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俺に出来る事

 オンカノにアクセスしてから数日たった日、八木が篠崎さんと一緒に俺の部屋を訪ねて来た。


「山田、今回の依頼は厄介だZE。相手はきちんと手続きを踏んである会社だし法外な料金設定もしていない。その上、夜のセキュリティーも警備会社が入っていてバッチリだYO−」


つまり手を出せば、こちらが犯罪者になると。


「会員の中で被害にあってる人はどれ位いるんだ?」


「こないだみたいな件はごくわずかだYO−。ユーザーも満足しているし、雪奈に調べってもらった幽霊少女も満足しているんだって」


八木、早くも呼び捨てか。


「下手に手をだしたら、こっちが悪者と」


「それだけじゃなくユーザーは全国にいるからSA−。組織でも対応しきれないZE−。仕事や部活の活力源になっているって感謝されているんだよNA−」


一人ずつに対応するのは現実的じゃないし、手を出すのは余計なお世話ってやつかもしれない。


「とりあえず何をしているのかきちんと探りたいから会社の場所を教えてくれ」


―――――――――


 オンカノを作っている会社は普通のオフィスビルに入っていた。

夜になるのを待って、隣のビルとの隙間に移動。


「プリム、ここの4階だ。様子を見てきてくれ」


「マスター、僕にお任せ下さい」


プリムがビルに侵入して10分くらい経っただろうか。


俺の頭上から騒がしい声が聞こえてきた。


「マ、マスター。助けて下さいー、あれには勝てません」


そのまま俺の背後に隠れるプリム。


「あら?妖精の小娘と僧侶なんて珍しい組み合わせね」


闇夜から浮かぶ様に現れたのは妖艶な微笑みを浮かべる女。

紫色の髪に豊満な肉体、匂うような色香。


「黒幕が、サキュバスとはね。色魔もネットで精を集めるとは思わなかったよ」


「私に魅了もされずに正体を見破るなんて中々やるわね。それでどうするの?私を退治するのかしら?」


前屈みになり、サキュバスわ色んな意味で俺を挑発してくる。


「グレムリンや霊を使役するとは随分と力を溜めたみたいだな。何が目的なんだ?」


「色魔の目的は昔から1つしかないわ。精を集める事だけよ。この国は欲望に溢れているし、愛に飢えて心が疲れている男が沢山いる。私達、色魔の天国ね」



サキュバスは男を誘惑して精を吸い取る。

力事態は決して強くはないが。


「マスター、早く真言を唱えてあいつをやっつけて下さい。あんなエロ女は妖精界の恥です」


「うるさい小娘だね。そんな小さい体じゃ自分のマスターを満足させれない癖に。使えない使い魔ね」


「う、うるさい。僕は身長14㎝で上から9㎝4㎝8㎝のミラクルボディの持ち主なんだぞ。マスターが朴念仁なだけだい」


「ふん、私のチャームも効かない相手に乳臭いあんたが魅了できる訳ないでしょ。それで私を倒すのかい?倒せないよね。倒したらオンカノユーザーが大変な事になるんだから」


やはりか。


「ユーザーにチャームを使ったのか。」


「この国の女は男に金、顔しか求めてない奴が多いからね。私達が癒してあげてるのよ、もらっている精は健康を害さない程度だから何も問題ないでしょ?それに私を倒したらユーザーが闇に墜ちるわよ」


サキュバスは余裕の笑みを浮かべている。


「マスター、どういう事ですか?」


「人間の心なんて弱いもんなんだよ。寂しければ偽物でもすがりたくなるし、それを糧に頑張ったりする。でもそれを突然失えば喪失感から闇に墜ちて違う魔に取り憑かれちまうんだよ」

「それに貴方達の事をオンカノの邪魔をする奴ってユーザーに伝えたらどうなるかしら?恨まれるわよ、ユーザーからも、ユーザーを頼っている幽霊の娘達からもね。彼女達は彼等を本当に愛しているし、彼等を元気づける事で徳を詰んでるのよ。どこに問題があるかしら?」


そんなのは不自然なんて言うのは青臭くて現実味がない。

何よりこいつの方がユーザーからは指示されるだろう。


「だから堂々と姿を現したのか。俺が手出しできないとふんで」


「悔しかったら、もう少しまともな世の中にするのね。近々はインキュバスによるオンカレもリリースするからよろしくね」


まただ、また俺は何も出来なかった。



――――――――――


 結局、佐山夏希と彼氏は別れたらしい。


そして


「山さーん、僕も山さんが作ったお料理食べたいな。リクエストはグラタン、約束だよね!!」


佐山さんがバイト先に来る回数が増えて


「お、お客様、バイト中は私語が禁じれているんでございますわよ」


「麗奈には関係ないじゃん。僕は山さんにお願いしているの」


「夏希、山っちは忙しいの」


なぜか麗奈が不機嫌になっている。

それと篠崎さんは八木と結縁を結んで、八木を助けながら徳を詰む事にした。


「あーあ、山田の奴ぜんぜん気付いてないNA−。まっ、周りがあれだけ賑やかな直ぐに元気になるよNE−」


「馨ちゃん、本当にこれで良かったの?」


何時の間にか八木は篠崎さんから馨ちゃんと呼ばれる様になっていた。


「俺達はヒーローじゃないからな。いくら後味が悪くても現実的な選択を選ばなきゃいけないのSA−。…組織がサュキュバスと手を組んだのも、暴走した霊や依存度が深くなりすぎたユーザーの情報を手に入れる為だよ。全員を救えなくても被害を増やさない為にもな。サキュバス達も新規ユーザー獲得を減らすので合意してくれた」


仕方がないと何回俺は諦めただろう。

これから何回諦めなきゃいけないんだろう。

マンガみたいに万事解決なんて俺には無理のかも知れない。

本当はすっきりしない事が多いと思う。

そんな思いで書きました

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