危険な賭け
魔王城。
魔王と王子が退出。
一人寂しく脱出の機会を伺う。
「魔王様どうぞお許しください」
「アルカンダラ王子とこの辺りの自然を満喫したいです」
「もう限界です。外の空気を吸って気分転換がしたいです」
うーん。まずまずかな。
後はタイミングと魔王の機嫌と演技力にかかっている。
情けないけれど魔王に取り入るなり王子を味方に付けるなりしないと脱出なんて夢のまた夢。
さあこれくらいでいいかしら。もう一度繰り返す。
自分ができることは限られている。できれば自力で脱出したい。
恐怖体験を克服し再びやる気に火をつける。
誰の手も借りないでこの魔王城から抜け出したい。
もし成功したら…… さぞ魔王たちは悔しがるでしょうね。姿が思い浮かぶようだわ。
そうよ。私ならできる! ド・ラボーなんだから。諦めたくない!
それにしても太郎は元気かな。
ここを抜けだしたらすぐに会いに行かなくちゃ。
トントン
トントン
お茶が運ばれてきた。
三人揃って優雅にティータイム。
「さあステーテル」
「きゃあ! 」
カップをひっくり返してしまう。
「まったく何をやってる! 」
魔王の叱責が飛ぶ。
「申し訳ありません」
ボーっとしていたとは言えもう少し慎重に行動しなくちゃ。
気を引き締めて。さあここからが勝負。
「ありがとうございます」
「どうしたやけに素直だな。もうあきらめたか? 」
「いえ…… それよりもこれだけ晴れているのです。どうでしょう。お庭で至福のひと時を」
緊張のあまり目が泳ぐ。
今のところ間違っていない。これで引っかかるはず。
「パパ…… 」
「何を言い出すんだ王子! もう少しの辛抱じゃないか。あと少しでタイムリミット。その後でゆっくりと楽しめばいい。それにもう夕方。決していい天気とは言えない」
魔王の言い分はもっとも。しかし王子は不満そうに横を向く。
いつの間にか親子に見えない溝が生まれる。
あら? もしかして……
口では厳しくしつけているようで王子には弱いと見える。
これが魔王の弱点?
魔王は留まるように再度命じる。
揺さぶり作戦は一定の成果を得たものの失敗に終わった。
外
最後の望みを託しての話し合い。
「ガムはどうやって中へ入ったんだっけ? 」
「さっきから言ってるでしょう! 空飛ぶ馬車に乗っていたら心地よい音が流れたのでついつい歌って…… ジャスラに襲撃を受け起きた時にはもう城の中」
「これは参考にならないな。ドッドさんはどう思う? 」
「ジャスラか。俺は見たことないんだがどんな感じだ? 」
ドッドが興味を示す。
この中でジャスラを見たのはガムと生き残りの男。
「この辺りで見たがそれはそれは…… 」
「ガムは? 」
「空飛ぶ馬車襲撃で二回目。とにかくしつこい。音に反応するみたい。決して目は良くなく臭いにも弱い。もし隠れることができれば逃げることも可能。でもロックオンされたらもうどうにもならない。他に注意を逸らすしか手はないけどまあ難しいでしょうね」
「そうか。まあ弱点を知ったところで意味はないがな」
ドッドは切り捨てる。
「確かにそうだけど…… ドッドが聞いたんでしょう? 」
「俺だっけ? 」
「ええ忘れたの? ジャスラがどんな化け物か知りたがっていたから」
「そうだっけか…… ははは! 」
ドッドが笑い飛ばす。
「それで何でそのジャスラはお前たちを襲ったりしたんだ? 」
「魔王城にご招待する為でしょうね」
「いや、そうじゃなくてよ…… 何かに反応したんだろ? 」
「そうそう。音に反応したと思うの」
「何? 音ってか? 」
「もう何度もそう言ってるでしょう! 」
ドッドには難しいらしい。
「うーん。うーん? 」
「どうしたのドッド? 真剣な顔しちゃって」
「なあ音に反応したってなら同じように歌うってのはどうだ? 」
もう打つ手がない。どんなことでも試す。それがドッドのやり方。
「もうどうせ他に方法が無いんだ。試してみようぜ」
ドッドはついに禁断の手に出る。
これは一種の賭け。
ジャスラは果たして現れるのか?
続く




