表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は性悪執事とお金に溺愛される ~皇女の身分を捨てて商売を始めたら、国家予算レベルの資産と最強の夫が手に入りました~  作者: 蒼山りと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/51

第十九話:聖都の地下と、眠れる本物の聖女

 皇帝陛下との握手会騒動から数日後。

 私たちは、聖女アリスに呼び出され、大聖堂の地下倉庫に来ていた。


「……埃っぽい」

「文句言わないの。ここを片付けたら、中にあるお宝は全部あんたたちのものにしていいわよ」


 アリスが鼻をつまみながら言う。

 どうやら、歴代の聖女たちが溜め込んだガラクタの処分を押し付けられたらしい。

 だが、「お宝」という言葉に弱い私は、二つ返事で引き受けた。


「やるわよ、みんな! 掘り出し物を見つけて、パパへの賠償金に充てるのよ!」

「へいへい」


 ルナが面倒くさそうに木箱を開ける。

 中から出てきたのは、カビの生えた法衣や、錆びついた燭台ばかり。

 ガラクタだ。売っても二束三文にもならない。


「……お嬢様。あちらをご覧ください」


 クラウスが、倉庫の最奥にある壁を指差した。

 そこには、不自然な亀裂が入っている。

 賢者が近づき、コンコンと叩いた。


「空洞だな。向こうに何かあるぞ」

「隠し部屋!? お宝の予感!」


 私の目が輝く。

 ルナ、出番よ!


「はいはい。……ふんっ!」


 ルナがヘアピン一本で、壁に隠された魔導ロックを解除する。

 ゴゴゴゴ……と重い音を立てて、壁が回転した。

 その向こうに広がっていたのは、薄暗い通路と、冷たい空気だった。


***


 私たちは通路を進んだ。

 アリスも「こんな場所、知らないわよ」と怯えている。

 やがて、開けた空間に出た。

 そこは、巨大なドーム状の空間だった。

 そして中央には、淡い光を放つ巨大なクリスタルが鎮座している。


「……綺麗」


 私は思わず息を呑んだ。

 クリスタルの中には、一人の少女が眠っていた。

 透き通るような肌、銀色の髪。年齢は十歳くらいだろうか。

 まるで時間が止まったかのように、静かに目を閉じている。


「……誰?」

「まさか……『初代聖女』?」


 アリスが震える声で呟く。

 その時、賢者がクリスタルに近づき、眉をひそめた。


「……おい。こいつ、泣いてるぞ」

「え?」

「聞こえねえのか? 『痛い』『苦しい』って、ずっと叫んでる」


 賢者の言葉に、背筋が寒くなった。

 私はクリスタルの台座を見た。そこには、複雑な魔法陣と、古代文字が刻まれている。


「クラウス、読める?」

「……はい。これは古代語ですが、内容は『契約書』に近いですね」


 クラウスが眼鏡を光らせ、文字を指でなぞる。


「『対象:聖女の魂。対価:聖都の繁栄。期間:永久』……ふむ。どうやらこのクリスタルは、彼女の魂をエネルギー源として、聖都の結界を維持するシステムのようです」

「エネルギー源って……電池代わりってこと?」

「左様でございます。しかも、かなり悪質な。彼女の『祈り』を強制的に吸い上げ、枯渇しないように循環させている。……これは、一種の『永久機関ポンジ・スキーム』ですね」


 クラウスの声に、微かな怒りが混じっていた。

 彼は台座の隅にある、小さな署名を見つめている。


「……『S.G.』。……まさか、あの男が関わっていたとは」

「誰?」

「……昔の知り合いです。金のためなら魂すら売る、伝説の相場師でした」


 クラウスはそれ以上語らなかったが、その横顔はいつになく険しかった。

 伝説の相場師。

 まさか、私の執事がそんな人物と知り合いだったなんて。


「……ふざけてるわね」


 アリスが吐き捨てるように言った。


「私が管理していたのは、こんな残酷なシステムの上澄みだったってわけ? 冗談じゃないわよ」

「同感ね。……子供を犠牲にして成り立つ繁栄なんて、商売の美学に反するわ」


 私はクリスタルの中の少女を見上げた。

 彼女は、まだ幼い。

 こんな冷たい石の中で、永遠に搾取され続けるなんて。


「……助けるわよ」

「はあ!? 正気!? これ壊したら、聖都の結界が消えるのよ!?」

「知ったことじゃないわ。結界が消えたら、新しい警備システムを導入すればいい。私が売ってあげるから」


 私はニヤリと笑った。

 アリスは呆れた顔をしたが、すぐに「……ま、それもそうね」と笑い返した。


「おい、賢者。これ、壊せる?」

「おう。ワンパンだ」


 賢者が拳を構える。

 その時。


 **『……侵入者ヲ検知。排除シマス』**


 無機質な声と共に、周囲の壁から無数のゴーレムが出現した。

 古代の警備システムだ。


「ちっ、やっぱりタダじゃ帰してくれないわよね!」

「総員、戦闘配置! このガラクタどもをスクラップにして、鉄屑として売り払うわよ!」


 聖都の地下で、新たな戦いが始まった。

 金のためでも、自分のためでもない。

 会ったこともない少女を救うための、初めての「赤字覚悟」の戦いだ。


***


**【本日の営業報告】**

**文責:クラウス**


* **売上:** 0ゴールド

* **発見物:** 封印された聖女、古代の搾取システム

* **懸念事項:** システムの設計思想が、私の若き日の……いえ、ある知人の手口に酷似しています。

* **決意:** 過去の負債は、清算せねばなりませんね。


**【クラウスの一言メモ】**

お嬢様が「赤字覚悟」と言った時、少しだけ胸が熱くなりました。

……ですが、ゴーレムの残骸はきっちり回収してリサイクルします。そこは譲れません。


(第十九話 完)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ