碌でもない人のロクでもない話
その後、三人は準備を整えると火山をあとにした。
約三日掛けて街へとたどり着くが、その日の内の城へと入る時間を過ぎてしまったために、三人は街での拠点としている宿屋へと戻り、数日ぶりのまともな場所でゆっくりと身体を休めるのだった。
その翌日、朝一番に街へ繰り出すと、とある二人組に出会う。
それは、三人が火山で出会った男女だった。
彼らは今回の試験を合格することは出来なかったが、諦めることは無く次の試験に向けてさらに実力をつけて挑むと、既に前を見ていた。
その後、お互いに自己紹介を行い、男はカーク、女はミシェルと名乗り、どこかで再び会えたらと言い別れるのだった。
三人が試験会場へとたどり着くと、ロウアトンが待ち受けていた。
彼に証拠となるクリムゾンドラゴンから手に入れた躰の一部を見せて渡すと、無事合格となる。
ちなみに、ロウアトンから話を聞いたところ、今回の試験での合格者は椛たちを含めて五人。不合格者のうち三名が死亡したのだという。
合格の儀は後日、合格者全員が集まる二日後に行われることになり、その日は解散することとなった。
城をあとにした三人はその足でギルドへと向かい、グラディンに無事合格できたと、報告に向かうことに決めるのだった。
「失礼しまーす」
「おう、帰ってきたか三人とも」
「その様子では、無事に合格できたようだな」
「はい、ビスタートさんに、グラディン、さん……ん?」
椛たちがギルドの扉を抜けると、このギルドの長であるグラディンがもちろんおり、その隣にはもちろんいないはずのビスタートの姿があった。
椛も普通に返事をしたのちに違和感に気づき、ついビスタートを二度見する。
彼は、酒をかっ喰らっていた。
「なんで、ビスタートさんがココにいるんですか……」
「ギルドマスターの召集……という名目で、お前らの様子を見にきた」
「で、酒を飲んでいる、と」
「別にいいだろ、二日後まで特にすることねぇし」
「はぁ……」
この時溜息をついたのはグラディンだった。
どうやら、彼もビスタートのこういった面に関しては苦手なようで、その表情は諦めが見えている。
実際、グラディンとビスタートは近い時期にギルドマスターとなっており、その縁と年齢の近さからか、交流をもっている。
しかし、片や生真面目な気質であり、片やいい加減な部分のある二人が噛み合うことがあるのはそうそう無い。それでも、他のギルドマスターたちに比べたら仲がいいというのは、彼らが上辺だけの信頼関係で成り立っていないということなのだろう。
「合格は出来ました。それと、今回の試験では私たちを含めて合格者は五名。全参加者十一名のうち、死亡者が三名だそうです」
「確か、今回の討伐対象はクリムゾンドラゴンだったな。アイツはSランクの魔物だったから、Aランクを水準値とした実力のある奴じゃ、正直に言って一人での討伐は無理だ。そうだな、大体前衛三人に後衛一人が上手く機能してくれれば苦戦するが斃せるだろう。ただ、それも表面上は、だ。お前ら斃したってことは、アレを見たってことだろ?」
「アレ?」
「クリムゾンドラゴンはな、一定の傷を蓄積させるのと、怒り状態になると殻を破るんだ。
で、そこからかが厄介。装甲は多少薄くもなるが、ドラゴンの鱗っつうのは一級品の防具に使われるからな、人間にとっちゃあ大して変わらんが、アイツらにとっちゃあ大きく変わる。本来持っている翼を用い、空中からの襲撃に炎の息吹だ。飛ぶ手段の無い奴が戦えば空中からの攻撃に殺られるし、仮に空中戦が出来たとしても躰の軽くなったドラゴンの動きは簡単には捉えられない。だからこそ、Sランクなんだがな。よく斃せたもんだ」
「はぁ……?」
「あ、あはは~」
「………………」
「なんだ、その表情は?」
ある意味で、三人は驚いていた。
まず椛が一人でクリムゾンドラゴンを斃したことになるのだが、本人はそれを覚えては無い。椋と悼也に関しては椛が竜を斃したところを目撃してはいるが、あの光景を見てはたとえ椛が正常な状態で戦ったとしても勝てる見込みは薄いからでもあった。それ故に、複雑な気持ちが混ざっていたのは致し方ないのかもしれない。
「だが、驚くなら他の合格者二人もか」
「どういうことです?」
気を取り直し、続くビスタートの言葉に椛は質問する。
「いや、お前ら三人が組むのは当たり前のことだからいいんだが、その二人が仮に組んでいたとしても、二人でクリムゾンドラゴンを斃したことになる。さらに言えば、その二人が他の死んだ奴らと組んでいたとして、止めはほぼ確実に生き残りが行うもんだからな。ということは、合格者二人は基準値であるAランクの力量を超えてる奴らなのさ。
俺が驚いたのは、今回の試験の合格者と死亡者の数。まず、平均参加者が十人のこの試験において、合格者が半分っているのは今までもそうなかったことだ。さらに、死亡者もまた同じで、最悪全員のところを、たったの三人に抑えた。そういった意味では、今回の試験は中々に実力者が多かったということなんだろ」
酒も回って饒舌なビスタートは、酒の入った容器を呷る。
だが、この話を聞いている椛たちにとっては戦慄ものであった。
なぜなら、自分たちが受けた試験が死亡者当たり前であり、さらに今回は死亡者が少ない方などと平然のように言うのだ。
三人とも無事とまではいかないが、約二名は命の危機に瀕している。言ってみれば、これからも同様なことに多く遭遇するということなのだ。はっきり言って、聞きたくなかった。
「あとは――」
「いえ、もう結構です……」
「ん?」
「とりあえず、報告はしたので、これから観光をしてきますで、それではっ」
「そうか、まぁー楽しんで来いよー」
椛はビスタートとの話を打ち切り、グラディンとはまともに話すこともなくギルドを後にしたのだった。
これ以上あそこにいてはロクな事にならないと、脳裏に掠める警告に従うのだった。
繋ぎの話になりますね。どうしようか凄い悩んだ結果、ロクでないことになりました。
次話は出来る限り早く上げたいです。
一応、観光の話。ゆっくりとした日常的な話になる……かなぁ?




