13、小さな依頼人 <Side 和馬>(後編)
いくら下っ端といっても、マフィアはマフィア。
所詮こっちの世界の経験値は浅い俺たちは、油断してはいけない。きっと、激しい銃撃戦が待ち受けているに違いないのだから。
「・・・・・・とか、覚悟してきたのですけどね」
思わず、夜叉の口調でため息ひとつ。
だってそうだろ?
決死の覚悟で侵入したアジトでの乱闘は、あっさりと終了。
ちょうど人数が減る時間帯を狙ったからっていうのもあるけど・・・・・・マフィアなのにこんなに手応えなくていいのか?!
それとも、<組織>の連中に命を狙われはじめてから一年経って、結構修羅場慣れしてきたのか・・・・・・?
・・・・・・喜ぶべきか、悲しむべきか・・・。
13、小さな依頼人▲ <Side 和馬>(後編)
<ブラック>と共に、香港マフィアのアジトのひとつに潜り込んだ次の日。俺たちはいつものように俺の部屋に集まって作戦会議をしていた。
別口の情報収集をしていた里奈もいる。さすがに予告日前日だから、現場から撤収してきたのだ。
とりあえず、里奈が無事であることに俺はほっとする。
「無事でよかったよ、里奈」
「それはこっちのセリフよ、和馬。大丈夫だった?怪我は?」
「どんな大怪我もすぐに対処できるように控えていたのに、かすり傷くらいしか手当てするものなかったよ」
俺を案じて尋ねてくれた里奈に、実が残念そうに答える。
・・・なんでそんな残念そうなんだ?!怪我がなくてよかっただろうが・・・。
「催眠弾、催涙弾を使ったらあっという間。何人かは飛び道具を使う元気が残ってるのもいたけど、それも狙い撃てば撃沈したな」
「さすが俺。最高の出来ってことだよな」
宗次が得意顔で頷いてる。まぁ、今回はたしかに宗次の発明品に助けられたからな・・・。
宗次がつくってくれた、催眠弾や催涙弾は、怪盗夜叉の唯一の武器であるダーツの矢に含ませていたもの。持ち運びも便利で乱射できるから、今回はおおいに助かった。
「それで?肝心のモノはどうなんだ?」
宗次の催促に、俺は漏れそうになるため息を飲み込んでから答えた。
「やっぱり、すでに献上済みだと」
今回、夜叉が踏み込んだマフィアのアジトは、依頼を受けた宝石箱を奪った連中のアジト。
一般市民にちょっかいだして奪った宝石箱を、そのまま奴等は献上してしまったらしい。
・・・・・・たまたま現在来日中の香港マフィアのボスに。
里奈は、そのボスが泊まっているというホテルに情報収集のために潜入していたのだ。
ボスの座を巡ってただ今内輪揉め中の香港マフィア。その狙われているボスがいるホテルに潜入しているのだから、送り出したこちらとしても気が気じゃない。
しかし、里奈は飄々とした様子で報告をしてきた。
「陳 露裔。女遊び大好き、宝石大好きの大馬鹿ボスね。目的の宝石箱のありかはわからなかったけど、宝飾品の類いは陳の寝室の隣の部屋に置いてあるわ」
刺々しい言い方ではあるが、確実な情報収集。宗次が何枚か印刷された紙を俺と実に渡す。
「これがホテルの見取り図。で、こっちが陳が泊まってる部屋の見取り図。さっすがスイートルームはでっかいな~」
「・・・なるほど、ここが寝室で、こっちがターゲットのある部屋か・・・」
すでに作戦を練っているのか、実がぶつぶつ言いながら見取り図とにらめっこを始める。
「だけど気をつけて。ボス争いのいざこざは本当みたいで、陳の周りにも尋常じゃない数のボディーガードがついてるわ」
「減ることなく、常に?」
「・・・残念ながらね」
里奈の報告に実は小さく息を吐いてから、ペンを片手に何やら見取り図に色々と書き込みを始める。おそらく今回の作戦が決定するまでは、実は身動きしないだろうと思い、俺は宗次と里奈にもうひとつの報告をする。
「今回の依頼、ノワールが関わってるみたいだぜ?」
「ノワールが?なんで?」
「さてな。ただの気まぐれか・・・。しかも今夜も不在ときた」
「まさか同じもの狙ってるってことはないよなぁ・・・・・・」
「今回のは<シリーズ>とは無関係なのよね?」
宗次も里奈も首をかしげる。
「俺だってなんでノワールが関わってるのかわからないんだ。だけど、雪野ちゃんが夜叉に会えたのはノワールの手引きがあったから、なんだよな・・・・・・」
「何考えてるんだ~あの金髪美女は?」
がしがしと乱暴に宗次が頭をかく。俺は肩を竦めて首をかしげるしかできない。
「さぁな。とりあえず、やることやるしかないだろ」
ノワールが何を企んでいるとしても。
土曜日。
俺たちは朝から珍しく緊張していた。
スタートの時刻は夜8時の予定。それなのに朝からこうして集まっているのは、入念すぎるほどの作戦会議と準備のためだった。
<ブラック>が用意してくれた作戦。
それは<ビール>を使った陽動作戦。まず始めに<ビール>が騒ぎを起こして陳のボディーガードを引き付ける。多少なりとも減ったところで夜叉がその隙をつく。
おおまかに整理してしまえばこんな作戦だが、実際のところは<ビール>の陽動作戦には<ダージリン>がまた変装してタイミングを見計らいながらだし、夜叉が部屋に侵入するにしても、ボディーガードの数が減ったところで0じゃないわけだから、容易ではない。
それでも、完全に逃げ道のない密室のそこに侵入するには、それしかなかった。
いつも以上の小道具を用意し、念のためにナイフも所持して、俺たちは見取り図を取り囲んで何度もシミュレーションをした。
相手は香港マフィア。日本警察のように穏便な警護とはいかないに違いない。
陽が落ち、予定時間の一時間前に、<ダージリン>が先にホテルに潜入した。
俺たちはそれぞれの配置につきながら、タイミングを待つ。
ちなみに、俺は陳の部屋がある廊下につながる非常階段にいたりする。部屋からは多少距離があるものの気配が読めない距離じゃない。何より、従業員しか出入り場所だから、無関係の人を巻き込む心配をしなくていい。
なぜなら、今夜は<ダージリン>の機転で、従業員はこの階の階段を使うことを禁じられたから。
この場所の把握といい、<ダージリン>の侵入捜査はやっぱり大事だよな。
陽動する<ビール>とそれをサポートする<ブラック>はひとつ下の階。陳の部屋の真下。ここで一騒ぎ起きれば、さすがに何人かのボディーガードは様子を見に行くだろう。
肝心の<ダージリン>は、従業員に変装して堂々と陳がいる部屋の辺りを闊歩している。
それぞれがインカムからの報告に耳をすましていると、まず始めに<ダージリン>が異変を感知した。
『・・・・・・あれ?』
『どうした?』
『おかしいわ。陳の部屋の前に誰もいないの。いつも絶対人がいるのに』
<ダージリン>の報告に即座に反応したのは、タイミングを待っていた<ビール>。その報告により、彼も判断に迷っているようだった。
『見張りがいない?・・・・・・じゃぁ、どうするんだ?』
<ビール>の陽動作戦は、見張りの意識を反らせることにある。なのにその見張りがいないのならば、<ビール>が騒ぎを起こしたところで、室内のボディーガードを刺激すること以外に効果はないかもしれない。
「・・・わかった、俺が出る。<ブラック>、オートロックをはずしてくれ」
『・・・了解』
俺はなるべく気配を消して廊下に静かに姿を現し、<ブラック>に指示をする。
オートロック管理されているこのホテルだが、<ビール>の一仕事のお陰で、<ブラック>でもボタンひとつで遠隔操作で鍵を開けることができた。
一応、人並み以上に他人の気配というものを読み取れることを自負している俺だが、おかしなことに室内から人の気配というものを感じない。
「・・・・・・まさか、ここにいない、とか・・・?」
『いや?今日のスケジュールでは、陳はここにいるはずだぜ?』
『まだチェックアウトもされていなかったわ』
<ビール>と<ダージリン>が即座に俺の疑惑を否定してくる。
俺は様々な事態を予測しながら、さっと陳の部屋に潜り込んだ。やはり、室内に人の気配は感じない。それどころか、室内は明かりもついていなくて真っ暗だ。
俺は気配を殺しながら、じっと目が暗さに慣れるのを待った。やがて、ある程度室内が見渡せるほどに暗闇に慣れてから、俺はそっと動き始めた。
足音ひとつたてずに、そっと大きな部屋を横断し、陳がいるかもしれない寝室に向かう。
その寝室を越えないと、<ダージリン>が教えてくれた、宝飾品を置いている部屋に辿り着けないからだ。
寝室に歩み寄りながら、それでも俺はこの異様な空気に眉を寄せる。
異様。
そう、なにか妙なんだ。誰の気配もない。
だけど、なにか殺伐としたものを感じる。
加えて、この臭い。
煙たい臭いをかき消すように充満しているこれは・・・血の臭い・・・・・・!!
「・・・っと」
思考を巡らせていた俺は、うっかりと足元のなにかにつまづく。注意力散漫なんて、怪盗夜叉として失態だ。
なにか弾力性のあるものにつまづいた気がして、俺は足元に視線を落とした。
「なっ・・・!!」
思わず叫びそうになった声を殺す。
俺がつまづいたのは、横たわった男の体だったのだ。
しかも、この暗闇でもよくわかるくらいに血を流し、すでに息がないことがわかる。
「馬鹿な・・・」
よく見れば、この部屋にごろごろとそんな死体が転がっている。血の臭いはこの男のものだろうか。
ならば、この煙たい臭いは、硝煙の臭い。
硝煙の臭いは、血の臭いと同じくらい強い。だから互いに臭いを消しあってしまって、死体の場所を特定できなかったのだ。
いったい、なにが起こった・・・?
俺は急ぎ足で寝室に向かい、ためらいなくそのドアを開いた。
「・・・・・・!!」
「・・・はい、ゲームオーバー」
「・・・・・・っ」
額にぴったりとつけられた銃口。
威圧的な殺気。
人の気配なんて微塵も感じなかったのに、寝室のドアをあけた途端、俺は額に銃口をつきつけられた。
そして、感じなかった気配は、この相手が自らの気配を殺していたからだったのだと気づいた。
銃をつきつけられて身動きがとれないまま視線だけ動かすと、暗闇の中でもわかる、死体の山。
死闘の跡。
咽返りそうなほどの濃い血の臭い。硝煙の臭いなんて、比にならない。
そして、大きなダブルベッドの上に横たわる巨体。顔はここからではよく見えないが、シルエットでなんとなくわかる。
<ビール>に教えられた資料と一致する。
おそらく、あの死体は、陳 露裔。香港マフィアの現ボス。
・・・いや、すでに息がないなら元ボスか。
この静かなまでの戦場と死体の山を築き上げた、目の前で涼しい顔で俺に銃を向けている相手は、ため息をついてから口を開いた。
「まったく無用心だね、怪盗夜叉。もっと警戒心をもって動かなければ、いくら優秀なドクターがいても、命がいくつあっても足りないよ?これでマフィアを相手にしようっていうのだから、甘いね」
カチリ、と銃から音がする。冷ややかな瞳が俺を見据えてくる。
「・・・なぜ、ここにいるのですか?」
「さてね。それを答えなければならない理由はない。それに、君は今、わたしが引き金を引けば死ぬ状況にある」
「・・・あなたの今回の<仕事>は、香港マフィアのボスを殺すことだったのですか、ノワール」
俺は怪盗夜叉としての姿勢を崩さず、放たれている身がすくむような殺気にもなんとか耐えて、銃口をつきつけてきている相手、ノワールに問い掛けた。
けれど、奴は何の感情も見出だせない蒼い瞳を揺らしもせず、ただ静かに口端をわずかにだけ上げた。
そういえば、いつもサングラスをしているノワールが、今夜はそれを装備していない。黒髪長髪はいつものスタイルだが、隠されていないその瞳の色で、目の前の相手が日本人ではないのだとわかる。
「さて、怪盗夜叉。わたしはとても不安なのだよ」
おもむろにノワールはそう言い出すと、俺の額に突きつけていた銃口を下げた。先ほどのカチリ、という音が安全装置をかけたものだとわかっていた俺は、ただ黙ってそれを見守る。
「わたしと共に闘うと言った君だが、あまりにも非力だと思わないかい?裏世界の渡り方も知らず、身を守る術も十分ではない」
言われなくとも痛いほど自覚していたが、ノワールに改めてそう責められて、思わず唇を噛み締める。だが、その所作にすら、ノワールはため息をついた。
「加えてポーカーフェイスも中途半端ときている。怪盗紳士を気取りたいのなら、もっと徹底することだね。そして、情報収集も他人に頼ることなくできればなおよい」
俺が情報収集を<ビール>に頼りきりになっていることを言っているのか?
だが、今は怪盗夜叉は4人で活動している。それぞれの分担に、ノワールに口を挟まれる筋合いはない。
・・・だけど、その一方であまりにも的を得ているノワールの指摘に、俺はぐうの言葉も出ない。
指摘されずとも、いつも思っていた。
<ビール>や<ダージリン>を危険な目に合わせてやっと手に入れる情報。もっと俺ひとりでそれができればいいのに。
そんなことをあの3人の前で言えば、たちまち怒られるのはわかっているけど。
悔しい思いが渦巻いて黙り込む俺に、ノワールは意地悪い笑みを向けてきた。だが、その間も背筋が凍るような気配は放ったまま。
・・・本当にあのロゼと同一人物なのかよ・・・・・・。
「そこでだ、怪盗夜叉。ここで君をテストさせてもらうよ」
「・・・テスト?」
「そう。わたしは今から、銃もナイフも、何の小道具も使わない。対して、君はありとあらゆる小道具を使って構わない。だから、わたしの手からこれを奪ってみてごらん?」
「それは・・・!!」
ノワールの手にあるのは、少し大きな宝石箱。そう、それは、雪野ちゃんから依頼された代物だ。
なぜノワールがそれを知っているかなんて・・・・・・愚問なんだろうな。
「・・・それをあなたから奪えばいいのですね・・・?」
完全に馬鹿にされているようなハンデのもとで。
実際、ノワールにしてみれば、赤子をあやすようなものなのだろう。ここで見栄をはって悔しがっても仕方ない。
これが俺とノワールとの差だ。だったら、これ以上ひらかないように、絶対に獲物は奪わないといけない。
「・・・わかりました、受けましょう」
瞬間、暗闇の中でゴングが鳴った気がした。
『夜叉、何やってたんだ?!大丈夫なのか?!』
「・・・あぁ、大丈夫」
すでに室内にはノワールの姿はなく、転がる死体の山と頭に穴が空いている香港マフィアの元ボスの躯があるだけ。
俺は、ノワールに会ってから切ったままにしていた通信機をつけ直すと、飛んできた<ブラック>の声に力なく答えた。
『一体何があったんだ?!突然通信機を切るなんて・・・』
「ノワールがいたんだよ、陳の部屋に」
『ノワールが?!・・・それで、ノワールになにかされたのか?!』
「・・・別に」
『別に、じゃないだろ、夜叉!!おまえ、2時間以上も通信が途絶えたままだったんだぞ?!』
ぶっきらぼうに答える俺にかみつくように叫んできた声は<ビール>だ。おそらく3人とも同じ場所にいるんだろう。
「・・・とにかく、俺は今から雪野ちゃんのマンションに行くよ」
『え?それじゃぁ・・・』
「獲物は確保した。昭彦氏ももう奴らに狙われることもないだろう」
香港マフィアのボスが入れ替わることになるだろうし、それよりもまず、混乱でごたごたするだろうから。
『いったいなにがあったんだよ、夜叉・・・・・・』
「悪いけど、あとで話すから。今夜はこのまま獲物を届けて帰宅する」
一方的にそれだけ言って、俺は通信機の電源を切ってしまう。
疲れ切った体を叱咤して、なんとか俺は立ちあがる。
<依頼>は依頼人に獲物を届けるまでが<仕事>だ。
そのまま依頼の宝石箱を持って雪野ちゃんのマンションに向かえば、そこには怪盗夜叉を待つ親子の姿があった。
よほど大切なのだろう、手渡された宝石箱を大切そうに受け取り感謝する母親に、俺は自らの手柄でもないのでそっけなく答える。
その視界の隅には愛良の姿。
・・・やっぱり、いたか・・・・・・。
だけど、愛良が性懲りもなくここにいることよりも、雪野ちゃん親子の姿を見て複雑そうな表情を浮かべているのが俺は気になった。
「・・・夜叉・・・!!」
何か言いたそうに俺に近寄ってきたが、残念ながら、今夜は愛良の相手をする気力は残ってない。
加えて、ここで<エーゲ海のエメラルド>の話などできない。
愛良が怪盗夜叉に<依頼>しようとしているものは、今回の獲物とは比べ物にならないくらい、重要な意味を持つのだから。
雪野ちゃん親子と愛良の前から姿を消し、そのまま帰宅しようと俺はふと、先ほどの愛良の表情が頭に浮かんで立ち止まる。
・・・愛良も、早く両親のもとで、暮らしたい、よな。
まだ小学生だ。親に甘えたい年頃だろう。
だったら、早く愛良の<依頼>を聞いて、彼女を両親のもとに行かせてあげるべきなんじゃないか・・・・・・?
愛良が日本にとどまっているのは、怪盗夜叉に<依頼>をしたいから。
だけど、俺も愛良のためだけに怪盗夜叉になって登場することなどできない。
そんなことをすれば、<組織>の連中に愛良との関係を感づかれるかもしれないからだ。そうなったら、愛良に及ぶ危険は計り知れない。
・・・では、もしも<怪盗夜叉の知り合い>である<瀬戸 和馬>が、愛良の代わりに<依頼>内容を聞いたらどうだろうか。
そうしたら、愛良はもっと早く両親のもとに行けるのではないか。
あの家を出て、両親のいる海外へ・・・・・・。
俺はそう決断し、今ならそうしても正体がばれることもないだろうと思ったから、雪野ちゃんのマンションから帰るであろう愛良に電話をかけた。
たまたま近くを通っているなんて嘘のような本当のような言いわけをして、愛良を迎えに行く。
そして、その帰路で俺は先ほどの考えを愛良に伝えた。
・・・なのに、なぜか愛良はそれを断ってきた。
両親に会いたくて寂しくて仕方ないくせに。涙を流すくせに、頑なに俺の申し出は断ってくる。
しかも、なんかまた、しょうもない理由で・・・・・・。
思わず『夜叉に会わせてやる』なんて危険な申し出までしてしまった俺だったが、なぜか愛良自身にあっさりと却下され。
・・・なんか、もう、今夜は疲れた・・・・・・。
心身ともにどっと疲れがこみあげてきた俺は、乾いた笑いしか出てこない。
なぜか機嫌が上向き、表情も寂しそうなものから明るいいつもの表情に戻った愛良と共に帰宅しながら、ふと、俺は思い出す。
ノワールが去り際に、怪盗夜叉に言っていたこと。
・・・あの3人に報告しておかないとまずいだろうな・・・・・・。
俺は、愛良と共に我が家に向かって歩き続けた。
掴みどころがまったくないロゼがすでに帰宅し待っているであろう、我が家へ。
久しぶりに仕事をするノワールを書けて満足な紫月です(笑)
「寂しい」がやたらと主張される13話ですが、和馬サイドでは中編がそれに表立っているだけで、後編はもっぱら夜叉としてのお仕事で忙しかったりします(笑)
ノワールが夜叉に提示した「テスト」がどうなったのか、それはまた次の機会で(笑)
香港マフィアのボスとそれの取り巻きを全部抹殺しちゃったノワール。その裏話的な話もいつか番外編で書くつもりではいたりします。まだその時期じゃないんですけどね…(汗)
番外編で先走ってる話と本編を早く一本につなげられる日が来るといいなぁと思っているのですが……だったらキリキリと本編を仕上げていけよって話ですよね(泣)