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悪役令嬢は性悪執事とお金に溺愛される ~皇女の身分を捨てて商売を始めたら、国家予算レベルの資産と最強の夫が手に入りました~  作者: 蒼山りと


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第二十一話:目覚めの請求書と、崩壊する空

 聖都の地下から救出した少女を、私たちは宿のスイートルームに運び込んだ。

 彼女はまだ眠っている。

 透き通るような肌、長い睫毛。まるでお伽話のお姫様だ。


「……可愛いわね」


 私は彼女の頬を突っついた。

 この子のために、150億ゴールドのミスリルゴーレムを解体し、聖都のシステムを停止させた。

 商売としては大赤字だ。

 でも、不思議と後悔はなかった。


「お嬢様。最高級のエリクサーを用意しました」

「飲ませてあげて。あと、栄養剤も点滴して」


 クラウスとルナが甲斐甲斐しく世話をする。

 数時間後。

 少女の瞼が、ピクリと動いた。


「……ん……」


 ゆっくりと、その瞳が開かれる。

 宝石のような、深い青色の瞳だ。

 彼女はぼんやりと私を見つめ、小さな声で呟いた。


「……あなたは……女神様?」

「いいえ。悪徳商人よ」


 私は即答し、懐から一枚の紙を取り出した。


「おはよう、お姫様。気分はどう? ……さて、早速だけどビジネスの話をしましょう」


 私は紙を彼女の目の前に突きつけた。


「クリスタルからの救出費用、システム解体費、および最高級エリクサー代。締めて二十億ゴールドよ」

「……え?」


 少女は目を丸くした。

 状況が飲み込めていないようだ。


「に、二十億……? お金……?」

「そう。この世で一番大切なものよ。払えないなら、体で払ってもらうわよ(労働で)」

「……ふふっ」


 少女は、突然笑い出した。

 鈴を転がすような、綺麗な笑い声だ。


「面白い人……。私に『祈り』ではなく『お金』を求めた人は、あなたが初めてです」

「当たり前でしょ。祈りで腹は膨れないわ」

「そうですね。……私はソフィア。ありがとう、商人さん」


 ソフィアは私の手を握った。

 その手は温かかった。

 数百年の封印から解き放たれた、生身の人間の温もりだ。


 しかし。

 感動の再会も束の間。


 **ズズズズズ……!!**


 突然、地響きが鳴り響いた。

 宿が激しく揺れる。


「な、なに!?」

「お嬢様! 外を!」


 クラウスが窓を開ける。

 そこには、信じられない光景が広がっていた。


 聖都の空が、割れていた。

 ガラスのようにヒビが入り、そこからどす黒い瘴気が溢れ出している。

 そして、その裂け目から、無数の魔物が雪崩れ込んでくるのが見えた。


「……結界が消えたんだ」


 賢者が冷静に言った。


「あのクリスタルは、ソフィアの力を吸って結界を維持してた。ソフィアを目覚めさせたから、結界が消えたんだ」

「嘘でしょ……!?」


 街中から悲鳴が上がる。

 平和ボケした聖都の住人たちは、逃げ惑うことしかできない。

 空を覆うガーゴイルの群れ。地上を蹂躙するオーガたち。

 地獄絵図だ。


「……私のせいだ」


 ソフィアが顔を青ざめさせる。


「私が目覚めたから……みんなが……!」

「バカ言わないで!」


 私は彼女の肩を掴んだ。


「あんたは被害者よ! 悪いのは、あんたを電池扱いしてた連中と、それに頼り切ってたこの街の連中よ!」

「でも……!」

「泣いてる暇があったら働きなさい! 二十億の借金があるんでしょ!」


 私は窓を開け放ち、叫んだ。


「総員、出撃! 私の『商品(聖都)』を傷つける害虫どもを駆除するわよ!」

「御意!」

「へいへい!」

「オラァ! 暴れるぜぇぇぇ!」


 クラウス、ルナ、賢者が飛び出していく。

 私はソフィアの手を引いた。


「行くわよ、ソフィア。あんたの力、貸しなさい」

「……はい!」


 聖都防衛戦。

 それは、金のためでも信仰のためでもない。

 私たちの「居場所」を守るための、最初で最後の戦争だった。


***


**【本日の営業報告】**

**文責:クラウス**


* **売上:** 0ゴールド

* **請求:** 20億ゴールド(ソフィア様へ)

* **緊急事態:** 聖都結界消滅、魔物の大群襲来

* **現在のステータス:** 防衛戦開始


**【クラウスの一言メモ】**

ソフィア様の笑顔は、一億ゴールドの価値がありますね。

ですが、請求書はきっちり回収させていただきます。公私混同は致しません。


(第二十一話 完)


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