レンガのアパート
帰国した時、優が大阪国際空港まで迎えに来た。
3年ぶりに再会した弟を見て すっかり大人になっていたのと
やっぱり自分の家族は優だけなんだと思った。
大阪のアパートへ足を踏み入れるのも実に3年ぶり。
扉を開けると 留守の間、ずっとこの部屋を管理していてくれた大親友が待っていてくれた。
感謝の気持ちが溢れて涙ぐむ。
すっかり社会人になった彼女は変わらない笑顔で美香を迎えてくれた。それが本当にありがたかったのだ。
その夜、母親の遺影の前で姉弟は並んで線香をあげ
二人で外食し、優は二日間アパートに泊まった。
久し振りにお互いの近況を話しながらお酒も飲み、多感な日々を過ごしたこの家で 肉親という繋がりに幸せな思いが広がっていった時間でもある。
三日目には一緒に新幹線に乗って東京へと向かう。
恭子ママや廣川氏に会いに行くためだ。
晴れた空の下、美香はこのレンガのアパートがとても懐かしく思えた。
この部屋にいた頃の自分は いつもいつも心配事や不安が絶えなくて泣いてばかりいた。
自分の存在が目に見えないほどの小さな弱虫だったように思う。
そして達也なしでは語れない思い出ばかりだった。
色々な不安に押しつぶされそうで、西日の当たる台所で
人知れず泣きながら夕食を準備した。
ベッドに入るとまた涙が後から後から溢れてくる。
いつもいつも四六時中、達也に会いたかったのだ。
どこで何もしていても寂しかった…。
そんな少女の頃の自分のことも懐かしく思えた。




