第二十話:ミスリルゴーレムの解体ショー
聖都の地下迷宮。
私たちの目の前には、銀色に輝く巨人が立ちはだかっていた。
古代の守護者、ミスリルゴーレムだ。
その装甲は、世界で最も硬く、そして最も高価な金属「ミスリル」でできている。
「……美しい」
私はうっとりと呟いた。
敵としてではない。商品としてだ。
市場価格でグラム数万ゴールド。あの巨体なら、数十億……いや、百億は下らない。
「総員、作戦変更!」
私は叫んだ。
「『破壊』は禁止! 『解体』よ! 傷一つつけずに、あの歩く金塊をバラバラにしなさい!」
無茶な命令だ。
普通なら「できるか!」と反論が来るところだ。
だが、私の部下たちは優秀だった。
「承知いたしました。関節の駆動部を狙えば、装甲を傷つけずに無力化可能です」
クラウスが懐から、解体用の工具セット(なぜ持っている?)を取り出す。
「へいへい。精密作業は私の専門よ」
ルナがドライバーを回しながら、不敵に笑う。
「めんどくせえが……シャルの頼みだ。やってやるよ」
賢者がボキボキと指を鳴らす。
戦闘開始。
いや、これは戦闘ではない。
一方的な**「解体ショー」**だ。
***
**ガシィッ!**
まず、賢者がゴーレムの背後に回り込み、フルネルソンで拘束した。
ゴーレムが暴れるが、賢者の怪力はビクともしない。
「動くなよ。傷がついたらシャルの機嫌が悪くなる」
「グオオオオ……!?」
動きが止まった一瞬の隙を突き、クラウスとルナが飛びかかった。
「右腕、第一関節のボルトを確認。外します」
「左脚、動力パイプ切断。エネルギー供給ストップ!」
キュルルルル! ガシャン!
目にも止まらぬ早業で、ゴーレムのパーツが次々と外されていく。
外科手術のような精密さだ。
ゴーレムは悲鳴を上げる間もなく、ただの「部品」へと還元されていく。
「仕上げです、お嬢様!」
クラウスが胸部装甲をパカっと開けた。
中には、赤く輝くコアが露出している。
「いただきっ!」
私が手を伸ばし、コアを引き抜いた。
プシュゥゥゥ……。
ゴーレムの瞳から光が消え、その巨体が崩れ落ちた。
……いや、崩れ落ちる前に、賢者が優しくキャッチした。
「おっと。床に落としたら傷がつく」
「ナイスよ、賢者!」
完全勝利。
傷一つない、最高品質のミスリルパーツの山が完成した。
***
数時間後。
聖都の鍛冶ギルド。
私たちは、荷車いっぱいのミスリルを持ち込んでいた。
「いらっしゃい。何の用だ……って、おい」
ギルドマスターのドワーフが、荷車の中身を見て絶句した。
パイプを口から落とし、目玉が飛び出しそうだ。
「こ、これは……ミスリル!? しかもこの純度、この形状……まさか、古代のゴーレムか!?」
「ええ。ちょっと拾ったの」
私は涼しい顔で言った。
「拾っただと!? バカ言え! ゴーレムは倒せば爆散するか、傷だらけになるもんだ! こんな……まるで最初から部品だったみたいに綺麗にバラせるわけがねえ!」
ギルドマスターの手が震えている。
彼はミスリルの装甲板を撫で回し、その断面の美しさに戦慄していた。
「ボルトの一本まで歪んでねえ……。一体どんな化け物がやったんだ……」
「さあね。で、いくらで買ってくれるの?」
私が電卓を叩くと、ギルドマスターは青ざめた顔で言った。
「い、言い値で買う! 金庫にある金全部持ってけ! 足りなきゃ借金してでも払う!」
「交渉成立ね」
こうして、私たちは莫大な資金を手に入れた。
ギルドを出ると、賢者が退屈そうにあくびをした。
「あーあ。結局、暴れ足りねえな」
「我慢なさい。その代わり、今夜は最高級の肉を食わせてあげるわ」
「おっ、マジか! シャル大好き!」
賢者が私に抱きつこうとするのを、クラウスが「お嬢様のドレスが汚れます」と阻止する。
平和だ。
地下に眠る少女のことは気がかりだが、まずは軍資金の確保が最優先だ。
これで、あのシステムを解析し、少女を救うための準備が整った。
***
**【本日の営業報告】**
**文責:クラウス**
* **売上:** 150億ゴールド(ミスリル素材売却益)
* **経費:** 0ゴールド
* **獲得スキル:** ゴーレム解体術(熟練度MAX)
* **備考:** ギルドマスターが「悪魔の所業だ」と呟いておりました。褒め言葉として受け取っておきます。
**【クラウスの一言メモ】**
今回の解体作業で、ルナの手先の器用さが際立っておりました。
彼女には怪盗よりも、精密機械の組み立て工場の工場長などが向いているかもしれません。
(第二十話 完)




