第八話 ギルドカードとステータス
血魂契約を終えて、ギルドカードを見てみると、何やら幾つかの項目があるようだった。
俺がギルドカードに少し目を向けていると、エルフさんが話しかけてきた。
「では、次にギルドカードの説明をさせて頂きたいと思いますが、お聞きになられますか?」
エルフさんが聞いてきた。俺は、ギルドカードのことなんて全然知らないので素直に聞こうと思う。
「はい、お願いします。」
「かしこまりました。では、まずギルドカードの持つ特徴から説明させて頂きますね。」
「はい。」
「先ほどまでギルドカードの作成を行っていただきましたが、ギルドカードを作るにあたり必要になるものは何かわかりますか。」
どうやら、質問形式で説明してくれるようだ。子供にはそうしたほうが覚えやすいと思ってのことだろうか。まあ、ただ聞いているだけじゃ覚えられないだろうしな。
「ええっと、魔力と血液と血魂契約、ですよね。」
「正解です。正確には、自身の魔力、血液、そして血魂契約です。
ギルドカード作成にあたり、ご本人の魔力を媒介にカードを作り、血液と混ぜ合わせることにより擬似生命状態にします。それによって血魂契約が可能となり、自身のステータスを映し出すギルドカードの完成となります。」
「なるほど。それでは、もうギルドカードには私のステータスが書かれているということでいいんですよね。」
先ほど、ギルドカードをちらっと見た限りでは、何やら色々と項目があったような気がする。
「はい、そのはずです。ですが、今後ギルドカードを見る上で注意しなければならないことがあります。」
「注意すること、ですか?」
「はい。ギルドカードには、お客様の現在のステータスが書かれるようになっているのですが、それらの情報は自身の血液を元に抜き出されていますので、定期的に更新しなければなりません。」
それを聞いて俺は少し考える。
「なるほど、ということは、今後私がその更新をしなければ今さっきの状態のステータスしか書かれないってことですよね? その更新はギルドで行っているのでしょうか。」
エルフさんは、少し驚いたような顔をしたがすぐに笑顔に戻った。営業スマイル恐るべし。
「い、いえ、更新自体は簡単で今、お手にされているギルドカードに自身の血液を与えることで更新できますので、ギルドに足を御運び頂かなくてもすぐに調べることができます。ですから、一つの街に滞在し続けない方には、カードは必需品になっていますね。」
「与える血液の量はどれほどなんでしょうか。」
「1、2滴ほどで大丈夫です。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「はい。では、次にカードの特徴についてご説明させて頂きますね。」
「はい、お願いします。」
そう言うと、エルフさんは『冒険者ギルドの手引き』を取り出して、ギルドカードについてのページを開き、こちらに見せてきた。
「まず、こちらに書かれているものがギルドカードに書かれているもののサンプルです。」
それには、以下のような表記があった。
ギルドカード 表記例
名前:
種族:
年齢:
レベル:
貯金:
ランク
Cas:
Com:
Ins:
HP:
MP:
STR:
VIT:
AGI:
INT:
MND:
DEX:
スキル
パッシブ系
アクティブ系
なるほど、これがステータスというやつか。確かに俺のやつにも似たようなことが書いてあったな。
「これが、ステータスですか。」
「はい。こちらがステータスの見本です。これらの項目は人によって数値やスキルが変わります。」
「この、項目の意味を知らないんですが。」
なんかいろいろ書いてあるがよくわからないから聞いてみることにする。
「はい、上から順にご説明させて頂きますね。」
そう言ってエルフさんは項目について一つ一つ丁寧に教えてくれた。
♦♦♦
項目の説明を受けること十数分ほど。
聞いたことを自分なりにまとめてみると、
名前、種族、年齢はそのままだからいいとして、
『レベル』とは、主に戦闘経験を積むことによって上がっていくもので、今のところレベルの上限は確認されていないそうだ。レベルは別に魔物などだけではなく、対人での訓練や人に教わったり一人で魔法を使いまくったりしても一応上がることには上がるそうだ。
だがやはり、対人戦や魔物との戦闘の方が上がりが早いとの報告があるそうだ。
『貯金』については、なんでも現代のギルドでは『銀行』というシステムがあるそうで、これは冒険者ギルド、商業者ギルド、研究者ギルドすべてで使えるシステムで、なんでもお金を預けたり、引き出したりすることができるらしい。
つまり冒険者登録をしていてお金を預けていれば、商業ギルドでもお金を引き出すことができるらしい。まあ大概の人は登録しているギルドでしかしないらしいが。
しかし、これらのシステムはそのギルドに加盟していなければ使用できないそうで、俺みたいに現状どのギルドにも加盟しておらずギルドカードのみを持っているだけのものはお金を預けることはできないそうだ。
次に『ランク』だが、その下に書いてあるものは、それぞれ意味があり、
『Cas = 冒険者ランク』
『Com = 商業者ランク』
『Ins = 研究者ランク』を表しているそうだ。
そしてそこから下は
『HP = 体力』
『MP = 魔力』
『STR = 物理攻撃力』
『VIT = 物理防御力』
『AGI = 敏捷性』
『INT = 魔法攻撃力』
『MND = 魔法防御力』
『DEX = 器用度』
を表しているらしい。
最後に『スキル』についてだが、スキルとは自分の持っている技能のレベルを表すもので、魔法や格闘スキル、家事スキルなど、本人のあらゆるスキルがそのレベルとともに表記されるそうだ。これも俺の時代にはなかった。
『パッシブスキル』は意識をしなくても常時使えるスキルのことで、例外として封印魔法などを使用された場合変化することがあるそうだ。
『アクティブスキル』の方は、主に魔法など魔力を用い、意図的に使用するスキルのことらしい。
と、こんな具合で教えてもらったが、これらのことを聞くとステータスとは確かにとても便利なもののようだ。
ギルドカード恐るべし。前世でも欲しかった!まあ、今はもう過ぎたことだから良いけどさ。
俺がギルドカードに関心を覚えていると、エルフさんが微笑ましそうな顔をして話しかけてきた。
「これが、ギルドカードの項目の説明になります。お役に立ちましたか?」
「あ、はい。とっても勉強になりました、ありがとうございます。」
「はい、どういたしまして。これでギルドカードの作成は終了です。今回は、ギルドカードの作成のみということで、冒険者登録はなさらなくてもよろしいんですよね。」
「ああ、この子もまだ、冒険者という歳ではないしな。今日はそれだけでかまわんよ。」
エルフさんが顔の向きを変えて院長と話をしだした。
俺はせっかく説明をしてもらったことだし、この間にもう一度自分のステータスをしっかり見ておこうと思う。
名前:リーク
種族:人間
年齢:5歳
レベル:3
貯金:ーー
ランク
Cas:ーー
Com:ーー
Ins:ーー
HP:18/18
MP:97/97(封印状態)
STR:10
VIT:14
AGI:17
INT:87(封印状態)
MND:54(封印状態)
DEX:17
スキル
パッシブ系
・回復スキル
『体力回復』Lv1
『魔力回復』Lv8(封印状態)
・戦闘スキル
『魔法戦技』Lv5(封印状態)
『戦技』Lv7
『剣術』Lv3
『杖術』Lv6
・生活スキル
『家事』Lv27
・特質スキル
『人越者』
『神域者』
アクティブ系
・属性
『全属性』
・非属性
『飛行魔法』:Lv6(封印状態)
『転移魔法』:Lv3(封印状態)
・特質性
『神格化』:低位
『魔闘気』Lv7(封印状態)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おやおやぁ?なんかよくわからんが、突っ込みたいところが幾つかあるな。
まず、名前はやはりというか前世と同じなんだな。これは感覚的にはありがたいな。違う名前だと呼ばれて返事しにくいしな。この5年間は辛かった。
レベルが3なのは今までの5年間で上がったってことだろうな。レベルは普通に生きてるだけでも成長とともにある程度は上がるらしいし。
このステータスが高いのか低いのかはわからないが、一番気になるのはやっぱ(封印状態)だよな。これは、誰かが俺を封印しているって解釈で良いのか?体力が低いのはやっぱり肉体が前世と違うからだよな。
確かに、それなら魔力や魔法に関するものが値が大きいのは納得だな。魔力はそれぞれの器によって個体差が激しいし、魔力も体の成長とともに器の許容量が増えるがそれ自体もやっぱり個体差があるから、持って生まれた才能ってところが大きい。
いや、正確には大きかったっていう方が正しいのか。この時代ではレベルを上げれば、魔力も上がるそうだしな。
神のやつらがステータスを作った理由はわからないが、少なくとも前世よりは強者が多いし、増えていくってわけだ。
あと、妙に『家事スキル』が高いな。これは前世では野宿ばっかりだったからそれが反映してるのかな。
知識だけでもスキルにカウントされるのか、今の自分にできる点だけがカウントされるのか、どっちなんだろうな。まあ、その辺も生きていけばわかっていくだろう。
ただ、やっぱり問題は『神格化』ってやつだろうな。俺はこのスキルのことを知らないが、神に関するスキルみたいだし、あの神との戦いで手に入れたってことだろう。
聞いてみればわかるのかもしれないが、いかんせん今は情報が足りない。もしもこれがやばいスキルだったら目立ってしまうことになるだろう。
今世では、自由に生きたいから触らぬ神に祟りなしってやつだ。こういうことは最低限自分の身を守れるようになるまで鳴りを潜めて行動するに限る。
そんな風に俺が一人で会議をしていると、隣の二人が世間話をしていた。
「最近ギルドの方は、何かあったか。」
「そうですね、盗賊がこの都市の方に近づいてきているそうなので、討伐依頼と護衛依頼が近隣の村々から出始めていますね。」
「そうか、そいつは穏やかじゃねぇな。孤児が出ないことを祈るぜ。もし何かあったら連絡をよこしてくれ。これでも元冒険者だしな。」
「ありがとうございます。こちらも腕の立つものに声をかけてはいますが、問題の起こる前にご相談させて頂きますね。」
院長のドーハはやっぱりあのドーハなんだろうな。元冒険者らしいしエルフのお姉さんの反応を見るに結構ランクも高かったんだろう。風格もあるしな。
「おう!まかせときな!なら、今日はここらでお暇させてもらうとするかね。お、自分のステータスは確認できたか?坊主」
ドーハが俺に話しかけてきた。急に話を振られるとビクッとしちゃうからやめろよな。
やっぱり、俺が今世で一番最初に鍛えるべきはコミュニケーション能力だろうな。
「はい、確認できましたよ。」
「名前はどうだった?何て書いてあった?」
ドーハは少し心配そうに聞いてくる。
「俺の名前はリークでしたよ。」
「おお!そうか、リークか!良い名前だな!」
心底嬉しそうに笑っているドーハ。やっぱり、こいつは良い奴だな。飯も食べさせてくれるし。
俺の中でドーハの株は上がりっぱなしだな。
「はい、ありがとうございます。」
「良いってことよ、これでこれからは遠慮なく名前を呼べるってもんだ。あとはその言葉遣いぐらいだな、その敬語がとれりゃあもちっと子供っぽく見えるのにな。」
「そうですね、頑張ってみます」
「かっ。これはまだまだかかりそうだな。」
そんな風に会話をしているとエルフのお姉さんが少し笑いをこぼして話しかけてきた。
「ふふふ、楽しそうですね。では、これでギルドカードの作成が終了しました。何かご質問はありますか?」
俺は少し考えて、自分のギルドカードを見る。指をスライドさせてページが変わるのはやっていて楽しいが、持ち歩くには少し大きい気がする。
「このカードってみなさんどうやって管理しているのですか?失くしてしまったりする人も出てくると思うのですが、その場合は新しく作りに来れば良いんですかね?」
すると、エルフのお姉さんは「あっ」と言って、何かを思い出したかのような顔をした
「申し訳ありません。そちらの説明がまだでしたね。ギルドカードに再発行というものはありません。」
「えっ、じゃあ失くした場合はもう二度と作れないんですか?」
「いえ、正確に言うのならばギルドカードに再発行というもの自体が必要ないんです。」
「必要ないってどういうことなんですか?」
俺が少し考え込んでいると、エルフのお姉さんが笑ってきた。くっ、まあ可愛いから良いけど。
「ふふふ。では、今お持ちのご自身のギルドカードを両手で押しつぶしてみてください。」
「えっ、良いんですか?」
「はい、大丈夫ですので思いっきりやってみてください。」
ドーハの方を見るとこちらも少しニヤニヤしながら頷く。俺は手の中のギルドカードを力を込めて思いっきり潰す。
するとカードは光の粒子のようになり俺の体の中に入っていくように消えた。
俺はその現象に焦って声を出してしまう。
「わっ!えっ、カードが失くなっちゃったんですけど!」
「大丈夫ですよ。ギルドカードを思いながら、手に魔力を集めてみてください。」
俺はエルフのお姉さんの言ってる意味はわからなかったが、少し落ち着いてから言われた通りに手に魔力を込めてみる。
すると今度は、手に作った魔力の中からギルドカードが現れた。
「・・・・・・カードが出てきました。」
俺がそう言いつつ二人を見ると、今度は逆に少し驚いたような顔をしていた。
「はい。ギルドカードは自身の魔力と血液でできていますので、出したり消したりを自分の意思でできるのです。」
「な、なるほど」
「ですので、ギルドカードには盗難される心配もありません。」
「そ、それはとても便利ですね。」
「はい。これで本当に、ギルドカードの説明は終わりです。ですが、冒険者、商業者、研究者になられる時にはそれらに合わせたギルドカードの仕組みがございますので、その時はまた、説明を聞いてくださいね。」
「わかりました。」
「では、あなたが成長なされて冒険者になられる時を楽しみにお待ちしています。何といっても、その齢で
ギルドカードを作れる方ですしね。」
「えっ、ギルドカードを作るのってそんなにすごいことなんですか?」
エルフのお姉さんの言葉に俺は少し焦る。それなら、もう少し時が経つのを待っていたのに。
「いえ、その年齢でギルドカードを作ること自体は簡単なのですが、消したギルドカードを出すにはある程度の魔力のコントロールが必要になりますので、一回でできる方は多くないんですよ。1日以上かかる方もいますしね」
なるほど、それを一回でできてしまったからさっきも驚いていたわけか。
「そうだったんですか。」
「はい。ですからお客様は魔力のコントロールが感覚的にわかったということですね。」
それは多分、前世で散々やってきたからだと思うけど。それを言うわけにもいかないし、そろそろ帰ろう。
「そうなんですね、ありがとうございます。今日はとっても勉強になりました。」
「はい、どういたしまして。ではまたのご来店をお待ちしておりますね。」
「はい。では、今日はこのまま帰るのですか?」
俺は早々に隣のドーハへ話を振る。
「そうだな。もう二時間近く経っちまってるし、みんなに何か買ってから帰るとするか。そろそろ昼だしな。」
「わかりました。」
「じゃあここらでお暇とするか。今日は、ありがとな。」
ドーハはエルフのお姉さんに言った。
「はい、また何かありましたらギルドの方からもご連絡させていただきますね。」
「おう!」
俺は、さっき出したカードをもう一度消した。どうやら消えるように念じても消せるらしい。やっぱり便利だな。
そうして俺のギルドカード作成は終了した。




