侵入者
一体何なんだあれは!?
【動体・熱源反応ヲ確認 熱源反応ノ波長ヲ検索――該当者ナシ 侵入者ヲ排除シマス】
第一声、聞こえた声は人のものではなかった。
音の羅列を言葉に聞こえるように並べ、感情のない音は発せられていた。
そして同時に、その発声源からはけたたましい警報音も響き渡っていた。
声の意味を理解すると同時に、一人は背負っていた荷物を躊躇無く地面に捨て、無駄を無くす。もう一人は相方が準備を終わるまでに、音もなく発生源へと近づき、砕け散るをまき散らした。
大きな爆発音と煙を巻き上げることで警報音と声は消えたが、それで安心するほど二人は楽天家ではない。
「ちょっと、どういうことよアレ!?」
すぐさまその場から離れるために、走り出す。ともかく、この場から離れるのを最優先としたため、来た道を戻って。
「ふむ。どうやらこの街の警備のようだな」
「そうね、でもわかってるわよ! 私が聞きたいのは――」
なんでアレがこんなところにあるのか、という椛の言葉は耳を劈く警報音によってかき消された。
【――侵入者ヲ発見 侵入者ヲ発見 周辺ノ警備ハ侵入者ノ排除ヲ行ッテクダサイ】
代わりに発せられた声は、先ほど聞いたものと同質の、感情の無い声。
発生源である存在は二人が走っている左前方の建物窓から姿を現し、警告を促し終えると同時に二人の正面へ降り立った。
「げ!? 見つかった!」
「ふむ。仲間を呼ばれて増えるよりも先に壊すか」
「言われなくても! って、できるかそんなこと!」
「確かに、椛はあの二人に比べれば一般人ということだったな。ならば、出来る限り周りの注意を払ってほしい」
「わかったわよ。その代り、二体以上と遭遇したら脇目も振らずに逃げるからね!」
「了解した」
相談は迅速に。紳士の膂力はどうやらあの存在に通用するらしくも、椛はそうもいかない。だからこそ、ここでの対処は紳士に任せ、椛は先ほどの音によって近づいてくる存在の警戒を行う。
すぐさま紳士はその存在が排除行動をとるよりも早く接近し、先ほど同様、目にもとまらぬ速度で正面を砕き、追撃によって中央を陥没させて破壊。
破壊されたソレは火花の散る音を鳴らしながら、ところどころ身体から電気を放出する。
椛にとっては馴染み深く、しかしこの世界に来てからは一度として見ていなかったもの。
全身のほとんどは金属で成形され、赤い光を宿した人工的瞳に人工的音声。
そして与えられた使命を果たすように二人を殺そうとする存在の正体。それは、機械であった。
【侵入者ヲ排除シマス 防衛装置ヲ起動 排除行動ニ移行シマス】
「またぁ!?」
「ふむ。中々に多いな」
逃走を開始して少し、また新たな機体が出現する。
今度の機体はあからさまに危険であった。その背には機関銃が背負われており、二人の姿を捉えると同時に機関銃の発砲を始めたからだ。
「ちょちょちょ、はぁ!?」
「ふむ。避ける……のはお嬢さんには難しいか」
「当たり前でしょ、こちとら一般人よ! とりあえず、建物曲がりながら逃げるしかないでしょ!」
「ふむ。そうすることにしよう」
やや不服とする声をあげた紳士であったが、彼一人が単独で機械を破壊できるとしても、椛は一般的な少女であることに変わりはなく、銃弾の一発でも当たってしまえばそれだけで致命となる。よって、ここは逃走を選択するしかない。
あちらは最初の数秒間空回りする砲塔全てに銃弾が込められると、即座に火薬の音が鳴り響き、足もとに無数の弾痕を刻み込んだ。背を向け走りながら、耳元を空気の擦過音が過れば、背中からは汗が噴き出して身体は冷えた。
それでもどうにか建物同士の狭い空間を走り抜けて機体を撒くようにし、同時に銃撃から身を隠すことに成功する。だが、一つの道を抜けると新たに別の機体が出現し、休む暇もなく機械は二人を殺しにかかる。
その状況を、文字通り命からがら、椛は走っていた。
走っている間に気付いたのは、機械たちには数種類の役割をもっているのがあるということ。
二人が最初に出会ったものと似たのには結構遭遇しており、これを仮称で索敵型とした。姿形は小回りが利く小さな機体で、武装は何一つ身に着けていない。代わりに、執拗なまでに追従してくるのと、常に周辺に警報を発して他の機械を呼び寄せていた。撒くことは難しいので、見つけたら即座に壊さなければ次々と周りの機械が集まってくるので、放っておくと詰む。
次が、猟犬型であり二人に二番目に出会ったものだ。一度警告音を遠吠えのごとく行うと、即座に侵入者を追跡し、追いつけばその機体による直接攻撃で捕獲しようとしてきた。出会ってしまえばその場で仲間を呼ばれ、おまけについてくる。といっても、紳士はこの猟犬型も破壊するには手間はかからないので索敵型と今のところ何ら変わりはない。
三種目は制圧型だ。機体のどこかに実弾装備の銃火器を装備しており、こちらを追従しながら銃弾を吐き出してくる。攻撃は見つけた瞬間に行われ、見つかる前に壊すしかないのが現状における次善策である。最も有効的なのは制圧型は機体が大きいことから路地などに侵入することは出来ず、撒きやすいということぐらいだった。
四種目は殲滅型。これが最も危険。制圧型と似た大きさでありながら、そこに装備されたのは銃火器などというちゃちなものではない。基本装備が爆撃という、容赦も何も無い攻撃である。数はその分最も少ないが、出会ってしまえば周りの損害も弁えず撃ってくる。何度か爆風に晒され、椛の肌は熱で赤みを帯びてしまっていた。
そんなじり貧状況。追手は着々と増え続け、二人は着々と詰みへと駒を指し続けている。逃げ場はこの状況において無く、足を止めてしまえば数秒も掛からずあっけなく死ねるだろう。椛に死ぬ気はないが。
だから、二人は騒がしくなった街を右へ左へ縦横無尽に駆け巡る。
「一体、どんっ、だけ、いんのよ……」
「ふむ。もしかしたら、機械たちを統制制御している場所があるかもしれんな。そこに行けば、機械を止めることも可能かもしれんが」
「あればいいけど、正直、はぁ、つらいわ……」
椛にも限界は近づいてきており、あごは上がり、息が上がってきている。全力疾走で数十分も走っているのだから、なんら不思議なことではない。
紳士はもちろん椛が限界であるということをわかっている。それでも、後ろから追跡してくる機械たちからは逃げるしかなく、既に殲滅という手だては現状において愚策でしかなくなっている。やるとすれば、今別行動している二人の少年少女が必須となるわけだが、こうも移動してしまっては爆発音などが聞こえているとしても追いつき合流するというこうとは難しいと断定するのだった。
「椛、君は機械に詳しいかね?」
「一通りは本で読んだことはあるわ。て言っても、専用のものになってくると説明書を一度でも読まないとさっぱりよ」
「ふむ。十分だ。ならば、これから街の中央に向かうとしよう。街の中心部であれば、均等に機械たちには命令が出来るだろうからな」
賛成、息を切らしながら椛は呟き、へばりそうな足に活を入れて目的の場所へと行くのだった。
機械たちは、その間にも二人を追尾する数を増していっていた。
というわけで現代兵器的なのが出現です。どうしてこいつらがいるのか……謎はわかるかもしれないしわからないもしれません。
まぁ、こいつらただの尺(以下略




