果てにある街
二話同時更新ですが、正味この前の話を読む必要はほとんどありません。あえて説明してしまえば、装備がちょっと変わる程度のことです。
「やっと目前に迫ってきたわね」
約四日。それが、荒野に足を踏み入れてから街にたどり着くまでの日数だった。
目的地にたどり着く。それだけで、胸の奥からは言いようもない感動がこみあげていた。それもそのはず、意識を常に持て余し、暇という概念が歩いているのに付きまとってくるのだ。心を無にして歩くことが出来ない椛にとって、その時間は苦行といって差し支えなかった。
「長かったね~」
「………………」
「ふむ。ペースが乱れなかったことが幸いしたな」
それぞれ思い思いに、感想を述べたり態度に表している。
やはり、歩くだけといっても漫然とした時間が長く続くというのは精神的につらいものがあるのだろう。それでも、ついに一行は目的地である街の入口に、たどり着いたのだった。
「さて、ここからはどうしましょうか」
「結構この~街広いよね」
「だから、全員で固まって行動するか、個別に探索するか、二組に分かれていくか。どれかにしましょう」
多少黄土色が被さってはいるが、それでは隠しきれない人工石材の建物群。見たまんま、椛たちの世界にある都会というべき場所であり、街は十二分に広かった。表面上全てを探索するだけでも、一日は掛かりそうなぐらいに。
よって、探索するにあたって三つの選択肢を出したのだった。
「ちなみに私は、二人一組の方がいいと思う」
「どうして~?」
「一応、ここには魔物とかの危険はないけど、万が一にでも全員が個人行動をしてるときにそのうちの誰かが連絡の取れない状況になってみなさい。危険すぎるわ」
「ふむ。確かに、その提案は悪くないな」
「確かにそうだね~。うん、ボクもそれでいいと思う」
「じゃあ決まり。とりあえず、分け方だけど――」
死んだ街の中を、歩く二人がいた。
「………………」
「………………」
互いに無言。
視線を交わさず、言葉を交わさず、並んで歩いていた。
別に、この二人は不仲というわけではない。ただ、喋る必要ながないから喋っていないだけだ。
それでも、必要があればちゃんと話す。
「どう?」
「特にない」
それでも他者が見れば、酷く事務的。
互いの個性ともいえるものを極限にまで削ぎ落とし、必要最低限の言葉の中で互いの真意を通わせる。だが、それだけで実のところ充分であった。
というより、これは二人の中で起こる照れ隠しのようなものだった。
こうなった原因は一人の幼馴染兼親友である。
二組に分けるという提案していた時からすでに決めていたのか、そうと決まればとんとん拍子で現状である。
無論、この時には少々のもめ事も起きたわけなのだが、あまりに露骨に抵抗するのもアレなので、被害者は引き下がるしかなかった。
とりあえず、与えられた役割を全うしてしまうのが、最善なので、手早く探索していく。
二人が注意深く見ていたのは主に三つ。一つが本当に生き物がいないのかということ。次に、怪しい場所はないかということ。最後に、この街は本当に『死んでいる』かということの確認。
とりわけ全てが重要ではあるのだが、一番気になったのは、最後の一つである。
この状態に、二人ともどうしても違和感を拭い去れなかった。
一つの建物を調べ終わると、また一つ、また一つと調べていく。
繰り返して、七つ目の建物に入ろうとした時だった。
「ねぇ」
「ああ」
ついに、二人は違和感の正体に気付いた。
二人の視線は扉の下の小さな隙間。そこに、通常では気づけない違和感が存在していた。
小さく細い線。それは石材と土の境目にだけ唯一あり、さらには土が石材に乗っているということだった。
慎重に、音を立てないよう取っ手を回し、扉を開ける。
漏れ入る光はどうしようもないため、自身の警戒度を上げて中へと侵入した。無論、足音を立てるなどという愚行を起こしてはいない。
中に入って、違和感は確信に変わる。
まず、綺麗だった。
通常、生物の住まなくなった場所というのは、今までの在り様が嘘かのように急激に衰え、朽ちていく。その基準の中で最も簡単にみられるのは、埃だ。塵芥が集合し、長い年月を掛けて積み重ねられていくもの。しかし、今二人の入ったこの建物の床には埃が少なく、また、ごく最近何かが通った跡を残していた。それは、扉の目の前で見つけた跡によく似ているものであり、また、この世界では見ることは出来なくとも、自分たちの世界であれば容易に見ることのできるもの。
「まさか――」
椋が違和感の正体を口にしようとした瞬間、遠方から鈍い、何かの崩れ落ちるような音と破裂した音が響き渡った。
音を聞いた瞬間に、椋の中で嫌な予感が沸き起こる。
同時に、当たりを注視していた悼也が物音の発生した方向へと身体を向けていた。
椋もすぐさま悼也の向いている方向を見た。
煙の上がっている場所は二人のいる場所のほぼ真逆。そしてその方向には、今ここにいない二人がいっているはずだった。
「行くぞ」
「う、うんっ」
悩む暇も焦る暇もない。
悼也の呼びかけとともに椋もまた荷物をその場に落とし、走りだす。
荷物を待たず走った時間にすれば、恐らく五分と掛からない。それでも、その五分はもどかしく感じる。それでも脚を止めることはなく、親友もとへと駆けるのだった。
一体何が起こったのか!? 次回、特に意味のない繋ぎが四人に襲い掛かる!!




