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初心者妖精の願い  作者: ゆきのいつき
17/21

---Re:8---

 凛が突然の事故で亡くなってからの理菜の落ち込みようはそばで観ていて余りにも痛々しくって……、かける言葉がみつからなかった……。


 双子の兄妹としてずっと一緒だった二人は、男女の兄妹が成長するとよくあるようなお互いをけむたがったりするようなこともなく、それどころか年を追うごとにその仲は更によくなってるんじゃないかって思えるほどだった。

 理菜が原因不明の心臓の病気にかかってからは尚のこと、その絆は強まったように思える。

 凜が中学に上がってからも、学校に通うことが出来ない理菜のため、大好きだったサッカーのクラブにも入らず、放課後になると一目散で理菜の病室へと姿を見せていた。


 ほんとに私たち夫婦から見ても、ほんとに仲がいい、目の中に入れても居たくないほどかわいい、自慢の子供たち。自慢の息子だった。



 それなのに……。

 神様は無情だった。


 凜はあっけなく……、永遠に私たちの前から姿を消してしまった。もう二度と、あのやさしい笑顔を私たち夫婦、そしていつも一緒だった……大好きだった理菜に向けることもない――。


 理菜の落ち込み方は本当にひどかった。

 精神的に弱って、そしてそれが持病にも悪影響を及ぼし……、一時は毎日のように発作を起こし、もう長くないかも知れないと……、覚悟をさせられるほどだった。



 それがどうだろう!


 ここ最近は今までの落ち込みようがウソだったかのように明るく、元気な姿を見せてくれるようになった。その様子はまるで凜が生きていたときを彷彿とさせ、それと共にあれほどひどかった発作も鳴りをひそめ、私たち夫婦はほっと一安心といったところだ。


 それにしても、理菜が元気になった理由ってなんなのかしら?


 変わったことと言えば……、そう!

 あの妙に存在感のある、かわいらしい妖精の人形をそばに置くようになってからのような気がする。

 でも不思議なのよね。私はあんな人形を買って上げた記憶はないし、パパもプレゼントしていないって言うし。まぁパパは、どなたか……お見舞いにいらした方がプレゼントしてくれたんだろうって深く考えもせずに、そう結論付けてたけど……、何か釈然としないわ。

 

 でも……まあともかく、おかげで理菜は元気になったんだし……。

 良しとしましょう。


 理菜がリィンと名付けた妖精人形。


 リィン……、そして凜。


 きっと凜の存在の代償としてその妖精人形をかわいがることで心の折り合いをつけたのだろう。


 かわいそうな理菜――。

 けど、それでも、それでも今は……元気になってくれてたことがうれしい。



 でも、あの人形。出来はほんとすごくいいくせに着せてあったお洋服は妙に質素というか、シンプルすぎるというか……、不思議な素材で物自体は悪くなさそうなんだけど、なんとも簡単すぎる造りだった。履かされてたパンティなんかゴムすら使われてなくて、なんと紐でくくってあってちょっとあきれちゃったわ。

 それにしてもその体はやたらとリアルで柔らかくって、ほんとに生きてるかのような出来栄えで……。さぞや高価な人形なのではないか? と、プレゼントしていただいた方にお礼をしたいし……、誰に頂いたの? って聞いたこともあるんだけど、あの子ったらハッキリ答えようとしない。忘れちゃったとか、寝てた時に知らない間に置いてあったかも……とか、白々しくウソっぽい返事を返してくる。


 ま、言いたくないのならそう無理に問いただすことまではしないけど……。どこか気になるのよね、あの妖精人形。二十数年ぶりに人形用のお洋服まで買ってしまったし。

 昔、着せ替え人形で遊んだこともあるし……、やはりあの質素すぎるお洋服じゃ可哀想に思えてしまったのよね。

 理菜にプレゼントしてあげたらそれはもう喜んでくれて……、手間をかけて用意した苦労も報われたし。

 プラチナブロンドのそれはもう艶やかな髪に真っ白いお肌、エメラルドグリーンのお目目に虹色に輝いて見える透明な綺麗なお翅を生やしたもうこの世のものとは思えないほど綺麗な妖精人形。

 着せ替え人形としては等身が足りず、華奢な体型もあってなかなか合うお洋服探すのに苦労して、結局オーダーメイドで作ることになってしまったけど……、ほんと、そうまでしてプレゼントして良かったって思えるほどには似合ってて、とても素敵な仕上がりだった。

 淡いグリーンをしたシフォンのワンピースだけど、丸く開いたネックラインとふんわり軽やかにゆれるシフォンがとてもやさしく見え、透明感ある仕上がりがいかにも妖精っぽく、それに短めにしてもらったスカートの裾がふわっと広がって一層かわいさを引き立ててる。


 うん、まさに完璧な仕上がりだったわ。




 そんな――、理菜が今一番大事にしているはずの妖精人形が――。



 ベッドの上で体を起こして一日を過ごしてる、理菜の膝の上くらいが定位置になってる……あの妖精人形が――。



 なぜか今私の目の前に居る。



 ここはエレベータの中。病室じゃない――。


 ついさっきまで理菜のリクエストで飲み物やお菓子を買いに病室の一つ下の階にある売店で買い物をしていたのだ。


 買い物を終え、かわいい理菜の待つ病室へ戻ろうとエレベータに乗ったのだ。



 ドアが閉まる寸前。

 目の前のこれは間違いなく外から飛び込んできた。


 目の前のこれ。

 理菜の病室を出るときには間違いなくそこにいた、理菜がリィンと呼んでる妖精人形。



「な、な、何、これ?


 ど、どうしてここに……? そ、それに……」



 私はもう動揺しまくっている。

 妖精人形が宙に浮かんでる。


 そう、浮かんでる!


 っていうより、飛んできたわ! そう、飛んで……。


 こ、これが動揺せずに居られますかっ!



 そしてその妖精人形、ほんと、こうなるとまさに妖精って言葉がぴったりのその人形が……、


 人形のはずのものが……、



「ま、ママっ! 大変なの!


 りなちゃんが……、


 りなちゃんが発作起こして、く、苦しんでるの!


 早く助けてあげてっ! お願い」



 一気にまくしたてた妖精……人形。

 なんで飛んでるの? なんでしゃべってるの?


 な、なにを、何を言ってるのっ!?



 私はもう……、

 何に驚いたらいいのかわからないくらいには混乱してしまっていた――。




ママさん視点でした。


お話は進んでませんね、すみません。


次回はちゃんと進みます。

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