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Drifter  作者: へるぷみ~
Drifter
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焔纏いし飛竜の咆哮炎吹 前編


 「うわぁぁぁぁああああぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!」

 「この声はっ!?」

 「奥からだよ!」


 溶岩流れる道を歩く最中、突如男のものと思われる叫びが、三人の耳に入る。

 そしてそれは道の置くからであり、さらには何か危険なものが潜んでいるということでもあった。

 叫び声の聞こえた三人は状況を確認すると同時に走る。


 「先に来ていた人かしら?」

 「かもしれないね」


 このときの椋は、さすがにいつものような伸びた声ではなく、はっきりとした、緊張感を持った声であり、その場合の椋を知っている椛と悼也も警戒をしながら、恐らくは標的とまみえるのであろうことを予想して準備していく。


 ――ぐゃあああああおおおおおおおおおんんんん!!!


 「っ!」

 「椛ちゃん、あそこ!」

 「なっ!?」


 響き渡る咆哮に、一瞬椛は気をとられる。しかし次の椋の言葉と指した方向へと視線を向けると、目を大きく見開く。

 そこにいたのは、一匹の竜と二人の人間と一つの人間だったもの。

 叫び声をあげたであろう人物は、不自然に溶けた地面の中心にいた。しかし、それは人の姿であっても人で非ず、黒い塊となっていた。

 残る二人の行動は一人がやられてたとしても、それを気にする余裕など見られない。

 二人の人物は一人が竜の周りを移動しながら戦っている接近型で、もう一人は少し離れた位置から弓を射っている。

 弓を持った者が竜の眼や口内を狙いながら、――精霊の力を用いているのだろう――岩を竜の腹部や頭部に飛ばして牽制を行っている。

 一方竜の周りで爪牙を躱し、尾打を潜りながらも弓使いの牽制によって竜に生まれた隙を逃さずに剣を両手で握り竜を斬りつけている。

 どちらも試験を受けるだけあり、熟練したものだというのは誰の目でもすぐにわかった。


 「あの二人、強いわね」

 「うん。でもあれじゃあの竜は倒せないよ」


 椋の言ったことは正しかった。

 現在戦っている二人は確かに強く、竜にも何度も攻撃を成功している。

 しかし、当の竜はといえば、その攻撃を受けても傷をまったく負っていなかった。

 剣の男が竜の躰を斬る。しかし、それは竜の鱗が一切の刃を受け付けない。

 弓の女が竜の眼球を射る。しかし、その矢は眼球を覆う幕が一切を受け付けない。

 剣の男が精霊の力を用いて竜の足を貫く。しかし、竜の脚は頑強な鱗が幾重にも存在しており刃は届かない。

 弓の女が精霊の力を借りて大きな岩を竜の頭部へとぶつける。しかし、竜の頭はぶつかる岩も気にせずに体勢を崩すには届かない。

 故にそれはジリ貧であり、二人を誘う死神へと悪あがきしているにすぎない。

 精神と肉体は時間とともに疲労していき、それはやがて一瞬の隙を作り、それはきっと二人の死を表す。


 「椋、悼也! 今すぐに二人の援護に行くわよ! 椋が先に行って。全力!」

 「わかった!」

 「悼也! 椋が竜の気を引かせたらすぐさま二人の回収! 出来る限り男の人を優先して! 私が女の人拾うから!」

 「ああ!」


 だからこそ、三人は全力であの二人を死から逃れさせるために行動する。

 この中で最も戦闘力の高い椋が、椛と悼也を置き去りにして竜へと走る。

 次に、悼也が椋の後に続き、彼の注意は竜の尾と男の行動へ向く。

 椛は指令を出すと同時に、周囲を囲っていた風を解除し自身へと纏わせる。それによって椋や悼也と大差ない速度で駆け、彼女は弓使いの女性へと向かう。


 「はぁ!」


 いち早く竜へと接近した椋が竜の背を踏み台にして跳び上がると、スカートの中から折り畳み式の棒を取出し瞬時に組み立て、石突部分で竜の首を、人間いうところの脊髄を打つ。

 その一撃により、竜の気は後ろへと向く。


 「ふっ!」

 「な、なんだ!?」


 椋の作った隙を見逃さず、悼也は男へと肉迫すると同時に男の影を具現化させ男が下手な行動しないように担ぐと同時に離脱する。


 「こっち!」

 「え? きゃぁ!?」


 追いついた椛も、女性が呆気にとられている間に女性を抱え、悼也と同じ方向へと離脱する。

 抱えられた女性は放心しながらも、移動している間に落ち着き、自分が助けられたことを悟った。





 「ありがとう」

 「助かった。礼を言う」


 それから、竜より離脱した椛と悼也は竜が見えない位置にまで移動し、間もなくして椋もそこへとやってきた。

 そこで、剣の男性と弓の女性がそれぞれ礼を言う。


 「いえ、大丈夫でしたか?」

 「ああ。君たちが来てくれなければ、いずれあのドラゴンに殺されてただろう」

 「とすると、アレは……」

 「ええ、クリムゾンドラゴンよ」


 やはり、と椛は納得した。

 紅の鱗に、あの巨躯。そして、一人の人間を炭の塊へと変えたのであろうブレスらしき痕跡。それが、クリムゾンドラゴンだという証拠に他ならない。


 「正直に言って、我々じゃあのドラゴンを怒らせることは出来ても、傷をつけることが出来ない」


 精一杯の皮肉か、男性が座り込んで話す。


 「精霊の力を用いても、分厚い鱗は貫けず、彼女の牽制があろうとも竜の一つ一つの動作は全て触れれば致命傷どころでは済まない。なにより、この空間もある」


 先ほど二人の戦う様を遠くから視ていた椛は男の言っていることも理解できた。

 そして何より、この火山地帯は人間にとって過酷な場であり、あの竜にとっては最大限の力を発揮する場だ。思うようにいかないということもあるのだろう。


 「目を狙っても眼を保護する幕は矢を通さず、巨大な岩をぶつけてもビクともしない……お手上げよ」


 女性の方も、その表情は諦め見え始めていた。

 だが、その言葉であろうとも椛は、二人に言葉を投げる。


 「お二人は、どうするおつもりで?」

 「「………………」」


 両方揃って、黙った。

 心のどこかが無理だろう、と言っており、それが大きくなってきている。


 「私たちは、これから準備を整えたらあのドラゴンを倒しに行きます」

 「無茶だ!」

 「それでも、倒す必要があるんです。だから、教えてください。二人が……いえ、三人が戦った時の、事を」


 男と女がどんなに無理だと喋ろうとも、それで三人がこの試験を諦めるという選択肢は存在しない。だからこそ、あの竜を斃すためには今は炭となった者と、この生き残った二人の話が重要だった。

 男も女も、黙っていた。それでも、三人の眼を見て、本気でやるということがわかる。

 たとえどんなに二人よりもこの三人が一回り以上幼くとも、実力が確かだからここにいるのであり、死地から助けられたことは紛れもない事実なのである。


 「あのドラゴン……クリムゾンドラゴンは、強いぞ?」

 「わかってます」

 「わかった。オレと、そして死んだアイツ」

 「あたしたちの話を、します」


 だからこそ、二人は話すことにした。

 クリムゾンドラゴンとの戦いを。

 人生の中で最も死と接近した、あの戦いを。

 それが二人の前にいる、若い者たちの勝利へと繋がるために。



戦闘シーンはテンション上がってきますね。

次話、死闘、クリムゾンドラゴン!

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