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二度目の四天王ライフ  作者: 羅弾浮我
第一作:〜異世界への突入、『聖陽郷』での波乱〜
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7話:進展の決断

「――ふぅ、着いたようだね」


「ふぅ、着いたようだね。じゃねぇよ! 何だ急に! この身体じゃ無理ができないって分かってるだろ!?」


 目的地に到着しすました顔で声をかけるレイに対し、急に走り出されたリゥは全く納得がいっていない。何故急いでいるのかも分からない上に強行と呼ぶに等しい今回の行動に、青筋を立てて怒る。


「分かっているよ。だからこそ風除けの術式も編んだし、ヴォルフくんもスピードをかなり落としていたじゃないか。ヴォルフくんが本気で走ったら、あんな弱い術式なんて無視してしまうからね」


「ぐっ……まぁ、確かにそうだな。俺のヴォルフは賢い。さすが俺の相棒だ。それでも、あそこまで急ぐ必要あったのか?」


「――その話については後で話す。今はなるべく早く核を戻して欲しいんだ」


 リゥの質問に、レイを含めた四天王や天使は苦い顔をする。

 性格的にあっさりとしているゴウや感情を表に出すことの少ないゲンまでもが同じく眉を顰めるところを見ると、リゥもそれ以上は何も言えなかった。


「まぁ、そこまで言うなら俺も戻すけど……そもそも俺の核はあるのか? 俺は時空の歪みに体を落とした。あそこから核を拾い上げるのは難しいと思うんだが」


「その心配はいらない。リゥが落ちてしまってから直ぐにあの場所は直った。リゥが最後の最後で託すように全ての力を振り絞ってくれたお陰だ。その後にシロが何とか探してくれたよ」


 リゥの最後の踏ん張りで何とか直った場所を、『場を司る天使』であるシロがその場の開拓をし、やっとの思いで探し出したリゥの核。

 時空の歪みは、この世でもトップクラスの力を持つ障害だ。落ちれば体の原型など保つことはできない。そんな空間では、核だけを拾い上げるので精一杯だったようだ。――と言うよりも、その時は既にリゥの体など肉片すら残さずにすり潰されていただろう。


 因みに、核というのは体を構成するための元となる物。体を作り、保ち、成長させる核は、たとえ体が無くなったとしてもそうそう消えることは無い。それだけのエネルギーが核というものには存在するのだ。


「そしてその核は、核が認める存在に戻すことが出来る。大体の場合、それが本人なら戻すことは可能だ。しかしクローンではそれを成し得ることは出来ない」


「だから今の俺なら戻せるってことか。確かに前世の記憶が取り戻せた俺なら、俺の前世がリゥであることは間違いない。問題は、認めてくれるかどうか、だな」


 まだ確実に戻せると決まったわけではない。そんな緊張感が走る中、七人はゆっくりと歩を進める。


「ここが、この聖陽郷最大の研究施設(ラボ)だ。核もここで保存されている」


「――よし、行くか」


 そう言ってリゥたち一向はラボの中に入っていく。


「おや、これはこれはお珍しい皆様がお揃いで……って、リゥ様!? リゥなの様ですか!?」


「あ、あぁそうだ。それで……」


「博士! シム博士! リゥ様が――!」


 リゥのことを見た瞬間、大慌てで声を大きくする女性。大方、この施設の中にいるということは研究員なのだろう。

 そんな研究員の反応に少し驚きつつも、早速本題に入ろうとしたリゥの言葉は打ち切られる。研究員と思われる女性は、リゥであることを確認するや否やその後の話を聞かぬまま誰かを探すように走り去ってしまった。


「――え?」


 呆気に取られるリゥは、全く状況が理解できない。

 訳の分からない状況にリゥは口をあんぐりと開け、そのまま引き攣った顔で苦笑い。そして少しの時間呆気に取られていると、今度は誰かを連れて再びその研究員が戻ってくる。


「――おぉ! これはこれは! リゥ様ではありませんか! お戻りになられたのですね!? 覚えていますでしょうか! シムです! 研究長のシムです!」


「シム……シム……シム……? あぁ! シム博士! 久しぶりだなぁ、シム博士か! しばらく見ない間にかなり変わったんだな! 全くわからなかったぜー!」


「まぁ、最後に会ったのはもう十年以上も昔ですからね」


 研究員の一人に手を引かれ、リゥと目が合った瞬間に走ってリゥに近付いて来たシムと名乗る老人。そしてリゥの目の前に来たシムは、握った手を激しく上下に揺らす。

 そんなシムをリゥも少し記憶を遡らせて思い出し、旧友の如く肩を叩いて万遍の笑みを浮かべた。


 そしてそんな二人の会話が一頻り終わると、コホンと咳払いしてレイが二人の間に割って入る。


「リゥも知ってるこちらのシム博士が、リゥの核の管理をして下さっている。リゥが戻った場合のことは全てシム博士が一任されているよ。本人の希望もあってね」


「いやぁ、リゥ様には昔から色々とお世話になっていましたので。リゥ様がお亡くなりになられたと聞いてショックを受け、しかし何かできることがあればと今回申し出たのです」


「なるほどな、そうだったのか。いや、ありがとう! シム博士ほどに信頼をおける人はいない。シム博士なら安心して任せられる」


 レイの紹介で、背を低くして頭をペコペコと下げるシム。そしてそんなシムを、リゥもかなり信頼しているようだ。


「シム博士もまた、国宝の一人だよ。『科学者国宝』と言って、科学者の中でも随一の知識と技術を誇るお方だ」


 そう言って説明する視線の先にいるのは、研究施設についてからずっとあたふたしていたアキラだ。

 この施設ではずっとリゥとレイが話を進めていて、アキラの割り込む余地はなかった。そのために今まで口を挟まずただついてきていただけのアキラだが、それを見たレイが疑問だらけのアキラの心の中を読んだかのように説明をしてくれる。


「おや、そちらのお方は……初めてお会いしますかな? 私はシムと申します。ご紹介に預かりました通り、一応『科学者国宝』の一人です」


「あ、はい! 俺はアキラです! えっと、その……」


「アキラは俺と一緒に向こうの世界から来たんだ。四天王――ってゆーか基本的には俺の補佐役として『准天使』の称号を得てる。見た目からして天使そのものだろ?」


 シムの自己紹介に名前だけは名乗ったが、それに続く言葉がアキラには出ない。それを見たリゥがすかさずしっかりとフォローをするが、如何せん余計な言葉が多い。謎にドヤ顔しているリゥの笑みに対し、シムは完全に苦笑いだ。


「え、えぇ。そうですね……『准天使』ですか」


 そんなリゥの説明に少し戸惑いつつも、シムは話を進める。


「しかし、今回皆様がお揃いで来たということはやはり目的は核でしょう? そろそろお話も一旦終わりにして、まずは特別室の方に移りましょう」


「あ、あぁ。忘れるところだった。行こう」


 そう言って、シムの案内で特別室と呼ばれる場所に向かうリゥたち一行。この研究施設ではかなり多くの人が働いているらしい。施設もかなり大きく、色々な機械などが所狭しと置かれている。


「着きました。ここが特別室です。リゥ様のために造らせていただきました。どうぞ、お入りください」


 そう言って特別室の中に入ると、そこには巨大なカプセルが五つほど置かれている。そのカプセルの中には椅子のようなものが置かれていて、カプセルの上には何やら小さなカプセルも置かれている――若干異様な光景だ。


「こちらが、今回作り上げたものです。核が今のリゥ様を認めてくだされば、上のカプセルに核を置き、そこから神経を伝わせて少しずつ核を体に馴染ませて行きます」


「なるほどな。んで、その時間はどのくらいかかるんだ?」


「そうですね。これほど大きな存在の核ですし、まだ核が認めてくれるかどうかも分かりません。なのでなんとも言えませんが、早くても一日はかかるでしょう」


「一日!? そんなにかかるのか!?」


「え、ええ。そうですね。まだこの実験も実際には執り行われていませんし、初めてで四天王の核となるとやはりそれくらいは……」


 シムの放った予想外の時間に、リゥを含めそこにいる全員が目を丸くする。


「一日もアキラと会えないのか……うう、それは辛い……」


「あ、あの、それなんですがね。実は、アキラくんにも施術をと思うのですが、どうでしょうか?」


「――は?」


 突然のシムの言葉。それは、アキラにも施術を行うという提案だった。

 リゥとは全く違うはずのアキラにも施術を行うというシムの発言に、リゥは当然としてレイたちも目を丸くする。


「どういうことでしょうか、シム博士? 彼はリゥとは違い、前世が分かりません。そのために核の発見も出来ませんし……」


「ええ。たしかにその通りです。しかし、核はなにも戻すだけではありません」


「――おい、どういうこった? そンなン、俺らは何も聞いてねぇぞ?」


 レイの言葉に対するシムの意味深な発言に、ゴウが口を挟む。

 シムの突然な提案。その意図と真意が、レイたちには全く分からない。そもそも、今回はリゥのことだけで頭がいっぱいだった。


「申し訳ありません。ですが彼が――アキラくんが、四天王補佐で『准天使』という立場なのであれば、今のままでは負担が大きいかと」


「つまり、シム博士は四天王補佐の役割を持つ『准天使』の彼が、今の核の状態では四天王について回ることは出来ない。そう仰るのですね?」


 シムの遠回しな発言を、単刀直入なそのままの言葉に言い換えるレイ。そんなレイの言葉に、シムはゆっくりと頷く。


「確かにそれは一理ありますが、具体的にどうするのですか? 彼の核はありませんが、何かほかに手立てが?」


「ええ。先程も申し上げました通り、核は戻すだけでなく、成長させることが可能です」


「――詳しく聞こうか」


 シムの突然の発言に、その場にいる全員が顔を顰める。

 しかし、それもそのはずだ。核というのは元々、その体を構成するための鍵となる部分なのだ。それを成長させるというのは、体を成長させることなどとは全く別次元の話だ。


「核の情報は、髪の毛一本からでも得ることができます。そしてその核に合わせて強力な核を作るための準備を施す。言わば、核をレベルアップさせるための準備です」


「それは、つまり簡単に言うとどういうことだ?」


「今の技術なら、核をレベルアップさせることが可能です。そのレベルアップがどれほどのことでレベルアップするかは分かりませんが、理論上は可能です。しかし、核を今すぐに強くすることはできません。核が強くなれるための準備をすることが可能ということです」


 今のシムの話は、アキラは当然としてリゥもゴウも理解出来ていない。天使の二人であっても、少し難しい顔をしている。そんな難しいシムの話を理解出来たのは、現状残った二人だけだ。


「つまり、核を育てるための準備。それが今リゥに核を戻すのと同じ要領でできる――」


「そうすれば、これから俺たちと行動を共にしながらその核が開花するのではないか、と」


「その通りです。さすがはレイ様にゲン様ですね。つまり、皆様ほどの存在の方々と行動を共にするのであれば、核が開花する可能性も高いのです。それなので、今ここでその準備をすれば、いつかは四天王の方々についていける程になるかと」


 理解出来たのは、レイとゲンの二人。その二人が今回の提案を掻い摘んで確認する。


「え、じゃあ俺もその、施術? を、やるってこと?」


「勿論ですが、強制ではありません。もしもアキラ様がそれを承諾していただけるのであれば、それが可能だと言うだけの話です」


 不安そうなアキラに、シムは強制でないことを伝える。しかしアキラは、それでもどうしていいのかが分からない。どんなことをするのか、その施術を行った場合どうなるのか、リスクはあるのか、そもそもそれを行って平気なのか。

 そんな考えを脳内に巡らせ、今にも混乱しそうなアキラの肩に、リゥがそっと手を置く。


「やるかやらないかは、アキラの自由だ。やらなくても誰も責めはしない。だけど、シム博士は信用できる。それだけは念頭に入れて、アキラなりの答えを出せばいい」


「リ、リゥくんは……やるの?」


「俺か? 俺は勿論やるさ。実際、俺の場合はやらなけりゃ戻ってきた意味がねぇからな。――でも、アキラは違う。別にそれをやりに来たわけじゃないんだ。アキラの好きにして構わない」


 不安が頭から離れないアキラに、リゥはただただ選択の自由だけを尊重する。やれという命令も、やるなという命令も、やった方がいいという勧めも、やらない方がいいという否定もない。ただただ、自由を教えてくれる。

 それが今のアキラにとって、何よりの支えである。

 そして、そう支えられたからこそ――、


「――俺も、やるよ」


 アキラの答えに、リゥは一瞬目を見開くが、直ぐに納得したようで、優しく微笑む。


「そっか! それなら、頑張ろうな! つっても、俺らは座ってるだけなんだろうけど」


 そう言って、リゥの核戻しと、アキラの核強化が決定する。

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