにおごってもらえるように就職活動頑張るよ」
先輩が正面の席に腰を下ろした。
「で、さっきの静電気の話なんだけどね」
先輩はコーヒーを買っていた。
うん、覚えた。先輩はコーヒー、砂糖抜きミルクありですね。今度おごるときまで忘れないようにしよう。
「静電気って、人にたまるだろ?魔素も体にためることを前提とするわけだけど」
うんうんと、うなづく。
「静電気で、火花が散るだろう?つまり電気が出る。ってことは、電気系の魔法と似てると思わないか?」
えーっと、電気ウナギとかそういうのが思い浮かんだけれど……。電気ウナギの電気って、気絶するくらい強いと聞いたことがある。
生き物が発する電気が攻撃魔法として使えるってことだ。
この地球でも!
おお!夢が広がるね!
「それから、雷やコンセントの火花で火事になることもあるんだから、火魔法の元になることも考えられる」
「なるほど!」
そうか!そうなんだね!
電気から火魔法か!その発想はなかった!和樹はどうだろう?
武田先輩は次々に思いついたこと口にしていく。よほど楽しいらしい。
「人はメタンガスを発生させることもできるだろう?って、ごめん、ちょっと汚い話になるけれど……あー、うん。野郎どもと一緒のノリで話して悪い」
武田先輩が頭をかいた。
「かまいませんよ。あれですよね。お腹の中で発生するってやつ。よく火が付くかみたいな動画を動画サイトにアップしてる人とかいますもんね……。好きですよね、男子ってそういうの」
くすくすと笑う。
前世の記憶が戻る前の和樹だってそうだ。
お尻にライター近づけるっていうあほなことしようとして父親にこっぴどく叱られていた。
あ、前世の記憶が本当にあるかどうかは怪しいけどね。まぁ、単純に大人になったのか、それとも興味が異世界にうつっただけなのか。
さすがに今は高校生だからもうやらないかな。
「先輩知ってます?そのメタンガスって、便秘の人って口からも出るんですって」
そういえば、それを知った和樹が「母さん便秘だろ!」とライターを母さんの口に近づけてこっぴどく叱られてたんだった。
「へー、それは初耳だ。だけど、そうするとメタンガスを意識して体から放出させることができれば、静電気と合わせて火を出すことができるってわけだね」
なるほど!
メタンガスと静電気で火魔法!
なんかますます現実的になってきた!




