90 ふたりでお出かけ(中)
どうぞよろしくお願いします。
王城に無事到着し、馬車を降りる。
私は張り切って指差す。
「庭はこっち! 城の方へ行く? 私、王城は行ったことないや!」
「庭には前に来たことがある?」
「うん、夏休みにヨシュアとハーブと神寮の友達も入れて7人かな?
薬草園の特別公開があって」
「それもヨシュアとなんだ……」
「でも、大勢でだよ」
私の言葉にちょっと気を取り直してくれたみたい。
私の右手を左手で握ってきた。
「な!」
びっくりする私に「ヨシュアとは手は繋いでないだろ?」と言う。
「ああ、うん、というか、手は繋がないかな、普通」
「じゃあ、今日は特別」
「んー、じゃ、まあ、特別……」
王城の門の所までは観光で見学できる。
門の向こう、大きなエントランスがある玄関が見えて、たぶん、年末のパーティーとやらはここに来るんだろうな……。
私が熱心に見ていると笑われる。
「来ることがあるみたいだな!?」
「来るもん、年末に! パーティーがあって出るから」
「パーティー? 年末の貴族の?」
私は頷く。
「お父様、一応男爵だし。
それにアルベルトさんにパートナー頼まれてるし……」
「アルベルトって、アルベルト・ラファィエト!?」
「うん、パートナーを頼めるような女性の友人がいないんだって」
「了承したの?」
「うん……、本当に困ってるみたいだったし。
一応、ほかに誘える人がいないか、ぎりぎりまで努力してね、とは言ったけど。
アルベルトさんにパートナーが見つかったとしても、マリアとお姉様方と一緒に来ることになるだろうし……」
私は微笑んで話を続けた。
「アルベルトさんにマリアのお姉様達を紹介しないと!」
「あ……、そうなんだ。そういうことか。
ぺスカは……、そうだよな。うん」
何をひとりでぶつぶつ言って、納得しているのだ?
庭の方へ進んでいくと空いているベンチを見つけた。
「座る?」
「え? ああ、座りたいの?」
「……どこかへ行く予定があるの?」
「あ……、うん」
「なら、そっちへ行こう。連れて行って」
私は微笑んだ。
「うん」
フレイが素直に頷いて歩きだす、が、すぐに止まった。
「疲れた? つかまった方が楽?」
「うん、でも、歩くの遅くなっちゃうし」
「俺、歩くの早かったか。言えよ、ちゃんと」
握られていた手を離され、左腕を軽く曲げて差し出される。
私はちょっと疲れていたことと、フレイが気を使ってくれたのがうれしくて、フレイの左腕に右手を通して腕で挟むようにしてぎゅっと身体の真ん中にフレイの左腕を寄せた。
「うあ?」
フレイが変な声を出すので、身体を離そうとしたら「そのままでいいけどっ!?」と慌てたように言われた。
マリアに『はぐれないでよ』って言われる時、いつもこうしてるんだけどな……!?
フレイが連れて行ってくれたのは王城と大通りの間くらいの通りにある小さなカフェというよりかは喫茶店という感じ、かな。
「すごくかわいいお店だね。のんびりできそう」
私が喜ぶと「良かった……。マリアに教えてもらった」と白状した。
「ふふふ、そんなこと言わなきゃいいのに。
カッコつけたいと思う子には、言わない方がいいよ!」
王城と庭を眺められる席で、お茶とケーキを頂く。
わー、すごー。本当にデートみたい。
私がフルーツタルトに歓声を上げたのを見てフレイが笑った。
「かわい過ぎ」
私は舌を出してイーっとしてから「子どもみたいで悪うございました」と言ってタルトを一口頬張る。
「うー! おいしいっ!」
フレイの前にはシンプルなチーズケーキ。
「……フレイも一口食べる?」
フレイがニヤッと笑った。
「こっちのも狙ってる?」
私はえへへと笑う。
読んで下さり、ありがとうございます。
書いてて、にやけちゃう。かわいいふたりだ~。




