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悪堕ち魔法少女。世界に復讐を誓う~「魔女」と断罪され世界に全てを奪われた少女。敵だった"魔王少女"たちを復活させ人類への復讐を誓う~  作者: ケイ


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死者奏者③

そんなエレナの拍手。

そこに込められているのは、夕日に対する畏怖と歓迎の意。


それもそのはず。


本当に。魔法少女の時の如月 夕日は、エレナにとって衝撃的だったのだから。


エレナは頬をさする。

夕日に殴り飛ばされた時のこと。

その感触は未だ、エレナの心に深く刻まれている。


い、痛かったなアレ。

神秘の宿った拳? う、ううん。あれはもはや神の宿った拳だったわ。


引きつった笑顔で拍手を続ける、エレナ。

そんなエレナに、夕日は声をかけた。


闇を纏い。


「エレナちゃん」


「あのときはごめんね」


「その、痛かった?」


一瞬にして、エレナの眼前にその身を置きながら。


真紅の双眸。

その奥に蠢く闇。

それに見つめられ、エレナは固まる。


勿論、いい意味で。


「大丈夫だよ。これからよろしくね、夕日さん」


「うん」


互いに笑顔で握手を交わす、夕日とエレナ。

その二人の姿。

それにペルセフォネもまた、小さく頷いたのであった。


そしてペルセフォネの頷きは、承認であり、同時にはじまりを告げる合図。


静寂が、ほんのわずかに重くなる。


それまで柔らかかった空気が、ゆっくりと沈殿していく。

まるで見えない水の底に、三人が立っているかのようだった。


ペルセフォネが口を開く。


「切り離された場所」


その声音は穏やかだったが、明らかに油断を与えない冷たさを孕んでいた。


夕日の背に揺らめく闇。

それが呼応するようにわずかに膨らむ。


「ここは、既に“現実から切り離された場所"」


核の投下。

それにより、世界が現実よりなかったことにするであろう場所。


「奴等はどんな手段でもとってくる」


「どんな、手段でも。な」


人類の本質。

それを見てきたペルセフォネ。

その瞳に宿るは、蠢く漆黒。


エレナが肩をすくめる。


「こわーい」


「でも、所詮。人類でしょ? 如月夕日がこっち側についた時点で勝ち確でしょ?」


「たとえこの世界から拒絶されたとしてもね」


その言葉に、夕日の瞳がわずかに細まった。


世界に、拒絶された。

それはかつての如月 夕日そのもの。


ペルセフォネは夕日を見据える。


顔は笑っている。

しかし、その身は僅かに震えていた。


みんな拒絶された。

そして、嘲笑され、殺された。

世界の為に。色々な代償を払わされたにもかかわらず。


「如月夕日。おまえの力は、もはや“世界の願い”から生まれたものではない」


「…………」


「だから」


ペルセフォネは言い切る。


「如月 夕日」


「この世界に拒絶されたとしても、わたしたちがおまえの側に立ってやる」


続く、エレナ。


「だね。こんな世界に拒絶されてなにか困ることなんてある?」


「ないよね」


エレナは微笑む。


夕日は、自分の手のひらを見た。

そこにあるのは、かつて世界を守りたいと握っていた少女の手ではない。


願いも。

祈りも。

救いも。


もう、どこにも存在しない。


あるのは――


ただ在るだけの力。

理由なき力。

いや、人類を敵対するための力。


「来るぞ」


ペルセフォネが静かに告げる。


「この場所に」


その瞬間だった。


――ズン……


空間が、鈍く軋んだ。


地面ではない。

空でもない。


世界そのものが、どこかで“体重をかけられた”ような圧。


エレナの表情が一変する。


「来ちゃったね」


さっきまでの軽口は、完全に消えていた。


「夕日さん。歓迎会、第二ラウンド」


「相手はちょっとデカいのと」


「小さい奴」


闇の向こう側。


裂け目のように空間が歪み、そこから“何か”がこちらを覗き込んでいた。


「三匹か。しかも雌餓鬼じゃん」


小馬鹿にしたような少女の声。


形が定まらない。

輪郭が存在しない。


だが。


敵意だけが、明確だった。


ペルセフォネが小さく息を吐く。


「いくぞ、夕日。エレナ」


夕日は一歩前へ出た。


恐怖はない。


代わりにあったのは、奇妙なほどの静かな納得だった。


「そっか」


背の闇が、大きく翼の形を取る。

かつて空を飛べなかった少女の歪んだ到達点。


「じゃあ、ここからが。私なんだね」


真紅の瞳が、歪みの奥を射抜く。


闇が、呼吸するように膨張した。


エレナが、にやりと笑う。


「うん。それ、すごく“らしい”よ」


次の瞬間。


境界の裏側で、

戦闘が始まった。


世界に居場所を奪われた力と、居場所そのものをなくしてしまった少女たち。


その二つの、静かで、容赦のない衝突が。

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