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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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27話:雑魚モブとその他に用はない

 風に吹かれた木々が揺れ、ざわざわと音を立てて擦り合わす葉。その光景はまるで、訪問者を誘っている様に優しく揺れている。それを眺めていると、ボーッと意識が遠のき、フラフラと中へ入っていってしまいそうな程に。


「――アキラ、大丈夫か?」


 不意に名前を呼ばれ、少年――アキラはハッと我に返り、目をぱちぱちさせながら声のした方を見上げる。


「リゥ、くん……?」


「ああ、俺だよ。大丈夫か?」


「ごめん、なんかボーッとしちゃって……」


「森の草木に放心の術式が編まれているみたいだな。草木や花の香りに乗せてるんだろう」


 リゥがボーッとしていたアキラの手を握り、その後ろからゲンが話しかける。

 普段ならレイが話すような内容だが、今ここにレイはいない。なぜなら――、


「これも、『迷い森』の正体かもな」


 そう。今リゥたちがいるのは迷い森の入口。時は、迷い森上陸の当日に当たる。


 ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀ ◀


 時は少し遡り、迷い森上陸の前日。その早朝だ。

 上陸班の三十二人に加え、レイやクロも宮廷の前に集合していた。


「――あぁきぃらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


「あっ、リゥく……はぶっ」


「会いたかったよぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!!」


「わ、分かったから! 分かったからちょっと力弱めて!」


 数日ぶりの再会に、思わずいつも以上の力を込めてアキラに抱きつくリゥ。いつにも増して強いリゥの力に苦しむアキラも、離してとは言わない。


「うぁぁぁぁぁ……あきらぁ……」


 そのまま頬擦りをするリゥは、少しだけ涙ぐんでいる。

 たった数日別れただけで目に涙を浮かべるリゥと、恥ずかしそうにしながらも満更ではない様子のアキラ。そんな二人に、少し離れたところからレイたちが笑いながら近付く。


「ふっ、別れる時に泣いてたのはアキラくんなのに、今日はリゥが泣いているんだね」


「お前ら二人、マジでわけ分っかンねぇな。こっちの方が泣きたくなったってのに……」


「毎朝「リゥくんは?」って聞いてたからな」


「あ、ちょっと! いや、違うの。眠かったから……そう、眠かったからだから!」


 サラッと言われたくなかったことを暴露されるアキラは、首を振りながら必死に否定。アキラはあくまでも寝ぼけてたからと言い張るが、そんな否定が肯定されるはずもなくやはりリゥにからかわれる。


「そっかそっかー! 俺がいなくて寂しかったんだなぁ……? いいよ、今日はずっと一緒にいよーなー!」


「それは! ――別に、まぁ、良いけど……」


 たった数日が相当堪えたのか、アキラにしては珍しく否定はしない。やはり素直ではないが。


 と、そんなやり取りをしていると周囲が急に静まり返る。そして周囲にいた人たちの視線が、全て一定方向に向けられていた。


「――愈々明日は迷い森上陸の当日だ。そして今回が全体で行う最初で最後の顔合わせ。向こうに行ってから戸惑わないように、必ず全員と言葉を交わしておけ」


 そう言って上陸班に指示を出すのは、聖陽郷の統制を行う立場の主郷であり、今回の総指揮官を務めるゼンジだ。

 リゥとゼンジの仲は相変わらず険悪で、ゼンジを見るリゥの視線はかなり鋭い。というか、ほとんど見ようともしない。

 しかし、リゥはそれでも四天王の一人。今回の作戦ではリーダーも務めるため、その辺りの節度は持っている。直ぐに班員を集め、ミーティングのようなものを始める。


「とりあえずは自己紹介からだな。俺は迷い森の上陸で班長を務める『四天王』のリゥだ。認識補助の術式もあるし大丈夫だとは思うけど、よろしくな」


「ンでもって俺がゴウだ。よろしくな! ――あ、そンでこっちはゲンだ」


「おい、何故俺のことまでお前が紹介する?」


「え、だってお前あンまりそういうの向かないじゃン」


「だからってな……まぁいい。よろしく頼む」


 まずは班長を務める四天王の三人……ゲンの紹介だけゴウがやってしまったが、とりあえずは三人が先に挨拶をする。

 班長が三人というのは珍しい形だが、これは上陸班が三つに分けられる可能性があるという事だ。

 班長が三人いれば、班を三つに分けることが可能で、戦力を分散させる時に偏りが出ないというメリットがある。


「そして私が『場を司る天使』のシロです。一応副班長を務めさせていただきますが、大凡はみなさんの援護に回ると思いますので、何かあれば報告お願いします」


 天使であるシロの役割は副班長。しかし、本来の役割は連携を保つための繋ぎのような役割を受け持つ。

 例えば、班が複数個に別れた場合の連絡係などに徹し、常に鎖のような役割をする感じだ。


「俺様は『十二人衆』の一人、『火』のレツ! ゴウさんには及ばないけど、高火力の火を扱うぜ!」


 橙色の短髪を逆立てた元気の良い少年。同じく火を扱うゴウのように、明るく派手な服を着ていて、火を意識したその服は、意外とお洒落な格好だ。


「僕は『水』のスイ。レツみたいな高火力は苦手だけど、水はある程度自由に扱えるよ」


 最初の会議で一度発言をているスイ。四天王の中ではレイに似た感じのクールな少年だ。青髪を軽く伸ばし、落ち着いた格好の服装。レツとは別方向のお洒落だ。


「ボクは『風』のフウです。小回りの利く風や、威力の高い暴風も扱えます」


 四天王よりも天使に近い感じで、尚且つクールな雰囲気を持つフウ。エメラルドグリーンに似た色のサラサラな髪の毛をたなびかせるその姿は、まさに風を連想させる。


「オイラは『雷』のライなー! 雷だけじゃなくて、電気は大体扱えるのなー!」


 ライは今までにいないタイプの天真爛漫な少年だ。幼さ故の無邪気さで、はしゃぐように手元をビリビリさせる。黄色と黒の髪の毛はワックスを塗ったように固まっていて、フウとは対照的だ。


「俺は『音』のサド! 爆音は勿論だけど、消音も出来るから、隠密行動とかも任せてよ! ザーッと行ってバーッと帰ってくる!」


 隠密とは言い難いバッサリとした少年。ザーとバーで隠密になるのかと突っ込みたくなるが、たしかに無駄な雑音は立てていない。動きに無駄が少なく、話し方やオーラを除けば、フウよりも静かだ。


「んっと、イオなのね! 『毒』使うのね! お兄にはちゅーどくせーが、高いって言われんのねー!」


 ライとサドに続き、またしても少し癖の強い人物。扱うものは毒であり、髪や服などはかなり禍々しい。が、それには見合わない幼さを放つ少年。顔つきはかなり女子っぽいが、十二人衆は男子で固められているので一応は男子だ。


「ええと、自分は『自然』のネイです。草木や花などの自然と認識できるものはおおよそ自由に扱えますです」


 そう言って可愛く敬礼をするネイ。先程まで続いていた三人とは違い、ほっこりするような癒し系だ。綺麗な白色の髪をふわっとさせてニコッと笑っている。


「んー? やっと我でしなぁ? 『虫』のセトでしよ! あ、ちょちょー! 待ってやぁー!」


 これまでの中で一番自由そうな無邪気な男子。自分の番を待っていた風な様子だったが、目の前に蝶々のような虫が飛んできた瞬間にそっちへ行ってしまう。


「私は『氷』のクラだ。氷を直接撃つ攻撃はもちろん、生成した氷を色々な形に変えて戦ったりもする」


 若干低めの男らしさをもつ声で、氷の剣を握るクラ。外見ではあまり筋肉は見えないが、話の内容からすれば魔法にも肉弾戦にも特化した戦型であることが窺える。技術面で相手を翻弄する、リゥに似たタイプだ。


「オレは『地』のイル。地面と判断できる場所なら隆起でも沈降でも液状化でもなんだって好きにできるぜ」


 若干不良っぽさのある今までにいなかった雰囲気の少年。言動はかなり落ち着いているが、目が鋭く体もかなり鍛えられている。地形を好きなように変えられるイルが肉弾戦特化なら、かなりの戦力になる。


「ぼくは『重力』を自由に操れるグラ! 人にかかる重力も物にかかる重力も自由自在だよ!」


 イル程ではないが、こちらもかなり体を鍛えてある少年。ガタイはかなりガッチリとしていて、確実にアキラよりも重いはずだが、そんな体はふわふわと浮いている。


「んでもって、オラが最後の十二人衆! 『念力』に特化したネスやよー。リゥ兄みたいに元の力が離れすぎてると効果は薄いけど、同じくらいの人なら自由に操れるよ」


 そう言いながら、蝶々のような虫にフラフラとついて行ってしまったセトに手のひらを向けるネス。鮮やかな薄紫の髪の毛をたなびかせるネスは、見えない糸で繋いだかのようにセトの体をズルズルとこっちへ引き寄せる。同じ十二人衆にもこれだけ通じるネスの念力は、意外と汎用性が高い。


 かなり個性の強い集団だが、全員がリゥに選ばれた実力者揃い。まさに少数精鋭の戦闘部隊と言ったところだ。


 その後、特戦隊と特援隊の自己紹介もスムーズに終わり、レイやクロに見送られて迷い森へ向かう。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


 そんなやり取りを経て、リゥ率いる『迷い森上陸班』は作戦を実行に移そうとしていた。


 邪陰郷との大戦を前にして、特戦隊や特援隊の中でも上位隊である第一、第二特戦隊と第一特援隊は完全武装であり、鎧や各々の武器を所持して準備万端。

 しかし、それとは対照的に、四天王の三人と十二人衆、シロ、アキラは至って普通の格好。強いていえば、リゥが今までにない格好をしているのと、アキラの服がリゥから特別に用意されたものというだけだ。

 そんな完全武装とは程遠い格好の集団だが、彼らの戦意は十二分。特にリゥからは、並々ならぬオーラが放たれているようにも感じる。


「――向こうから出迎えに来てくれたみたいだな」


「おう? なンだよ、探す手間が省けて何よりだぜ」


 森の奥を見てゲンが静かに呟き、それを聞いた全員の視線が森の奥へと向けられる。

 そんなリゥたちの視線の先に見えるのは、遠くから土煙を上げてものすごい勢いで走ってくる数百人の集団。その集団を見て、全員の体に緊張が走り、リゥはアキラをそっと近くに寄せる。


「いよーし……」


 緊張が走った集団の中で、ゴウだけが一歩、集団の前に出る。そして前に出たゴウは軽く笑い、指や首をポキポキと鳴らしながらそのまま前進。軽く体を解すと、そのまま瞬時に臨戦態勢に入った。


「――先手必勝ッ! 炎烈アクティビティフレイム!」


 右腕を遠くの敵陣へと向けて伸ばし、手のひらを森の奥へと向けるゴウ。

 ――瞬間、特大の炎が刃の如く森の中を突き進み、遠くに見えていた敵陣を貫く。


 炎の刃が邪陰郷の軍団に直撃し、そのまま爆音ともに爆ぜると、緑の森は一瞬で紅に染まった。


 ――ゴウの炎撃を以て、文字通り戦いの火蓋が切られる。


 ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶ ▶


「おい、テメェら! まだ到着してねぇのに攻撃してくるなんてどういう神経してんだ! あぁ!?」

「普通俺らがテメェらの前まで来て、そこから戦闘開始だろうが!」

「聖陽郷なんてところにいるテメェらがそんな卑劣なことしていいと思ってんのか!?」


 青筋を立てながら唾をまき散らして叫ぶのは、邪陰郷の集団にいたであろう男たちだ。

 すると訳の分からない怒りをぶちまける男たちにリゥは嘆息し、彼らの前にゆっくりと立ちはだかる。


「卑劣も何も、俺らの目的は邪陰郷の殲滅だ。お前らみたいに本拠地の前を彷徨いてるだけの名前すら紹介されないような雑魚モブA,B,Cとその他多数に用はねぇんだよ」


 そう言って、リゥは持ち前の煽り口調で邪陰郷を挑発。嘲笑うように見下し、これでもかと言うほど嫌な顔をする。

 気が抜ける上に、この手のネタはリゥとアキラ、即ち龍翔と晟にしか分からない。


「んだと、テメェ! なら名乗ってやろうじゃねぇか! 俺の名前はなぁ……」


「はいドーン!」


 邪陰郷の()が己の名前を名乗ろうとした瞬間、リゥはそんな男の顔面に強烈な跳び膝蹴りを叩き込む。そして透かさず()()()にも蹴りを放つ。


「ここでお前らに名乗られたら俺の異世界ネタの効果が掻き消えるだろ、ふつーに」


 そう言って、リゥはここへ来て初めて異世界ネタをぶち込む。

 正直、TPOを弁えろと言いたくなるほどのタイミングの悪さだが、そんなことも言っていられない。即座に全員が戦闘態勢に戻り、先ずは雑魚モブ(多数)の駆除に取り掛かる。

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