新たな国へ
翌朝。
ギルドの門前には五人の男女がいた。
三人はこれから背中にそれなりの荷物を抱えているが、二人はギルドを背にしており服装は身軽なもの。つまりは、三人が出かけるのを二人が見送るという図だ。
ギルドを背にし、無精髭を生やした男が一歩前に出る。
「とりあえず、ドラクンクルトに辿り着いたらギルドへ向かえ。その後はあっちのギルドマスターが説明をしてくれるだろうから、そいつから話なんかは聞いてくれ」
彼――ビスタートは別段めんどくさくて言っているのではない。いや、多少はめんどくささも混じってはいるが、本来ギルドマスターとはその国の最高権力者に近い権力を持っている。それ故に人格と実力が備わっていなければなることは出来ず、特に六つの国の中心であるドラクンクルトのギルドマスターというのはさらに厳しい選定がされるのだ。だからこそ、国ごとにそれなりにルールが違っているために、下手な説明は出来ないということだった。
「わかりました」
そのビスタートの言葉に三人の中心にいる少女――椛が答える。
「まぁ、試験の日までは今から急げば余裕もあるだろう。滞在許可を得られたら観光なんかするのもいいだろうな」
「わ~、観光か~。楽しみだな~」
観光という言葉に椛の左後ろにいる少女――椋が目を輝かせる。
「いや、観光はついでだから、余裕がなければ後回しよ?」
「え~、だったら余裕を作って観光するも~ん」
「まぁ、それならいいでしょうね」
既に椋の中で観光は決まったようだ。しかし、椛自身も観光が楽しみではあるので時間があれば様々なところを回りたいと思っている。
「それじゃあ、頑張ってな。だが、お前たち三人なら大丈夫だろ。気を付けるのは道中の事故とかそんくらいかもな」
おどけた様子ビスタートは言う。
「それじゃあ、私たちはそろそろ行こうと思います」
「おう、行って来い」
「いってきま~す!」
三人はギルドを背にして歩き出す。
椋はビスタートたちの姿が視えなくなるまでは腕を振るつもりなのか終始手を振っている。
対して、もう一人の唯一の男である少年――悼也は無表情に歩いており、その内心はよくわからない。
『ひひっ! 楽しみだぜー、俺っち外の世界には興味ありありっだったんだ! 今からでもわくわくするぜ~』
とそこで、悼也の影が動き、忙しなく動き回る。
彼の契約した精霊である、影の精霊が悼也の影に入っているのだ。
この影の精霊は悼也とはまた逆の性格の様で、忙しないうえに自分の事に集中しだすと話を聞かない傾向がある。よって、基本は無視する。
「ほら、出来る限り急ぎましょう、明日までにはドラクンクルトについておきたいし、そのために急がないとね」
「あ、そうだね~。それじゃあ、走って行こう!」
「ちょっ、待ちなさい椋!」
「ほらほら、椛ちゃんも悼也君も早くぅ~!」
「もう、仕方ないわね」
「………………」
『ひひひっ、なかなか活発で面白い嬢ちゃんじゃねぇか。これならお前が気に入ってる理由もわかるきがするぜぇ~』
「黙っていろ」
「ん? 何か言ったの悼也?」
「なんでもない」
「そう? ほら、行きましょう。じゃないと椋に置いてかれるわよ!」
「そうだな」
「はやくはやく~!」
こうして、椛、椋、悼也は遂にピメンタを飛び出し、新たな国である、中央都市ドラクンクルトへと向かうのだった。
そしてその地で、彼らの第一目標を果たすべき、試験が行われる。
これにてこの章は終わりとなります。
次から新章、つまりは次の章を終えてある意味では本当のプロローグを終えるということです。
ここまで見ていただいている方々には本当に感謝しています。
この物語が終わるまで、どうかお付き合いいただければ私としても本望です。どうか、よろしくお願いします。
また、途中でいきなりの書き直しを行ったこと、読んでくださっている方に迷惑をかけたことをこの場で……申し訳ございませんでした! そして、ありがとうございました!
次は新章でお会いしましょう! ではでは~。




