29 フレイムドラゴン
どうぞよろしくお願いします。
私は大きく息をついてから、姿勢を正し、普通に歩いてフレイムドラゴンの前まで行った。
ドラゴンが私の前に顔を突き出してくる。
私は右手を出してなでようとしたんだけど。
ぱくっ。
私の右手が食べられた。
ぎょっとするが、あったかい。
なんだか嚙まずにしゃぶられてるみたいな感じ!?
また口が開いて、右手は無事に戻ってきたけど、私の前面にすごい息が吹きかかる。
ああ、これ……、涎?
おいおい……。
私は笑ってしまって、顔を押し付けてくるドラゴンの頭ごと受け止めるように抱き抱えた。
すごくくすぐったい。
「うひゃひゃっ! くすぐったい、くすぐったいよ!」
そう言っているのにぐいぐい顔を押し付けてきて、とうとう私は倒されてしまった。
それでも、胸やお腹をふんふん匂いを嗅ぐみたいに顔を押し付けてくる。
何だこのドラゴン?
女の子好き?
「ペスカ!! 大丈夫か!」
フレイの声にドラゴンがそちらを見る。赤い眼の中の金色の部分がきらりと光った。
私は慌てて半身を起こしドラゴンの顔に抱きつく。
「彼も私の友達!
あなたを傷つけたりしないから、話を聞いてくれる?」
フレイにも聞こえているはず。
フレイがゆっくりと近づいてきた。
私はドラゴンの顔をなでた。
「ありがとう。話、聞いてくれて」
ぺろり。舌が伸びてきて頬を舐められた。
むー、どういう感情なんだ?
甘えてるのか?
おもちゃだと思っているのか?
フレイが私のそばまで来ると、私の腕をつかんで抱き寄せようとした。
ドラゴンがしゅーっと鼻息を吐いた。
フレイはかまわず私を抱き寄せると「俺のだかんな!!」と大声で言った。
は?
自己紹介とか、仲間になってくれとかじゃないんか?
なんか睨み合っているふたり……、いや1匹はドラゴンなんだけど。
「ペスカ、俺にキスしろ、早く!!」
へ? なんで?
「ドラゴンと俺、どっちを選ぶ?」
わけがわからないまま、フレイの頬にキスした。
なんかドラゴンがしゅんとした。
「な、俺の方が……」
フレイがドラゴンの頭を抱えるように何かごしょごしょ話しかけてる。
ドラゴンが頭を上げ、その頭をフレイがなでる。
ん?
どうなったん?
「ペスカ、ありがとう。
フレイムドラゴンと友になれた」
「スキルで? 話ができたの?」
「ああ、ペスカのことはわかったけど、そばにいたいから俺と一緒に来るそうだ」
「……どういうこと?」
「名は……、そうか。溢れるほどの思いか……。
オーバ……、お前の名前はオーバだ」
溢れるだと意味的にオーバーか。上空って意味もあるからなんだか合ってる気がする。
名前だと、オーバと切った方が言いやすいな。
「オーバ、よろしくね」
オーバがのどをごろごろさせる。猫みたいだな。
なんかかわいい。
オーバがまた顔を私の首や背中の方まですりすりして来ようとして……。
フレイが表情を変えて私の手を取って引っ張るとなぜかひっくり返されて、首の後ろの襟をぐっと引っ張られた。
「ごめん!」と言われて、がぶっと噛みつかれたっ!!
「いっ!? いってーぇえ、いたいいたい! いたいってば!!」
驚きと痛さで涙が滲む。
やっとやめてくれて噛んだ後を確認してる。オーバも覗き込んでいるよう……。
「歯形がつくのが重要だから、ごめん。
オーバにペスカは俺のものだから手出しするなってわからせたんだ。
ドラゴンのつがいは雄が雌の首の後ろを噛んで……」
「それはドラゴンの話でしょ!?
何でフレイが私を噛むのよ!!」
「……そうしないとオーバがペスカの首を噛みそうだったから、先に潰しておいた」
「な……。はあ、もういいや。
うまくテイムできたってことでいいの!?」
「ああ、いい相棒になれそうだ」
なんか、私が散々な目に合わされただけな気がする……。
でも、私きっかけで話しかける糸口ができたのなら、それは良かったけど……。
読んで下さり、ありがとうございます。
サメとか噛みますね。
ドラゴンに歯形がつくまで噛まれたら、死にますね。
人間ならまだマシか。でも痛そう……。




