ペルセフォネ①
「何様のつもりだ。如月 夕日」
そう声を発し、ペルセフォネは夕日を睨む。
その表情には感謝の気持ちは微塵もない。
そんなペルセフォネに、夕日は手のひらを差しのべる。
「んーとね、夕日は悪者になったの。だから貴女とお友だちになりたいな」
「お友だちだと?」
「うん」
笑顔の夕日。
しかし、ペルセフォネの目にはその夕日の笑みがどこか寂しそうにも見えてしまう。
「……」
じっと、夕日を見つめるペルセフォネ。
そして、おもむろに腰から剣を抜く。
そしてーー
「他の魔法少女共はどこに行った?」
そう問いを発し、夕日へと剣先を向ける。
その問いに、夕日は答えた。
敢えて笑みを崩さずに、そのちいさな胸にわだかまる痛みに手をあてながら。
「みんなは。もういない」
「居ない? 魔法少女としての使命を終えたということか?」
「ううん。この世界にもういないの」
空を見上げ、ちいさく震える夕日。
「魔女」と烙印をおされ、弄ばれ。
人々に嗤われながら、灰となった如月 夕日の親友たち。
"「夕日が帰ってきたらパーティーしようぜ」"
"「さんせーだいさんせー」"
"「ケーキは2ホール」"
"「夕日の食い意地だと3ホールが妥当かな?」"
"「えー……夕日、そんなに食いしん坊じゃないよ」"
"「この前。一人で2ホールたいらげておいてそれはない」"
"「あ、あの時は魔法少女としての力の消費がはげしくて。は、ははは」"
世界を救い。
魔法世界で交わした最後の馴れ合い。
それを思いだし、俯き震える夕日。
「貴女たちから救った世界に罵られ、馬鹿にされ。みんな、みんな。ころされたの」
涙を堪え、視線をペルセフォネに戻す夕日。
その唇は、強く強く噛み締められていた。
「だから、ね。夕日は復讐したいの」
差し出した自分の手のひら。
それを握りしめ、夕日は言いきる。
「この世界に復讐したい。人間たちを根絶やしにしたい。いい人悪い人なんて関係ない。それが夕日の、みんなの為にできることだから」
如月 夕日の思い。
そのかつて己の敵だった魔法少女の復讐の思い。
それを聞き終え、ペルセフォネはゆっくりと剣を下ろす。
そんなペルセフォネの胸の内。
そこに宿るのはかつて自分を葬った"魔法少女"に対する怒りではない。
宿ったのは、この世界の。いや、この世界に住まう人間に対する諦観の思いだった。
命を賭して戦った存在。
それ対する、最悪の悪意に満ちた見返り。
そして、ペルセフォネは言葉を紡ぐ。
「如月 夕日」
「……」
剣を収め、ペルセフォネは夕日の握られた手のひらに軽く触れる。
夕日はそんなペルセフォネの思いを汲み、なにも声をかけることなくーー
ちいさな手のひらで、ペルセフォネの冷たい手のひらを優しく握りしめた。




