第七話 冒険者ギルド
この世界は、現在、世界の約2/5ほどが生活困難な領域『不可侵領域』と呼ばれている。この領域は、邪気によって埋め尽くされ、進めば進むほど邪気が濃くなってしまうそうだ。
大地自体に異変はないのだが、天候や気温がおよそ人が生きていけないほどに変わるのだ。そして、それらに耐えられたとしても、今度は邪気によって身体が蝕まれていくことになる。
故に、この世界では、現在生活が可能な残りの3/5が『生活領域』なのだ。そして、その半分が海であり、残りの半分の陸地で俺たちは生活している。
生活領域には、3つの大陸がある。
竜族と魔族が主に暮らすラストア大陸、他の四種族が主に暮らすトルネルア大陸、そしてその二つの大陸の間に位置し、国交の要となっているロンテス大陸である。
ちなみに大陸の大きさは、ラストア大陸>トルネリア大陸>ロンテス大陸である。
神族は基本的に自身の生まれ故郷で暮らすことが多い。それと、三柱の神のいる場所はよくわからなかった。
そして、現在俺がいるのは、ロンテス大陸に唯一ある、他種族連合永世中立国家『フォルティス王国』である。
その中でも魔法都市マガニックの冒険者ギルドに来ている。
俺の時代も冒険者ギルドはあるにはあったが、できたばかりであまり役に立たなかったんだよな。
院長と共に、ギルドの中に入る。建物を見たときから分かってはいたが、すごく活気があるし、大きな建物だ。
「どうだ? 初めて入る冒険者ギルドってやつは」
「す、すごく活気立ってますね」
俺は、少し雰囲気に当てられてしまった。
「そうだろう。なんていっても、ここは世界の冒険者ギルド本部だからな。」
そう、ここマガニックにある冒険者ギルドは支部などではなく、本部なのだ。
まず、この世界のギルドというものは基本的に『冒険者ギルド』『商業ギルド』『研究ギルド』の三つからなる。一応他にも、商業ギルドの下には書店ギルド、冒険者ギルドの下には宿泊ギルドなどそれぞれの下に小ギルドを持っていたりするが、大きく分けるとその三つのギルドとなる。
「まあ、とにかくギルドカードを作るには受付に行かないとな。」
院長に連れられて、俺は受付に向かう。
ギルドの受付嬢は美人が多い。前世ではおっさんがやってることが多かったのに。
受付嬢はさすがは他種族連合というだけあって、エルフや獣人、さらには魔族までいる。
カウンターには、『買取』『受付』『報告』『総合』などがある。今回はどこに行けばいいのだろう。などと俺が考えていると、院長は『総合』のカウンターに向かった。エルフの受付さんだ。
「すまないが、ちょっと良いか?」
「はい、あっ、ドーハさま、いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件ですか?」
院長が声をかけると、エルフさんが返事をした。どうやら顔見知りのようだ。そんなことより、俺は今初めて院長の名前を知った。こいつがドーハだったのかよ!どうりで孤児院には、ドーハの著作物が多かったわけだ。ってかこのおっさんよく自分の書いた本を堂々と本棚に置いてるな。いや、同名なだけか?と、俺が一人で勝手に衝撃を受けている間にも話は進んでいく。
「ああ、今日はこの子のギルドカードを作りにきたんだよ。」
「あ、はい。かしこまりました。ええっと、お隣の少年でしょうか?今回は、また随分と若いですね。」
「そうだ。少し若いかもしれんが、カードを作るだけだしな。大丈夫だろう。」
「は、はい。ギルドカードの作成ですね?かしこまりました。準備をしますので少々お待ち下さい。」
エルフのお姉さんさんが一度、カウンターの裏に引っ込んでいき、待つこと数分。
「お待たせしました。では、ギルドカードの作成を行っていきますね。」
今度は俺に話しかけてきた、エルフのお姉さん。子供相手でもしっかりと丁寧に対応してくれる。
「はい、お願いします。」
エルフのお姉さんはカウンターにある窓を上にあげて、なにやら魔道具的なものを目の前に置いてきた。
「それでは、まずこの器具の中に腕を入れ、魔力を注入してください。」
「こうですか?」
器具には大きな穴が空いているので、その中に腕を入れる。
「はい、では魔力を注入してください。」
「わかりました。」
そう答えて、魔力を注入し始める。俺は転生してから当時使えていた魔法がほとんど使えなくなっている。これは、肉体が違うからなのかどうかは分からない。
だが、今については少しありがたい。魔力が多すぎると些細な調整が難しいからだ。俺はゆっくりと魔力を注入していく。1分ほど注入し続けた頃、腕輪の外側が青く点滅した。
「はい、もう大丈夫です。」
そう言われて、俺は器具から手を抜く。
「次はどうすればいいんですか」
「はい、続いてはこちらの器具を使います」
そう言って、エルフさんは別の器具を用意した。
先ほどの器具を小さくしたようなものだ。
「さっきと同じようにすればいいんですか?」
「いえ、こちらの器具では血液を採取させて頂きますので、指を入れていただくだけで結構です。」
「こんな感じでいいですか?」
新しい器具に今度は指を通しながら聞く。
「はい、大丈夫です。では、血を採取しますので少し痛みがあるでしょうが我慢してください」
「わかりました」
俺がそう答えたあと、チクッとした感覚がして、血が流れていくのがわかる。
数秒ほどした後、エルフさんが言う。
「はい、もう大丈夫です」
俺は手を抜いて確認してみると、針で刺されたような傷があった。まだ傷は残ってるんだが、放置したままでいいのか?
「これで終わりなんですか?」
「いえ、最後にもう一つ行うことがありますので、少々お待ち下さい。先ほど注入して頂いた魔力を媒体に魔法紙の作成し、そちらに血液を与えてカードを作りますので。」
「わかりました。」
それから、待つこと5分ほど。
「お待たせしました。こちらがカードになります。」
見せられたのは少し大きめの真っ白なカードだった。
「これが、ギルドカードなんですか?」
「はい、こちらが無印のギルドカードになります。今はまだ白紙ですが、このカードに血魂契約というものを行うことによってお客様だけのギルドカードが完成します。」
「血魂契約、ですか。それって、カードとでもできるんですか?」
血魂契約とは、文字通り対象の生命と血と魂で結び合う契約のことだ。前世では、魔物を使い魔にするときなどに行うものであった。それが現代では、非生命体が相手でもできるというのだろうか。
「はい、大丈夫ですよ。そのために魔力に血液を混ぜ合わせ反生命体状態にしていますから。血魂契約は死者となっても契約が続きますから、その事象を利用しているんですよ。まあ、血魂契約とは言いますが契約すること自体は簡単ですので。そう気負わなくても大丈夫ですよ。こちらにある呪文を唱えていただけますか?」
なるほど、契約をした相手ならその対象が死んでしまっても契約が続くのか。これは死霊魔法に通じるものがありそうだな。
俺がそんな風に納得しているとエルフさんは、『冒険者ギルドの手引き』という本の中から血魂契約に関するページを開き、呪文のところを指差してくる。そこには、血魂契約魔法について書かれていた。
俺は白いカードを手に持ち呪文を唱える。
「わかりました。『我が血の下に魂の契約を為す。コントラクト』」
カードに対して呪文を唱えると、白いカードが発光しだしたがすぐにおさまる。
カードを見てみると、先ほどまで真っ白だったカードに変化があった。




