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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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6話:四天王の器

「――時にリゥ。もう身体は戻しているのか? とても戻っているようには思えないのだが……」


「戻してないぜ、全然」


「ぜ、全然って……」


 ゲアノの店を出て、最高の優越と満足感に浸っていたリゥに話しかけるのは頭脳派四天王、レイだ。

 そしてレイの質問に、リゥは何食わぬ顔で否定する。


「いやいやいや、だって時間ないし」


「確かにそうだけど、早めに戻した方がいいんじゃないか?」


 何かを思案しているようなレイに対し、リゥは全く気にしていない様子。しかしそんな悠長でいるのはリゥだけで、他の四天王と天使の面々は皆眉を顰めていた。


「え、なに? どうしたの?」


 四天王と天使が動揺する中、一人だけキョトンとしているアキラ。そのキョトンとした表情はまさに天使だが、今はそれどころではない――様だとレイたちの反応から察し、リゥはすぐに説明に入った。


「あー、身体を戻してないんだよ。俺は元々四天王の身だろ? 四天王って存在は、他の存在とは比べ物にならないほど莫大な力を持っている。だから、災害地や紛争地域、犯罪地帯とかでの仕事を一任されてるんだけど、分かるか……?」


「え? あ、んー……無理!」


「がっ、くふ……」


「え、えぇ!?」


 若干は考えたものの、結局分からずに清々しく笑い飛ばすアキラ。そんなアキラの姿に、何故かリゥは急に気を失ったように倒れ込む。


「――はぁ、何をやってるんだか……まったく。リゥもこの状態だし、この際だから少し詳しく話そうか。リゥより分かりやすく、アキラくんにも分かるようにね」


 そう言って口を開くのは、今ここにいる中で一番落ち着いているレイだ。流石は頭脳派四天王といったところで、慌てる様子もなくアキラに向かって優しく微笑む。


「まず、この世の世界のどんな存在にでも力はある。そしてその中でも僕たちを含めた生物が持つ力を『クラフト』と言うんだよ。まぁそれで、四天王である僕たちは他とは比べ物にならないほどの莫大なクラフトを保有している。その為にさっきリゥが言ったような危険地域での仕事を一任されることがあるんだ。ここまでは分かった?」


 アキラは、こちら側の世界のことをほとんど知らない。だからそれだけに、こちらの世界で知識を得ることを心から喜んでいる。初日からずっとメモを手放しておらず、今もしっかり書き留めている。

 そんなアキラはレイの分かりやすい説明をコクコクと頷きながらまるで講義のように聞いている。


「それで、四天王の任務は危険地域での仕事が多い。しかも最近はまた別の問題も出てきてる。だから今の身体では、リゥは元の仕事が出来ない。今は丁度仕事がないから自由に出来ているけど、本来はそうもいかない。だから今のうちに身体を戻しておいて、有事の際に備えておく必要があるんだ」


「身体を戻すって言うのは、リゥくんが死んじゃう前の状態に戻すってことですか? 体を変えたり、顔とか、そういうのも全部……?」


 レイの言う『身体を戻す』という言葉。それは、アキラにとっても他人事ではない。

 今までずっと過ごしてきた『龍翔』の体。その体が全くの別人になってしまった時、アキラはそれを受け入れられるのか。同一人物と分かっていても、認められるのか。

 それは、本人にすら分からない。だから、しっかり聞いておく必要がある。


「いや、それは違うよ。良くも悪くも、死者の体を前の体に戻すほどの技術はない。クローンを作ることは可能だが、それはまた別の話だからね。身体を戻すというのは、元の核を再び与えるというようなものだ」


「核……? それって、身体とはまた違うものなんですか?」


「ああ。この世界の生物の体の中には、クラフトと呼ばれるその生命体の活動源になるエネルギーが備わっているんだ。そしてそのクラフトというのは、元々その人その人で最大値が決まっている。その最大値は核の大きさに左右され、核が大きければ、それだけ莫大なクラフトを保有できる。一日静かに生活するために必要なクラフトが百だとして、核がクラフトを保有できる最大値は、平均で三百から四百くらいだね。とはいえ、大体の人の核がクラフトを満たしてはいない。大体二百から三百くらいしか保有していないんだよね」


 核の中にクラフト。車のガソリンのようなものか、あるいは携帯電話の充電のようなものだろう。百パーセント溜まる携帯電話を常に七十パーセント程しか溜めておらず、一日で四十パーセント程しか使わない感じだろう。


「そして普通の人の核が四百、少しハイスペックな人が五百くらいまで保有しているとしたら、僕たち四天王のクラフト保有量は万や億では済まない。兆、京、垓……それを測ることは不可能だけれど、今回は比較にならないと思ってくれればいいよ。そして、それだけの力を保有する為には、今のリゥの核では小さすぎる。基本は他の人よりも動けているようだから最大値は四百以上はあるだろうけど、それでも今のままでは少なすぎる。今はあのブレスレットで常に満たしている状態で、普通の人よりはさらにスペックが高くなっているけど。それでもあのままだと、四天王としての仕事は到底こなせない。だから、今の核に加え元の核をもう一度与える必要がある。それを身体と表現した感じだね」


 レイの説明を受けて、改めて四天王が計り知れないほどの強さであることが分かる。理解しきることは出来なくとも、どれほどのものなのか、それが想像に収まりきらないということが分かればそれはもうわかったも同然。四天王という存在は、とにかく強すぎるのだ。


「つまり、四天王としての仕事? を、果たすために、元々前世のリゥくんにあった核を戻すってこと……? それで、それが今まだ出来てないから焦ってたってことですか?」


「うん、そうだね。特に、四天王になれる素質を持つ者とそうでない者とでは天と地以上の差がある。だから早めにやっておいてもらいたかったのだけど……」


 そう言って、レイは呆れた顔を足元で伸びているリゥに向けてため息をつく。

 そしてそのまま、リゥの上に手のひらを翳した瞬間――、


「――――――げばぼぼぼがばだざは!? ゲホッゲホッ、オォエ……くっ、かはっ」


 突如としてレイの手のひらから勢いよく放出された大量の水。リゥの顔面目掛けて放出されたその水は、レイの手のひらで渦を巻きそのまま勢いよく直線的に放射されている。


「な、なんだよ! 死ぬかと思ったわ!」


「君がなかなか起きてくれないから起こしたんだよ」


「にしても他にやり方あっただろ!」


 水を顔面に打ち付けられ、溺れながら目覚めるという地獄。無防備なだけに水を大量に飲み込んでしまい、リゥは涙目になりながら噎せる。


「まぁリゥが寝てる間にアキラくんには話をしておいた。君のことも含めてね」


「そっか。それはサンキュ」


「ンーで、いつ行くんだよ? ただでさえかかる時間が分からないンだから、これ以上遅くなるとやばいぜ?」


 リゥとレイの会話の中、今まで沈黙を続けていたゴウが入る。無口なゲンや天使という立場の二人はともかく、ゴウが静かなのは珍しかった。単純に話の途中だったからなのだろうか。


「迷ってる時間はない。今だ」


 さらにここに来て、無口なゲンまでが沈黙を破る。そしてその言葉にクロとシロの二人も一緒に頷く。


「え、な、なんでそんなに? 別に俺がいなくても回せてたんだし、そんなに焦らなくても……うぉばらっ!?」


 今すぐを主張するゲンたちの様子に疑問を抱くリゥだが、その疑問を言い切る時間さえ与えられない。

 いつの間にか後ろに回っていたゲンが綺麗にローリングソバットを決め、その回し蹴りを喰らったリゥは相棒のヴォルフの上に吹っ飛ばされた。

 そしてその直後にゴウがアキラをヴォルフの上まで運び、二人を乗せたヴォルフの足にレイが手を翳す。


「ヴォルフには風除けの術式を編んだ。急ぎの術式だからそう長くは持たない。術式が切れる前に急いで二人を()()まで運んでくれ」


 そんな指示を受け、ヴォルフは一気に山を掛け降りる。そして山を降りきってから、これまで以上のスピードでダッシュ。速さにして、時速は約二百キロほどだろうか。

 レイが編んだ術式がなければ、普通の人間なら風にあたり確実に落ちていたであろう。

 そしてひたすらにヴォルフは走り、そのあとに続いて他の五人も次々に後を追う。

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