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あたしの恋人  作者: 紫月 飛闇
Season1 始まりと出会い
71/86

19、留守中の出来事 <Side 愛良>(中編)





「ねぇねぇ、しずちゃん、ミスター・ベラルディってマジシャン知ってる?」


「ミスター・ベラルディ?」


あたしは教室につくとすぐに、しずちゃんにそう聞いた。


「う~ん、どっかで聞いたような・・・・・・。あ、今度この近くでマジックショーやる人?!」


「ピーンポーン!!じつはね、今週の日曜に、和馬お兄ちゃんたちと一緒にそのマジックショーに行くんだ!!」


「え~?!いいなぁ、チケットどうしたの?」


「チケットはね~・・・・・・もらったの!!」


「へ~そんなチケットがもらえるなんていいなぁ。感想、聞かせてね!!」


「もっちろん!!」


うらやましがっているしずちゃんに、あたしは了解の意味を込めて親指を立てる。




ミスター・ベラルディのマジックショー。


そのチケットは、しずちゃんに言った通り、もらったんだよね。


・・・・・・たぶん、ミスター・ベラルディ本人に。



偶然かどうかわからないけど、和馬お兄ちゃんの家の前で立ち尽くしていた彼と出会って、そしてチケットをあたしにくれて姿を消してしまった。


それこそ、まるで手品みたいに。


不思議な外人さんだったんだよね。








19、留守中の出来事Ж    <Side 愛良>(中編)








日曜日。


初めて見るマジックショーに、あたしはわくわくしていた!!


「和馬お兄ちゃんは、マジックショーって見たことある?」


「いや、マジックショーはないなぁ。母さんがサーカスが好きで、それならガキの頃よく見に行ったけど。あ、ちょうど愛良くらいのときだな」


む。


今、なんかすごく気になる言い方された気がする。



「かずくん、それは言外に愛良はガキだって言ってますよ?」


「それはいちいち指摘してくれなくていいよ、宗次お兄さん!!」


ぷいっとあたしは顔を横に向けながら宗次お兄さんに八つ当たりしちゃう。だって、宗次お兄さん、ニヤニヤ笑ってて、絶対状況を楽しんでる。


「なんだよ~怒るなって愛良。これからせっかくマジックショー見に行くのに、そんなぶすくれてたら楽しめないぜ?」


そんな宗次お兄さんがあたしの肩を叩きながら、ご機嫌をとるようにそんなことを言ってくる。


でも、なんだかすぐには許したくなくて、宗次お兄さんとは反対方向にぷいっと顔を背けてしまった。


「おいおい~そんなに怒るなよ~。だいたい発端はかずくんだろ?」


「宗次がそれをからかうからでしょ?和馬も和馬よ」


里奈お姉さんがぴしゃりとふたりを注意する。


でも、ふたりとも肩を軽く竦めただけだったから、全然反省してないと思うな!!





そんなこんなで会場につくと、すでにたくさんの人が並んでいた。


チケットはすべて座席指定のものだけど、みんな早く見たくて開場前に並んでるみたいだった。


「すっげ~人だな!!このチケット、じつは結構レアだったんじゃないか?!」


「まさか座席指定制のチケットとは思わなかったしなぁ。しかもよく見たらいい席みたいだし。愛良、ほんとにこれ、おまえがもらってよかったのか?」


それまで気楽に考えていた和馬お兄ちゃんたちだったけど、すごい人気ぶりにさすがにチケットをくれた外人さんが怪しく思えてきたみたい。


「うん、だって、あの外人さん、あたしにってくれたもん」


「愛良ちゃん、その外人さんの名前は聞いたの?」


里奈お姉さんが優しくそう尋ねてくれたけど、あたしはゆるゆると首を横に振った。


「ううん、聞いてない」


「ロゼの関係者、とか?」


「でもロゼの名前を知らないみたいだったよ?」


実お兄さんの疑問にも答えたけど、なぜか実お兄さんは微妙な顔で和馬お兄ちゃんに呟いた。


「・・・・・・<ロゼ>じゃない彼女に会いに来た・・・とか・・・・・・?」


「あり得る・・・」


げんなりした様子で頷くお兄ちゃん。



ロゼじゃないロゼってなに?


変なの。


あの外人さん、ミスター・ベラルディ本人じゃないかなって思ってたけど、こんなに人気のある人がいきなりあんなとこに現れないよね。


だからたぶん、助手の人とかだったのかなぁ?



「ま、いいんじゃん?ロゼの関係者でも、もらったもんは楽しんでおこうぜ?」


「それもそうだな」


ロゼのこと知らないみたいだったよって言ったのに、なぜか宗次お兄さんはあの外人さんをロゼの知り合いだって決めつけていて、和馬お兄ちゃんも実お兄さんたちも頷いているから、みんなそう思ってるみたい。


・・・・・・でもたしかに、外人さんの知り合いなんてロゼしかいないもんね。


やっぱりロゼの恋人とかだったのかな?!



結局チケットはどうしてもらえたのか結論は出ないまま、あたしたちはマジックショーの会場に入場した。


席はわりと前の方だったから、背が低いあたしでも舞台がよく見えそうだった。


どきどきわくわくしながら開演時間を待って、そして・・・・・・




「レディース&ジェントルマン!!今宵はワタシのマジックショーによくぞいらっしゃいました!!」




賑やかなBGMとドラム音、そして盛大な拍手の中から、シルクハットを被った長身な男の人が現れた。さすがにここからじゃ顔も見えないし、シルクハットを被っているから髪の色もわからない。


あたしは、壇上に立っているミスター・ベラルディが、あたしにチケットをくれた外人さんかは確認することができなかった。


でも、あの外人さんのことを考えていたのはそこまで。


マジックショーが始まってしまうと、あたしはあっという間にマジシャンの世界に引き込まれて魅了されてしまった。


次から次へと魔法みたいなマジック!!まるで現実とは思えないその空間で、あたしはただただ興奮してショーを見ていた。


「すごいね、和馬お兄ちゃん!!」


マジックの合間に隣の席に座る和馬お兄ちゃんにそう言ったら、お兄ちゃんも興奮した様子で


「すごいな、全然タネがわからないな!!」


って同じように興奮した様子で同意してくれた。


このマジックショーを見て、つまらないなんて言う人はいないと思うな!!



瞬きするのももったいないくらい、ドキドキが止まらない手品たち。大がかりなものもあれば、小さな驚きと笑いをくれるものもあった。


一体どれだけの時間が過ぎたのかわからないくらい引き込まれていると、ショーは次第に終盤に向かっているみたいだった。




「それでは、最後にとっておきのマジック、消失マジックをお見せいたしましょう」


マジシャンの言葉に歓声と拍手。彼は壇上で誰かを探すかのようにキョロキョロし出した。


「このマジックにはどなたかにお手伝いをしていただきましょう」


そして、ぴたっとあたしと彼の目があった・・・・・・気がする。


遠くてはっきりとはわからないけど。



「それでは、そちらのピンクのドレスの愛らしいお嬢さん、どうぞこちらへ」




え、え?


彼はじっとこちらを見ながらそんなことを言ってきた。


ピンクのドレスのお嬢さんって・・・・・・あたし?!



周りを見渡しても、あたし以外にピンクのドレスどころかピンクの洋服を着ている人なんかいない。このピンクのドレスは、誕生日にロゼにもらったものなんだけど。


「ピンクのドレスって、おまえのことじゃないか、愛良?」


「やっぱりそう思う?」


和馬お兄ちゃんもそう言ってきたから、あたしは益々戸惑いながらもそう返す。すると、助手らしい人がこちらに歩いてくるのが見えた。


このショーは、ミスター・ベラルディ以外は日本人だから、日本でのショーのときだけ助手してるのかな?


あたしに近づいてくる助手らしい人も日本人で、


「ミスターがお呼びですので、どうぞ」


と、あたしに手をさしのべた。


「い~な~、愛良。マジックの助手なんてめったにないチャンスだぜ?」


宗次お兄さんがそう呟いているのを背に、あたしは壇上に迎えられた。



ミスター・ベラルディは、あたしが彼のそばまで近付くと、シルクハットをはずして、胸に手を当てて腰を折った。


「感謝致します、麗しきレディ」


「・・・・・・あ!!」


顔を上げたミスター・ベラルディの顔を見て、あたしは思わず小さく叫ぶ。


シルクハットも今は被っていないし、こんなに至近距離だからはっきりとわかる。


やっぱりこの人、チケットをくれた外人さん!!


ミルクチョコレートみたいな髪と琥珀色の瞳が印象的な外人さん。




「あの・・・・・・」


チケットのこととか色々言わなきゃって思ったのに、シルクハットを被り直したマジシャンは、しぃっと人差し指を口にあてた。


・・・ん?黙ってろってこと?



「それではお嬢さん、こちらの箱にお入りください。もちろん、入る前に何の仕掛けもないことを確認ください」


ちょうど大人ひとりがぎりぎり入れるかどうかの大きさの箱。何の変哲もない箱に見えるけど・・・・・・マジックってことは何かあるのかな?


あたしはじろじろ見たりべたべた触ったり叩いたりしながら、その箱を調べた。


「どうですか?何か仕掛けはありましたか?」


マジシャンの問い掛けに、あたしは黙って首を横に振る。


仕掛けはわかんない。どうやって人が消えちゃうんだろ?



「それでは、少々狭いのですが、お入りいただいてよろしいですか?」


にこにこと笑うミスター・ベラルディの言葉に従って、あたしはドキドキしながらそこに入る。すると箱の扉もしっかりと閉められちゃって、真っ暗になってしまう。




「それでは、彼女をこの箱の中から消してしまいます。みなさま、瞬きせずに、しっかりとご覧ください」


箱の外で、マジシャンがそう言っているのが聞こえる。


なんだろなんだろ?!あたし、どうなっちゃうのかな?!


「ワン・ツー・・・・・・」



不安と期待でドキドキする。


胸の前で手を組んで、あたしは箱の外にだけ意識を持っていっていた。


「スリー!!」


掛け声がかかった途端、あたしの足場がなくなった。地面が<消えた>のだ。




「え?!」





考える間もなく、あたしはぽっかりと空いた地面の穴に落ちる。


「えぇぇっぇ?!?!」



真っ暗な穴の中、それなりの衝撃を覚悟しながら落下したら、意外にもクッションのような弾力があたしを受け止めた。


「これって・・・・・・?」


上を見上げると、すでに舞台の床下の扉は閉まってた。でも、ここはどこかに明かりがあるみたいで明るい。


あたしは物珍しさにきょろきょろとあたりを見渡す。床下の仕掛け以外は特にこれといった珍しい仕掛けもここにはなさそう。


とすると・・・・・・。



「あたし、どうすればいいんだろ?」


「ご心配なく。お迎えにあがりましたよ、お嬢ちゃん」


「え・・・・・・あ、ミスター・ベラルディ!!」


突然背後から声がしたかと思ったら、そこにはさっきまで壇上でマジックをしていた、あたしをここに落下させた張本人、ミスター・ベラルディがいた。


「驚かせてしまってごめんよ、お嬢ちゃん」


恭しくあたしの手をとって、キスをしてくれる。


うわぁ、なんか、映画とかで騎士がお姫様にやるみたい!!


でも、なせかこのマジシャンがそれをやっても違和感がなくて、むしろ紳士的でかっこよかったりして。



「あれ、マジックショーは?!」


「お嬢ちゃんのお陰で大成功だよ」


くだけた口調で話すマジシャンは、舞台にいるときよりも身近に感じる。


「でも、来るの早くない?ショーは終わったの?」


「いや、まだショーは終わってないよ。今は助手が中継ぎしてくれてるよ」


「へぇ~。でも意外だな、消失マジックがこんなに単純な仕掛けだったなんて。まさか、床が抜けるなんて思わなかったな~」


クスクス笑いながらあたしが言うと、ミスター・ベラルディもくすっと笑った。



「あの仕掛けは、君をここに呼ぶために特別に用意したものなんだよ」


「・・・・・・え?」


「マジックショーを手伝ってくれたお礼に、これを」


意味深なことを呟いた彼は、そのままあたしに一枚の紙をくれた。紙というより・・・またチケット?


「これは?」


「特別な招待券。絶対にひとりで来てね」


日にちは水曜日。時間は夜9時。場所はここ。


チケットにはそれだけが書いてある。


「あたし、ひとりで?」


「そう、内緒でひとりでおいで。そうしたら、君が求めるものを手に入れることができるよ」


「求めるもの・・・・・・?」




「・・・・・・<Lost Birthday>を知ってるかい・・・?」




にこにこと笑っていた彼の笑顔がふっと消えて、ひどく真剣な瞳であたしに尋ねる。


「知ってる・・・よ・・・」


「やっぱり、君は<Lost Birthday>を知っているんだな・・・・・・?」


突然変わった雰囲気におろおろしながら、あたしは頷く。



この人、<Lost Birthday>を知ってるんだ・・・。


怪盗夜叉も探してるってやつ・・・・・・。それを教えてくれるの・・・・・・?


このチケットの日時に、ここへ来れば・・・・・・?



「<Lost Birthday>のことを知りたければ、ひとりでここにおいで。待ってるよ」


念押しするようにそう言ってから、彼はさらに言った。


「このまま真っ直ぐ行けば扉がある。そうしたらそこの階段昇ればショーの会場に辿り着けるよ」


ニッと笑うその笑い方は、さっきまでの優しいものというよりはいたずらっ子のよう。


そして、訳がわからないまま出口に向かおうとしているあたしに、彼は最後に問いかけてきた。



「そういえば、お嬢ちゃん、お名前は?」


「えっと、愛良。柳井 愛良」


「アイラね。オレはジョン。ジョン・ベラルディっていうんだ。水曜日、待ってるからね」



そして、マジシャンであるジョン・ベラルディは、そのままあたしがその場を去るまで見守ってくれていた。






おやぁ?

なんで中編?なんで名乗ってる??

おかしいな、これは前後編で終わるはずで、しかもこんなところでジョンは名乗る予定では……。

破天荒なキャラの彼は、すでに愛良以上に紫月の手元から暴走していくのですが……(汗)

夜叉絡みの不思議話になると、どうしても前中後編になってしまうのは、紫月の悪いクセですね(泣)

さて、後編ではジョンと愛良はどんな会話をすることになるのでしょう?もう、紫月もわかりません(笑)

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